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第4章 ギルド、崩壊
第67話 命の炎が消え揺れる
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「アンジェ……これって……」
恐る恐るアンジェに話を振るが、顔を俯かせるだけで何も答えなかった。その応答が何よりも恐ろしかった。
「嘘だろ……おい、起きろよセリナ!」
アンジェのリアクションが信じられなくて、俺はセリナに飛びつくように彼女の肩を揺すった。それでも彼女は目を開けることはなく、無情にも触れた彼女の体が氷のように冷たかった。
「良しなさいムギト……それに、彼女はまだ死んでない」
ミドリーさんの発言にハッと顔を上げる。改めてじっと彼女を見ると、僅かに呼吸があった。しかし、その割にはミドリーさんもアンジェも絶望したように口数が少なく、彼女を直視しようとしない。それに、「まだ」という言葉も気になる。
「なあ……セリナの容態ってどんな感じなんだ?」
意を決して問うと、ミドリーさんが暗い表情のまま静かに答えた。
「怪我のほうは治せた。だが、過度に瘴気を吸ってしまっている」
「しょうき?」
「瘴気を知らんのか?」
驚いたように目を瞠ったミドリーさんだったが、すぐに「ああ、そうか」と一人で納得した。俺が記憶喪失だという設定を思い出したらしかった。
「瘴気は魔界に流れている『気』であり、我々にとっては毒だ。どうやら彼女たちを襲った爆弾に瘴気が溜められていたようで、爆破と共に充満してしまったらしい」
瘴気をなくすためにシスターの作った解毒薬で治療しようとしたが、爆破を直撃したセリナは瘴気も過度に食らってしまったのだという。だから他の人と違い瘴気の結晶とも言えるこんな紫色のあざが表に出てきてしまっているらしい。
「他の者はシスターの解毒薬で一命を取り留めたが……セリナの体はこのようにすでに瘴気が巡っており、解毒薬や俺の治癒魔法では手も足も出なかった……申し訳ない」
謝るミドリーさんの姿に全身の力が抜けた。
ミドリーさんのこの説明が全てだった。セリナは――もう時期死ぬ。
その事実を突きつけられた時、俺は彼女の横で膝を落とした。
彼女の寝顔をそっと見つめる。少しだけ目を離しただけなのに、彼女の顔にできた紫色のあざはまた少し広がって行った。こうして瘴気の毒は彼女の体を蝕んでいき、やがてその命を食らいつくすのだろう。
「なんで……こんなことに……」
脳裏に過ったのはセリナの眩しい笑顔だった。ほんの数十分前まであんなに元気だったのに、今の彼女はどうだ。その姿からは程遠く、命の灯火がすぐにでも消えてしまいそうだ。
こうなってしまったのも俺のせいだ。あの男のことを怪しんでいたのに、止められなかった。それどころかそいつの情報一つも得られずに逃がしてしまった。役立たずの、とんだグズ野郎だ。
「すまない……私にもっと力があれば……」
ミドリーさんが悲壮感漂う声で自分の大きな手を見つめる。
治療魔法が使えるミドリーさんがどうにもできないのなら、この先の未来は見えていた。このまま彼女は目を開けることなく、永遠の眠りにつく。
彼が非力なのではない。仕方がないのだ。ノアが前に言っていた。治療魔法は魔力の消費量が他の魔法と桁違いに多い。たとえ彼が【治療師】であっても、これ以上のことはできないのだ。そもそも、普通の人間では魔力が足りない。
わかっている。わかっているのに、悔しくて悔しくてたまらない。
「ムギちゃん……」
後ろでアンジェが悲しそうな声で俺を呼ぶが、顔を上げることはできなかった。
堪えたいのに、俺の意思とは関係なしに涙が出てくる。視界が涙で歪み、隣にいるセリナの顔ですら霞んで見える。なんて無様な姿だ。泣いても喚いても、彼女を救う手立てはないのに。
世界は無情だ。理論上なら余程体に損傷がなく御霊がこの世に残っていれば、蘇生魔法で御霊を体に戻すことができる。そんなRPG染みたことができるのに、普通の人間では魔力不足で不可能。彼女を救える可能性はあるのに、その希望がないのだ。
そう、普通の人間では……。
……あれ?
