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第3章 青年剣士の過日
第49話 おかえりなさい、ご主人様
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ゴレちゃんとムンちゃんが加わってから、魔法の練習はより実践的になった。
まず、ゴレちゃんとムンちゃんが二体ずつに分裂する。ゴレちゃんとムンちゃんは二体とも体がひと回り小さくなるが、合計四体のグループになるから俺の魔法の射程範囲はよりわかりやすくなった。
「おらぁ! 『冷たい風』!」
呪文を唱え、フォークを振るう。
最初はゴレちゃんA・Bしか届かなかった魔法も、昨日から続けているうちにムンちゃんAまでは届くようになった。
しかし、ゴーレム三体といえどもせいぜいノアの倍くらいしかない小さなゴーレムだ。多分、中くらいの魔物だったら二体くらいしか範囲がないだろう。せめてムンちゃんBまで届くようになりたい。それまで、まだ練習する必要はある。
ただ、氷の結晶のほうは安定して霰くらいは出せるようになった。とはいえ、まだ霰だ。こちらももっと鍛える必要がある。
「こりゃ、伸びしろがありますねえ勇者様」
そんな俺を見てノアがニヤリと笑う。その言い方も嫌みっぽくてムカつくが、彼女の言うことも一理ある。ここまで成長しているのだ。潜在能力があるとも言えるだろう――そうポジティブに考えないとこんな修行やっていられない。
何回も、何回も同じ魔法を繰り返す。そのたびにゴレちゃんとムンちゃんも何度も分裂しえくれる。
何度も、何度も、何度も……
そして、太陽が真上に昇った時――ついに彼が帰ってきた。
「ム~ギちゃん!」
背後から聞こえてきた明るく、それでいて乙女らしい口調の男声に、俺は思わず振り向いた。
「……アンジェ」
名前を呟くと、アンジェは「ウフッ」と嬉しそうに口角を上げる。
「ただいま。いい子にしてた?」
そう言ってアンジェは俺に向けてパチンとウィンクした。そんないつもの調子の彼を見ると心の底から安心してしまい、ついヘタッとその場で座り込んでしまった。
「あらあら。大丈夫?」
「だ、大丈夫。ただ、なんかどっと疲れが出ただけ……」
そうして俺は草原の上で大の字になって寝転がった。
倒れ込んだように見えたのか、合計四体のゴレちゃんとムンちゃんが俺に駆け寄る。「ム~」「ム~」と心配するような声をあげるが、力が出ない原因もわかっている。集中力と魔力切れだ。
そんな俺を見てアンジェはクスッと笑い、ゴレちゃんとムンちゃんたちの前にしゃがみ込んだ。
「ありがとね、あなたたち。でも、もう大丈夫だからセリちゃんのところへ戻りなさい」
その言葉にゴレちゃんとムンちゃんはお互い顔を見合わせ、小さく首を捻らせた。だが、目を細めるアンジェに何か察したのか、四体共「ム~!」と一声あげると、そのまま土になって崩れるように消えていった。
「あ……消えちゃった」
跡形もなく消えたゴーレムたちに思わず目が点になる。しかし、セリナが「何度でも甦る」と言っていたから、多分土に還ったということなのだろう。
ぽかんとしていると、アンジェが横たわる俺に手を差し伸べてくれた。
「悪い、サンキュ」
彼の手を借りて立ち上がる。すると、アンジェは手に持っていた革の袋を掲げ、にこっと口角を上げた。
「ちゃんとお土産買ってきたから……お昼にしましょ」
「ああ、ちょうど腹減ってたんだ」
二つ返事で返すとアンジェも頷き、ルンルン気分ですぐに部屋の中へと入って行った。
部屋に入った途端、アンジェは「まあ!」と驚きの声をあげた。
「ちゃんとお部屋のお片付けしてくれていたのね! ありがとうムギちゃん! ハグしていい?」
「それはご勘弁を」
「あらやだ。冗談よ冗談」
アンジェは上品に口元に手を当てながらクスクス笑う。けれども彼の言う「冗談」は冗談に聞こえないので、俺も彼から逃げるように数メートル距離を置いていた。ちなみにこれは無意識だ。俺の中の危険レーダーが察知して勝手に動いているようである。
