15 / 242
第1章 異世界《エムメルク》の歩き方
第15話 長閑な街『オルヴィルカ』
しおりを挟む
「あたしはこれから街に戻るけど……行く宛てがないのなら、一緒にどう?」
「いいんすか?」
アンジェの提案はとても光栄だった。手当てしてくれたとはいえ、街へ行くまでの道中で魔物に会ったらどうなっていたか。多分、スライムでも今度は負けると思う。それに、アンジェは強くて頼りになる。
「ありがとうございます。助かります!」
その場で会釈すると、アンジェは「気にしないで」と笑った。
さっそく出発しようと立ち上がろうとする。だが、足に力を入れただけで、スライムとルソードに攻撃を喰らった腹部が痛んだ。
「あらあら、そこも怪我していたのね。大丈夫?」
顔を歪めた俺を見て、アンジェは一瞬驚いたが、すぐに手を伸ばしてくれた。
「す、すいません」
恥ずかしく思いながらも、アンジェの手を取ってやっと立ち上がる。その情けなさにばつが悪くなって頬を掻いて彼から視線を逸らすと、アンジェは「やれやれ」と言うように息を吐いた。
「……まずは『神官様』のところね」
「神官様?」
――って、誰だ?
思わず小首を傾げると、アンジェは「フフッ」と口角を上げながらウインクした。
「会ったらわかるわよ。凄い人だから」
「さ、行くわよ」そう言って先に行くアンジェに、俺は目をパチクリとさせてしまったが、行く宛もないので着いていくことにした。
◆ ◆ ◆
アンジェに連れられておよそ三十分。ここで俺は改めてここが異世界だということを実感した。
「おー……すげー……」
飛び込んできた街並みに思わず感動の声をあげる。
たどり着いた場所は決して大きくはないが、活気のある街だった。
いくつものマーケットが並んでおり、雑貨や食べ物を売る商人の明るい声が飛び交う。広場では子供たちが楽しそうに駆け巡り、その子たちを見守るように保護者らしきマダムたちが和気藹々と駄弁っている。また、建てられている住宅も外国な造りでつい見入ってしまった。こんなレンガ調で三角屋根の家なんてゲームかおもちゃ屋に置いてあるようなドールハウスでしか見たことがない。それに、道だってコンクリートではなくて石造りだ。あれだけ自然いっぱいな草原だったのに、少し歩いただけで随分と景色が変わったものだ。
興味津々に街をきょろきょろと見ていると、アンジェが微笑ましそうに話しかけてきた。
「ここは『オルヴィルカ』よ。あたしの故郷でもあるの。それで、神官様がいるのはあそこよ」
そう言ってアンジェが指差した先には屋根のところに鐘がついた建物があった。壁についたステンドグラスがここからでも見えるし、白い壁はこのレンガ造りの家並みからは異端で、とても目立っている。どうやら教会のようだ。
教会の扉を開けると、シスターが箒で床を掃いていた。だが、アンジェが来たことに気づくと、シスターは「あら」と優しく笑った。
「おかえりアンジェ。この方は?」
「ただいまシスター・モネ。この子、怪我をしているの。神官様にお会いできないかしら」
「まあ、大変! すぐにお呼びするわ」
モネと呼ばれたシスターは箒を壁に立てかけると、早足で奥へと入っていった。
神官を待つ間、疲れたので教会の長椅子に座らせてもらった。
教会の中は木造で、天井が筒抜けになっていた。屋根の近くについたステンドグラスが陽の光に反射して床を色鮮やかに照らしている。ゲーム以外でこんな建物に入ったことがなかったから、その神聖な空気に少しばかり緊張していた。
神官。アンジェは「凄い人」と言っていたが、いったいどんな人なのだろうか。神官というくらいだから、色白で金髪の優男な神父みたいな感じだろうか。そんな勝手なイメージを膨らませているうちに、やがて廊下から誰かの足音が聞こえる。神官様のお出ました。
気を引き締めて、背筋を伸ばす。すると、奥から黒い丈の長い服を着た男が入ってきた。
「遅くなってすまない」
「ん!?」
現れた男に、俺は思わず目を瞠った。
「いいんすか?」
アンジェの提案はとても光栄だった。手当てしてくれたとはいえ、街へ行くまでの道中で魔物に会ったらどうなっていたか。多分、スライムでも今度は負けると思う。それに、アンジェは強くて頼りになる。
「ありがとうございます。助かります!」
その場で会釈すると、アンジェは「気にしないで」と笑った。
さっそく出発しようと立ち上がろうとする。だが、足に力を入れただけで、スライムとルソードに攻撃を喰らった腹部が痛んだ。
「あらあら、そこも怪我していたのね。大丈夫?」
顔を歪めた俺を見て、アンジェは一瞬驚いたが、すぐに手を伸ばしてくれた。
「す、すいません」
恥ずかしく思いながらも、アンジェの手を取ってやっと立ち上がる。その情けなさにばつが悪くなって頬を掻いて彼から視線を逸らすと、アンジェは「やれやれ」と言うように息を吐いた。
「……まずは『神官様』のところね」
「神官様?」
――って、誰だ?