恐る恐るアンジェに話を振るが、顔を俯かせるだけで何も答えなかった。その応答が何よりも恐ろしかった。
「嘘だろ……おい、起きろよセリナ!」
アンジェのリアクションが信じられなくて、俺はセリナに飛びつくように彼女の肩を揺すった。それでも彼女は目を開けることはなく、無情にも触れた彼女の体が氷のように冷たかった。
「良しなさいムギト……それに、彼女はまだ死んでない」
ミドリーさんの発言にハッと顔を上げる。改めてじっと彼女を見ると、僅かに呼吸があった。しかし、その割にはミドリーさんもアンジェも絶望したように口数が少なく、彼女を直視しようとしない。それに、「まだ」という言葉も気になる。
「なあ……セリナの容態ってどんな感じなんだ?」
意を決して問うと、ミドリーさんが暗い表情のまま静かに答えた。
「怪我のほうは治せた。だが、過度に瘴気を吸ってしまっている」
「しょうき?」
「瘴気を知らんのか?」
驚いたように目を瞠ったミドリーさんだったが、すぐに「ああ、そうか」と一人で納得した。俺が記憶喪失だという設定を思い出したらしかった。
「瘴気は魔界に流れている『気』であり、我々にとっては毒だ。どうやら彼女たちを襲った爆弾に瘴気が溜められていたようで、爆破と共に充満してしまったらしい」
瘴気をなくすためにシスターの作った解毒薬で治療しようとしたが、爆破を直撃したセリナは瘴気も過度に食らってしまったのだという。だから他の人と違い瘴気の結晶とも言えるこんな紫色のあざが表に出てきてしまっているらしい。
「他の者はシスターの解毒薬で一命を取り留めたが……セリナの体はこのようにすでに瘴気が巡っており、解毒薬や俺の治癒魔法では手も足も出なかった……申し訳ない」
謝るミドリーさんの姿に全身の力が抜けた。
ミドリーさんのこの説明が全てだった。セリナは――もう時期死ぬ。
その事実を突きつけられた時、俺は彼女の横で膝を落とした。
彼女の寝顔をそっと見つめる。少しだけ目を離しただけなのに、彼女の顔にできた紫色のあざはまた少し広がって行った。こうして瘴気の毒は彼女の体を蝕んでいき、やがてその命を食らいつくすのだろう。
「なんで……こんなことに……」
脳裏に過ったのはセリナの眩しい笑顔だった。ほんの数十分前まであんなに元気だったのに、今の彼女はどうだ。その姿からは程遠く、命の灯火がすぐにでも消えてしまいそうだ。
こうなってしまったのも俺のせいだ。あの男のことを怪しんでいたのに、止められなかった。それどころかそいつの情報一つも得られずに逃がしてしまった。役立たずの、とんだグズ野郎だ。
「すまない……私にもっと力があれば……」
ミドリーさんが悲壮感漂う声で自分の大きな手を見つめる。
治療魔法が使えるミドリーさんがどうにもできないのなら、この先の未来は見えていた。このまま彼女は目を開けることなく、永遠の眠りにつく。
彼が非力なのではない。仕方がないのだ。ノアが前に言っていた。治療魔法は魔力の消費量が他の魔法と桁違いに多い。たとえ彼が【治療師】であっても、これ以上のことはできないのだ。そもそも、普通の人間では魔力が足りない。
わかっている。わかっているのに、悔しくて悔しくてたまらない。
「ムギちゃん……」
後ろでアンジェが悲しそうな声で俺を呼ぶが、顔を上げることはできなかった。
堪えたいのに、俺の意思とは関係なしに涙が出てくる。視界が涙で歪み、隣にいるセリナの顔ですら霞んで見える。なんて無様な姿だ。泣いても喚いても、彼女を救う手立てはないのに。
世界は無情だ。理論上なら余程体に損傷がなく御霊がこの世に残っていれば、蘇生魔法で御霊を体に戻すことができる。そんなRPG染みたことができるのに、普通の人間では魔力不足で不可能。彼女を救える可能性はあるのに、その希望がないのだ。
そう、普通の人間では……。
……あれ?
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