そんな俺を見て「釣れないわねぇ」とからかいながらも、アンジェは机の上に持っていた革の袋を置いた。
まず、ゴレちゃんとムンちゃんが二体ずつに分裂する。ゴレちゃんとムンちゃんは二体とも体がひと回り小さくなるが、合計四体のグループになるから俺の魔法の射程範囲はよりわかりやすくなった。
「おらぁ! 『冷たい風』!」
呪文を唱え、フォークを振るう。
最初はゴレちゃんA・Bしか届かなかった魔法も、昨日から続けているうちにムンちゃんAまでは届くようになった。
しかし、ゴーレム三体といえどもせいぜいノアの倍くらいしかない小さなゴーレムだ。多分、中くらいの魔物だったら二体くらいしか範囲がないだろう。せめてムンちゃんBまで届くようになりたい。それまで、まだ練習する必要はある。
ただ、氷の結晶のほうは安定して霰くらいは出せるようになった。とはいえ、まだ霰だ。こちらももっと鍛える必要がある。
「こりゃ、伸びしろがありますねえ勇者様」
そんな俺を見てノアがニヤリと笑う。その言い方も嫌みっぽくてムカつくが、彼女の言うことも一理ある。ここまで成長しているのだ。潜在能力があるとも言えるだろう――そうポジティブに考えないとこんな修行やっていられない。
何回も、何回も同じ魔法を繰り返す。そのたびにゴレちゃんとムンちゃんも何度も分裂しえくれる。
何度も、何度も、何度も……
そして、太陽が真上に昇った時――ついに彼が帰ってきた。
「ム~ギちゃん!」
背後から聞こえてきた明るく、それでいて乙女らしい口調の男声に、俺は思わず振り向いた。
「……アンジェ」
名前を呟くと、アンジェは「ウフッ」と嬉しそうに口角を上げる。
「ただいま。いい子にしてた?」
そう言ってアンジェは俺に向けてパチンとウィンクした。そんないつもの調子の彼を見ると心の底から安心してしまい、ついヘタッとその場で座り込んでしまった。
「あらあら。大丈夫?」
「だ、大丈夫。ただ、なんかどっと疲れが出ただけ……」
そうして俺は草原の上で大の字になって寝転がった。
倒れ込んだように見えたのか、合計四体のゴレちゃんとムンちゃんが俺に駆け寄る。「ム~」「ム~」と心配するような声をあげるが、力が出ない原因もわかっている。集中力と魔力切れだ。
そんな俺を見てアンジェはクスッと笑い、ゴレちゃんとムンちゃんたちの前にしゃがみ込んだ。
「ありがとね、あなたたち。でも、もう大丈夫だからセリちゃんのところへ戻りなさい」
その言葉にゴレちゃんとムンちゃんはお互い顔を見合わせ、小さく首を捻らせた。だが、目を細めるアンジェに何か察したのか、四体共「ム~!」と一声あげると、そのまま土になって崩れるように消えていった。
「あ……消えちゃった」
跡形もなく消えたゴーレムたちに思わず目が点になる。しかし、セリナが「何度でも甦る」と言っていたから、多分土に還ったということなのだろう。
ぽかんとしていると、アンジェが横たわる俺に手を差し伸べてくれた。
「悪い、サンキュ」
彼の手を借りて立ち上がる。すると、アンジェは手に持っていた革の袋を掲げ、にこっと口角を上げた。
「ちゃんとお土産買ってきたから……お昼にしましょ」
「ああ、ちょうど腹減ってたんだ」
二つ返事で返すとアンジェも頷き、ルンルン気分ですぐに部屋の中へと入って行った。
部屋に入った途端、アンジェは「まあ!」と驚きの声をあげた。
「ちゃんとお部屋のお片付けしてくれていたのね! ありがとうムギちゃん! ハグしていい?」
「それはご勘弁を」
「あらやだ。冗談よ冗談」
アンジェは上品に口元に手を当てながらクスクス笑う。けれども彼の言う「冗談」は冗談に聞こえないので、俺も彼から逃げるように数メートル距離を置いていた。ちなみにこれは無意識だ。俺の中の危険レーダーが察知して勝手に動いているようである。
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