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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第35話 クエスト、完了
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アンジェが鞄から細長い筆箱のような木のケースを取り出すと、そこからさらに黒い針が出てきた。
針はケースにギリギリ入るくらいの長めの針で、このまま地面に突き刺せるほど大きな針だ。気になることといえば、持ち手の先端にコアらしき物が付いているということ。
「それ!」
掛け声と共にアンジェが針を投げる。それによって針が地面に刺さった途端に小さな風の渦が現れた。
「な、なんだこれ!」
思わず退く俺にアンジェはおかしそうにクスクス笑う。
「凄いでしょ? これはウィンド・コア・ピン。ウィンド・コアで作ってるの」
パチンとウインクしたアンジェは、ひらりと手を振って風の渦に近づく。
「え? これに入るのか?」
「そうよ。大丈夫、怖くないわ」
ニコッと笑ってアンジェは俺に手を差し出す。その笑顔もその仕草もここまで来ると王子様みたいだが、流石に俺もそこまで男として落ちぶれていない。(と信じたい)
それでも差し出された手を取らないのは申し訳ないので、なんとなしに頭の上のノアを渡した。
ノアは「!?」と言葉にならない驚きを示していたが、アンジェは気にせずにそのままノアを抱く。
「さ、行きましょ」
アンジェを先頭にいよいよ風の渦に入る。いったいこの先には何があるのか。得体の知れない世界に俺は無意識に生唾を飲んだ。
それでもアンジェはなんのためらいもなく風の渦に飛び込んだ。最悪なのはこのまま風の渦が消えて置いてけぼりに
されることだ。そんな絶望的なことはなんとしても避けたい。
ビビりながらも恐る恐る風の渦に飛び込む。だが、中に入った瞬間、目を開けることもできないほど風力が増した。
視界が奪われる中、ひたすら耳元で風の音が聞こえる。これが今どんな状況なのかわからないのがただ怖かった。
ギュッと目をつぶって事が終わることを待つ。
しかし、それも束の間。あれだけ強かった風も止み、辺りに明るい光が射した。ゆっくりと目を開ける。そして劇的に変化した風景に俺は愕然とした。目の前にあったのは他でもない――『オルヴィルカ』の街だったのだ。
「え? 何これ。瞬間移動?」
想像していなかった展開についうろたえた。
夢かと思って辺りを見渡す。だが、ここはどう見たってオルヴィルカ。しかも集会所前の広場ではないか。この街の賑わいだって出発前のままだ。
こんなに人がいるのに、いきなり現れたであろう俺たちに通行人は何一つ驚いていないのもわからない。
表情を固めたままアンジェを見る。すると、アンジェは目を細めてブイサインをしてきた。
「ほら、凄い近道でしょ?」
アンジェが言うには、先程の風の渦がウィンド・コアの力なのだという。ダンジョンからの脱出だけでなく、予め設定していたポイントまで移動してくれるという優れ物だ。
脱出魔法と移動魔法は存在しているだろうと思っていたが、まさか両方兼ね備えているとは。通行人も驚いていないということは、よくあることなのだろう。ウォーター・コアといいウィンド・コアといい、本当に便利な物だ。
と言いつつも、数々の不思議現象に頭では追いついていなくて呆然としていた。
そんな俺にアンジェは明るく声をかける。
「ほらほら、セリちゃんのところへ行きましょう」
アンジェは余程楽しいのか、スキップ混じりで集会所に向かった。
「あ、待てよ!」
と、声をかけてもアンジェは振り向かない。
彼の代わりに肩で抱かれているノアと目が合う。そういえばノアを渡したままだった。どうりで頭が軽い訳だ。ノアが顔をしかめてこちらを見ているが……まあ、それはいい。ひとまず俺もアンジェたちの後ろについた。
針はケースにギリギリ入るくらいの長めの針で、このまま地面に突き刺せるほど大きな針だ。気になることといえば、持ち手の先端にコアらしき物が付いているということ。
「それ!」
掛け声と共にアンジェが針を投げる。それによって針が地面に刺さった途端に小さな風の渦が現れた。
「な、なんだこれ!」
思わず退く俺にアンジェはおかしそうにクスクス笑う。
「凄いでしょ? これはウィンド・コア・ピン。ウィンド・コアで作ってるの」
パチンとウインクしたアンジェは、ひらりと手を振って風の渦に近づく。
「え? これに入るのか?」
「そうよ。大丈夫、怖くないわ」
ニコッと笑ってアンジェは俺に手を差し出す。その笑顔もその仕草もここまで来ると王子様みたいだが、流石に俺もそこまで男として落ちぶれていない。(と信じたい)
それでも差し出された手を取らないのは申し訳ないので、なんとなしに頭の上のノアを渡した。
ノアは「!?」と言葉にならない驚きを示していたが、アンジェは気にせずにそのままノアを抱く。
「さ、行きましょ」
アンジェを先頭にいよいよ風の渦に入る。いったいこの先には何があるのか。得体の知れない世界に俺は無意識に生唾を飲んだ。
それでもアンジェはなんのためらいもなく風の渦に飛び込んだ。最悪なのはこのまま風の渦が消えて置いてけぼりに
されることだ。そんな絶望的なことはなんとしても避けたい。
ビビりながらも恐る恐る風の渦に飛び込む。だが、中に入った瞬間、目を開けることもできないほど風力が増した。
視界が奪われる中、ひたすら耳元で風の音が聞こえる。これが今どんな状況なのかわからないのがただ怖かった。
ギュッと目をつぶって事が終わることを待つ。
しかし、それも束の間。あれだけ強かった風も止み、辺りに明るい光が射した。ゆっくりと目を開ける。そして劇的に変化した風景に俺は愕然とした。目の前にあったのは他でもない――『オルヴィルカ』の街だったのだ。
「え? 何これ。瞬間移動?」
想像していなかった展開についうろたえた。
夢かと思って辺りを見渡す。だが、ここはどう見たってオルヴィルカ。しかも集会所前の広場ではないか。この街の賑わいだって出発前のままだ。
こんなに人がいるのに、いきなり現れたであろう俺たちに通行人は何一つ驚いていないのもわからない。
表情を固めたままアンジェを見る。すると、アンジェは目を細めてブイサインをしてきた。
「ほら、凄い近道でしょ?」
アンジェが言うには、先程の風の渦がウィンド・コアの力なのだという。ダンジョンからの脱出だけでなく、予め設定していたポイントまで移動してくれるという優れ物だ。
脱出魔法と移動魔法は存在しているだろうと思っていたが、まさか両方兼ね備えているとは。通行人も驚いていないということは、よくあることなのだろう。ウォーター・コアといいウィンド・コアといい、本当に便利な物だ。
と言いつつも、数々の不思議現象に頭では追いついていなくて呆然としていた。
そんな俺にアンジェは明るく声をかける。
「ほらほら、セリちゃんのところへ行きましょう」
アンジェは余程楽しいのか、スキップ混じりで集会所に向かった。
「あ、待てよ!」
と、声をかけてもアンジェは振り向かない。
彼の代わりに肩で抱かれているノアと目が合う。そういえばノアを渡したままだった。どうりで頭が軽い訳だ。ノアが顔をしかめてこちらを見ているが……まあ、それはいい。ひとまず俺もアンジェたちの後ろについた。
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