思わず小首を傾げると、アンジェは「フフッ」と口角を上げながらウインクした。
「会ったらわかるわよ。凄い人だから」
「さ、行くわよ」そう言って先に行くアンジェに、俺は目をパチクリとさせてしまったが、行く宛もないので着いていくことにした。
◆ ◆ ◆
アンジェに連れられておよそ三十分。ここで俺は改めてここが異世界だということを実感した。
「おー……すげー……」
飛び込んできた街並みに思わず感動の声をあげる。
たどり着いた場所は決して大きくはないが、活気のある街だった。
いくつものマーケットが並んでおり、雑貨や食べ物を売る商人の明るい声が飛び交う。広場では子供たちが楽しそうに駆け巡り、その子たちを見守るように保護者らしきマダムたちが和気藹々と駄弁っている。また、建てられている住宅も外国な造りでつい見入ってしまった。こんなレンガ調で三角屋根の家なんてゲームかおもちゃ屋に置いてあるようなドールハウスでしか見たことがない。それに、道だってコンクリートではなくて石造りだ。あれだけ自然いっぱいな草原だったのに、少し歩いただけで随分と景色が変わったものだ。
興味津々に街をきょろきょろと見ていると、アンジェが微笑ましそうに話しかけてきた。
「ここは『オルヴィルカ』よ。あたしの故郷でもあるの。それで、神官様がいるのはあそこよ」
そう言ってアンジェが指差した先には屋根のところに鐘がついた建物があった。壁についたステンドグラスがここからでも見えるし、白い壁はこのレンガ造りの家並みからは異端で、とても目立っている。どうやら教会のようだ。
教会の扉を開けると、シスターが箒で床を掃いていた。だが、アンジェが来たことに気づくと、シスターは「あら」と優しく笑った。
「おかえりアンジェ。この方は?」
「ただいまシスター・モネ。この子、怪我をしているの。神官様にお会いできないかしら」
「まあ、大変! すぐにお呼びするわ」
モネと呼ばれたシスターは箒を壁に立てかけると、早足で奥へと入っていった。
神官を待つ間、疲れたので教会の長椅子に座らせてもらった。
教会の中は木造で、天井が筒抜けになっていた。屋根の近くについたステンドグラスが陽の光に反射して床を色鮮やかに照らしている。ゲーム以外でこんな建物に入ったことがなかったから、その神聖な空気に少しばかり緊張していた。
神官。アンジェは「凄い人」と言っていたが、いったいどんな人なのだろうか。神官というくらいだから、色白で金髪の優男な神父みたいな感じだろうか。そんな勝手なイメージを膨らませているうちに、やがて廊下から誰かの足音が聞こえる。神官様のお出ました。
気を引き締めて、背筋を伸ばす。すると、奥から黒い丈の長い服を着た男が入ってきた。
「遅くなってすまない」
「ん!?」
現れた男に、俺は思わず目を瞠った。
11
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる