転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第4章 ギルド、崩壊

第63話 差別はよくないが警戒は必要

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 朝の準備と言っても、あとは俺の仕度が終わればいいので、そこまで時間がかからずに出発ができた。この様子だと、ちょうど集会所が開く頃にたどり着きそうだ。

 いつもより早い時間に着いたからか、市場も集会所前の広間もそこまで人がいなかった。人だかりができるほど賑わうのはもう少し後からなのだろう。

 いざ、集会所へと入る。

 ――ギルド員の朝は早い……というのは言ってみたかっただけで、来ているのは俺たち二人と職員の【創造者クリエーター】しかいなかった。

「たまにはこんな時間もいいわね」

 アンジェがフフッと笑う。彼の言う通り、変に騒がしくないし、いつも混み合うクエストの掲示板も見やすいから楽である。

「あら……見て、ムギちゃん」

 アンジェが掲示板を指さす。そこには見たことのある二人の男の絵が描かれたクエストが貼られていた。


『依頼主:カトミア商人ギルド
 クエスト内容:指名手配(恐喝・詐欺・傷害他) ドクとチャックの捕縛
 報酬:二十万ヴァル
 期限:無期限』


 それは昨日相手をした荒くれ共だった。覆面をかぶったのがドクで、バンダナを頭に巻いていたのがチャックというらしい。昨日の今日で指名手配犯にするとは、ギルドも仕事が早い。

「きっと『カトミア』でも迷惑をかけていたのでしょうね」

「『カトミア』ってこの前アンジェが行ったところだっけ?」

「そう。あそこは港町で商業が盛んだからね。でも、あそこの市長さんこういうのを逃しそうにないのに、珍しいわね」

 アンジェが腕を組みながら首を傾げる。それよりも昨日のあいつらを捕えたら二十万ヴァルだったことのほうがショックだ。あの時、ちゃんと追いかければよかったと心底後悔する。

 そんな話をしていると、受付のほうから「あ!」と声が聞こえてきた。 

「アンジェさん! ムギトさん!」

 ふと顔を向けると、セリナが明るい笑顔で手を振っていた。

「おはようございます。今日は早いんですね」

「ええ。たまたま仕度が早くできただけで、特に意味はないんだけどね」

「そうだったんですね。あ、セバスさんから預かった武器、できあがってますよ」

「あら、ありがとう」

 セリナに剣と小手を手渡され、それぞれ装備をする。

 前の小手は手の甲の緩衝材がスライムのように弾力があったのだが、できあがった小手は白っぽくなっていて緩衝材の高度が増していた。セリナ曰く、アイス・コアを混ぜたらしい。しかも重量は変わらず軽いままなので、大変助かる。これでどれくらい防御力が上がったのだろうか。ノアに尋ねようかといつものように視線を上を上げたが、今日はノアがいないのだった。

「あれ? 今日はノアちゃんいないんですね」

 セリナもノアがいないことに気づいたらしく、不思議そうに目をパチクリさせた。

「あ、ああ……ちょっと出かけてる」

「そうなんですか。なんか、ムギトさんの頭の上にノアちゃんがいないと淋しいですね」

「そうか? 俺は頭が重くないから凄くすっきりするんだけど」

 頭を掻きながらそう返すと、セリナはおかしそうに笑った。彼女の中では俺たちは「二人で一つニコイチ」だったようだが、これで多少は否定できただろうか。

「やれやれ」とため息をついたところで、集会所の扉が開いた。冒険者が来たらしい。

「冒険者」と言ってみたが、本当に冒険者かどうかは自信がなかった。なんせそいつは冒険者にしては身軽だった。

 しかもボロボロの服を着ており、顔もフードで隠れている。わかることは、線の細いシルエットから奴が男だということだけか。

 そいつは俺たちを見るとうざったそうに舌打ちをした。しかし、来客であることは間違いないらしく、律儀に俺たちの後ろに並ぶ。

 実際、セリナの要件ももう終わっているので俺もアンジェも一度彼女から離れ、部屋の角にある掲示板のほうへと足を向けた。

「なあ、あいつも冒険者なのか?」

 男に聞こえないように小声でアンジェに尋ねると、アンジェは「うーん」と腕を組んだ。

「あの感じ、ただ何かを売りに来たじゃないかしら」

 このギルドの集会所では魔物のコアを引き取ってくれるのだが、別にコア以外でも武器や防具の素材になりそうなものは買い取ってくれるらしい。なので、この集会所には冒険者やギルド員以外も立ち寄ることがあるのだという。

 アンジェはそう言うものの、あの男に関してなんかいい予感がしない。けれどもこれはただの俺の勘で根拠はない。

 現にセリナだって警戒している様子はなく、にこやかな表情で接客をしている。身なりも貧乏そうだし、少しでも金の足しにここまで売りに来た貧民なのだろうか。しかし、この胸騒ぎはいったいなんなのだろうか。
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