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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第28話 依頼主、シスター・モネ
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「あ、あの……違うからね? 全てにおいて」
表情を固めながらセリナに弁明すると、彼女は目を細めて頬を綻ばせた。
「わかってますから大丈夫ですよ。でも、アンジェさんのことはよろしく頼みますね」
「お、おう……頑張る」
「よろしく頼む」と言われても、俺のほうがアンジェに頼りっぱなしなのだが。
ここは、「頑張る」という返しで正解だったのだろうか。
気難しく考えていたが、そんな訝しい顔になる俺とは裏腹にセリナは「えへへ」と子供のような屈託のない笑顔を浮かべた。
「では、ご武運を!」
敬礼するセリナの可愛さにドキッと胸が高鳴る。
どぎまぎしながらも敬礼し返したが、そのぎごちなさにすぐに耳まで赤くなるような火照りを感じたので、俺は恥ずかしさを隠すように彼女に背を向ける。
それを見ていたノアはというと、俺の頭の上で呆れたように息を吐いた。
「イチャつくと彼氏が妬くぞ」
「だから彼氏じゃねえって!!」
そしてイチャついてもいねえ!
と、ツッコミを入れたところで、また自分の失態に気づく。
恐る恐るセリナのほうに振り向く。だが、彼女は不思議そうに首を傾げるだけで、何も言ってこなかった。
これは、セーフということでいいのだろうか。何がアウトかもわからんが。
ともかく、これ以上ここにいるとまたヘマをしそうなので、俺は彼女に会釈し逃げるように集会所を後にした。
◆ ◆ ◆
集会所を出ると、外は相変わらず賑わっていた。
空は晴天。風は涼風。お出かけ日和で、買い物日和だからか、辺りがガヤガヤと騒がしい。
そんな雑踏を見つめるようにアンジェは壁に背を持たれかけながら俺を待っていた。
「あ、ムギちゃん。終わった?」
「終わったじゃねえよアンジェ……覚えとけよ」
「あらやだ。顔が怖いわよ」
アンジェは「きゃっ」と女子が怖がるように両頬に手を当てる。だが、そのにやけた表情でからかわれているのは十二分に伝わる。
自分で遊ばれていることにへそを曲げながらアンジェを睨むが、アンジェはおかしそうに笑うだけだ。
「ごめんなさいね。でも、セリちゃんとお話できたでしょ?」
「できたけどさ! なんだよ二人だけの初会話が誤解を解くところからスタートって! どうせならもっと違う話題がよかったわ!」
目くじらを立ててビシッと指差して物申すが、アンジェは俺のリアクションに面白おかしく笑っている。この人、案外ドSなのかもしれない。
そんな他愛ない会話をしていたら、アンジェが何に気づいた。
「あら、シスターだわ」
アンジェの視線の先に顔を向けると、昨日教会で会ったシスターがいた。ここでも修道服を着ている。手にはバスケットがあるから、彼女もここまで買い物に来たのだろう。
シスターも俺たちに気づき、ニコッと微笑んで会釈する。
「こんにちはアンジェ。それと、ムギト君でよかったかしら?」
「あ、はい。こんにちは」
「こんにちは。私はモネ。よろしくね」
そう言ってモネさんは俺に優しく微笑む。
視界に入ったバスケットには、小さな青い石が入ったボトルがいくつも入っていた。こんなにボトルを買うなんて、何に使うのだろうか。
そんな些細な疑問を抱いている間に、アンジェがシスターに話しかけた。
「ムギちゃんがギルドに入ってくれてね、これからクーラの水を取りに行くのよ」
「まあ! あのクエストをやってくれるの? 助かるわ」
シスターの表情がパァッと明るくなり、俺たちに深々と頭を下げる。ここまでするほどだ。それほど困っていたのだろう。
「本当は私たちが取りに行くべきなんだけど、あそこには魔物がいるから私ではとても行けなくてね」
申し訳なさそうにモネさんは言う。教会の中で一番戦闘力が高いのは言うまでもなく筋肉隆々神官のミドリーさんだが、彼は貴重な【治療師】。怪我をした人の治療や『神の声』を聞くなどの業務で忙しい。
それに、万が一彼の身に何かがあったら、それこそ世界の終わりだ。そのため、自分たちでもなかなか取りに行けないのだと言う。
「遠慮しないでシスター・モネ。そのためにギルドがあるんだから」
モネさんの心中を察したアンジェが安心させるように笑いかける。教会の事情は容易く想像できるから、俺も何度も頷いた。
「ありがとう二人とも……そうだ。ちょうどボトルを買ったところなの。持っていって」
そう言ってモネさんはバスケットに入っていたボトルを二つずつ俺たちに渡した。
表情を固めながらセリナに弁明すると、彼女は目を細めて頬を綻ばせた。
「わかってますから大丈夫ですよ。でも、アンジェさんのことはよろしく頼みますね」
「お、おう……頑張る」
「よろしく頼む」と言われても、俺のほうがアンジェに頼りっぱなしなのだが。
ここは、「頑張る」という返しで正解だったのだろうか。
気難しく考えていたが、そんな訝しい顔になる俺とは裏腹にセリナは「えへへ」と子供のような屈託のない笑顔を浮かべた。
「では、ご武運を!」
敬礼するセリナの可愛さにドキッと胸が高鳴る。
どぎまぎしながらも敬礼し返したが、そのぎごちなさにすぐに耳まで赤くなるような火照りを感じたので、俺は恥ずかしさを隠すように彼女に背を向ける。
それを見ていたノアはというと、俺の頭の上で呆れたように息を吐いた。
「イチャつくと彼氏が妬くぞ」
「だから彼氏じゃねえって!!」
そしてイチャついてもいねえ!
と、ツッコミを入れたところで、また自分の失態に気づく。
恐る恐るセリナのほうに振り向く。だが、彼女は不思議そうに首を傾げるだけで、何も言ってこなかった。
これは、セーフということでいいのだろうか。何がアウトかもわからんが。
ともかく、これ以上ここにいるとまたヘマをしそうなので、俺は彼女に会釈し逃げるように集会所を後にした。
◆ ◆ ◆
集会所を出ると、外は相変わらず賑わっていた。
空は晴天。風は涼風。お出かけ日和で、買い物日和だからか、辺りがガヤガヤと騒がしい。
そんな雑踏を見つめるようにアンジェは壁に背を持たれかけながら俺を待っていた。
「あ、ムギちゃん。終わった?」
「終わったじゃねえよアンジェ……覚えとけよ」
「あらやだ。顔が怖いわよ」
アンジェは「きゃっ」と女子が怖がるように両頬に手を当てる。だが、そのにやけた表情でからかわれているのは十二分に伝わる。
自分で遊ばれていることにへそを曲げながらアンジェを睨むが、アンジェはおかしそうに笑うだけだ。
「ごめんなさいね。でも、セリちゃんとお話できたでしょ?」
「できたけどさ! なんだよ二人だけの初会話が誤解を解くところからスタートって! どうせならもっと違う話題がよかったわ!」
目くじらを立ててビシッと指差して物申すが、アンジェは俺のリアクションに面白おかしく笑っている。この人、案外ドSなのかもしれない。
そんな他愛ない会話をしていたら、アンジェが何に気づいた。
「あら、シスターだわ」
アンジェの視線の先に顔を向けると、昨日教会で会ったシスターがいた。ここでも修道服を着ている。手にはバスケットがあるから、彼女もここまで買い物に来たのだろう。
シスターも俺たちに気づき、ニコッと微笑んで会釈する。
「こんにちはアンジェ。それと、ムギト君でよかったかしら?」
「あ、はい。こんにちは」
「こんにちは。私はモネ。よろしくね」
そう言ってモネさんは俺に優しく微笑む。
視界に入ったバスケットには、小さな青い石が入ったボトルがいくつも入っていた。こんなにボトルを買うなんて、何に使うのだろうか。
そんな些細な疑問を抱いている間に、アンジェがシスターに話しかけた。
「ムギちゃんがギルドに入ってくれてね、これからクーラの水を取りに行くのよ」
「まあ! あのクエストをやってくれるの? 助かるわ」
シスターの表情がパァッと明るくなり、俺たちに深々と頭を下げる。ここまでするほどだ。それほど困っていたのだろう。
「本当は私たちが取りに行くべきなんだけど、あそこには魔物がいるから私ではとても行けなくてね」
申し訳なさそうにモネさんは言う。教会の中で一番戦闘力が高いのは言うまでもなく筋肉隆々神官のミドリーさんだが、彼は貴重な【治療師】。怪我をした人の治療や『神の声』を聞くなどの業務で忙しい。
それに、万が一彼の身に何かがあったら、それこそ世界の終わりだ。そのため、自分たちでもなかなか取りに行けないのだと言う。
「遠慮しないでシスター・モネ。そのためにギルドがあるんだから」
モネさんの心中を察したアンジェが安心させるように笑いかける。教会の事情は容易く想像できるから、俺も何度も頷いた。
「ありがとう二人とも……そうだ。ちょうどボトルを買ったところなの。持っていって」
そう言ってモネさんはバスケットに入っていたボトルを二つずつ俺たちに渡した。
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