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第4章 ギルド、崩壊
第68話 そこに希望があるならば
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自分で言い聞かせておいて、その言葉に違和感を抱く。
なぜ俺は、今「普通の人間は不可能」と思ったのだろう。
そもそも、どうして俺はこんなことを知っているのだっけ。
頭脳をフル回転させ、記憶を蘇らせる。確か、この蘇生魔法の知識はノアから聞いたのだ。
いったい、いつ?
そうだ、初めて【治療師】であるミドリーさんに会った日だ。俺があいつに素朴な疑問として【治療師】が蘇生魔法を扱えないのか問うた。
――あれだけのことができるなら、蘇生もできるんじゃねえの?
ノアの奴、なんて言っていた?
――むしろ、それくらいのことしかできないのだよ。
いや、他にもあったはずだ。
思い出せ……思い出すんだ俺。
――エルフくらい魔力があるならまだしも、普通の人間じゃまず無理だ。
……その言葉が頭によぎった時、俺はハッと息を呑んだ。
「……エルフくらいの……魔力……」
あいつの淡々とした口調のセリフが不意に漏れる。すると、ミドリーさんとアンジェが口を揃えて「え?」と声をあげた。
「……ムギト……お前、今なんて言った?」
ミドリーさんが肝を潰したような様子で俺に尋ねる。
服の袖で涙を拭き、徐に顔を上げてみるとミドリーさんもアンジェも目を丸くさせて俺を見ていた。
そんな彼らに、俺は逆に問いただした。
「いるんだろ? この世界に――エルフって奴が」
その問いにミドリーさんの眉がピクリと動いた。その後ろでは目を瞠ったアンジェがあんぐりと口を開けている。
「ムギちゃん……エルフのこと知ってたの?」
驚くアンジェだったが、俺は首を横に振った。エルフという種族の名前は知っているが、この世界でのエルフはわからない。
「ノアが前に少しだけ教えてくれたんだよ。エルフって魔力が高いんだろ? そのエルフって奴ならセリナのことを助けられるかもしれないじゃねえか」
これが最善の策かどうかは俺には判断できない。だが、ここにいたってセリナは死ぬだけだ。そんなことは俺でもわかる。
「なあ……教えろよ、エルフの居場所」
真剣な眼差しで彼らを見つめると、二人は「信じられない」という表情で絶句していた。
それでも俺の意志は揺るがなかった。たとえそれがわずかな希望であっても、そこに彼女を救える術があるのならそれに縋りつきたいのだ。
その覚悟を拳に宿し、爪が食い込むくらいグッと握りしめる。そして凛とした迷いない両眼で彼らにはっきりと告げた。
「俺、エルフを連れてくるよ」
その発言に二人は同時に目を見開いた。
「何馬鹿なことを言っているのよ!」
血相を変えたアンジェが俺の両肩を掴んで止めに入る。いつも温厚な彼からは考えられない程の荒声で、切れ長の目も血走っていた。
「あんた、エルフがどこにいるかわかって言ってるの?」
アンジェの両手に力が籠り、俺の肩に痛みが走る。力尽くでも俺を止めるつもりだろう。だが、奴らがどこにいようが、俺には関係がない。
「いいよどこでも。地の果てまでも探しに行ってやる」
アンジェを睨みつけ、掴んできた彼の両手を無理矢理取り払う。こんなに頑なにしているのに、アンジェもアンジェで退かなかった。
「だって、『ザラクの森』を抜けなきゃいけないのよ!? 生半可な気持ちで行ける訳ないでしょ!?」
『ザラクの森』
初めて聞く地名だ。だが、この森こそがアンジェがここまで俺を止める理由なのである。
それを説明してくれたのはミドリーさんのほうだった。
「別名・死霊の森。エレメント系の魔物の住処でな、瘴気とまでは行かないが、それに近い陰の気が森中に溜まってるんだ。毒とは言わないが、普通の人間はまず近づかん。だが、エルフはその森の奥に住んでいると言われている」
「言われている?」
気になるミドリーさんの言葉に思わず突っかかる。
「そこまでわかっているのに確定じゃないんすか?」
「言っただろ。普通の人間はまず近づかない。つまり、抜けた者がいないと言っても過言ではないのだ。ただ、そういう伝承が残ってるだけでな」
「つまり、人里離れて暮らしてるってことか」
RPGなんかでもエルフは人嫌いの設定は多いがどうやらここでもそのようだ。いったい、この世界の人間はそんな高等種族に何をやらかしたのだ。恨むぞこの野郎。
だが、これでアンジェが俺を止める理由がわかった。最難関クラスのダンジョン。それを抜けたとしても確証の持てないエルフの居所。確かに無茶苦茶なことをやろうとしているのはわかる。
しかし、難関なのは何もダンジョンだけではなかった。
なぜ俺は、今「普通の人間は不可能」と思ったのだろう。
そもそも、どうして俺はこんなことを知っているのだっけ。
頭脳をフル回転させ、記憶を蘇らせる。確か、この蘇生魔法の知識はノアから聞いたのだ。
いったい、いつ?
そうだ、初めて【治療師】であるミドリーさんに会った日だ。俺があいつに素朴な疑問として【治療師】が蘇生魔法を扱えないのか問うた。
――あれだけのことができるなら、蘇生もできるんじゃねえの?
ノアの奴、なんて言っていた?
――むしろ、それくらいのことしかできないのだよ。
いや、他にもあったはずだ。
思い出せ……思い出すんだ俺。
――エルフくらい魔力があるならまだしも、普通の人間じゃまず無理だ。
……その言葉が頭によぎった時、俺はハッと息を呑んだ。
「……エルフくらいの……魔力……」
あいつの淡々とした口調のセリフが不意に漏れる。すると、ミドリーさんとアンジェが口を揃えて「え?」と声をあげた。
「……ムギト……お前、今なんて言った?」
ミドリーさんが肝を潰したような様子で俺に尋ねる。
服の袖で涙を拭き、徐に顔を上げてみるとミドリーさんもアンジェも目を丸くさせて俺を見ていた。
そんな彼らに、俺は逆に問いただした。
「いるんだろ? この世界に――エルフって奴が」
その問いにミドリーさんの眉がピクリと動いた。その後ろでは目を瞠ったアンジェがあんぐりと口を開けている。
「ムギちゃん……エルフのこと知ってたの?」
驚くアンジェだったが、俺は首を横に振った。エルフという種族の名前は知っているが、この世界でのエルフはわからない。
「ノアが前に少しだけ教えてくれたんだよ。エルフって魔力が高いんだろ? そのエルフって奴ならセリナのことを助けられるかもしれないじゃねえか」
これが最善の策かどうかは俺には判断できない。だが、ここにいたってセリナは死ぬだけだ。そんなことは俺でもわかる。
「なあ……教えろよ、エルフの居場所」
真剣な眼差しで彼らを見つめると、二人は「信じられない」という表情で絶句していた。
それでも俺の意志は揺るがなかった。たとえそれがわずかな希望であっても、そこに彼女を救える術があるのならそれに縋りつきたいのだ。
その覚悟を拳に宿し、爪が食い込むくらいグッと握りしめる。そして凛とした迷いない両眼で彼らにはっきりと告げた。
「俺、エルフを連れてくるよ」
その発言に二人は同時に目を見開いた。
「何馬鹿なことを言っているのよ!」
血相を変えたアンジェが俺の両肩を掴んで止めに入る。いつも温厚な彼からは考えられない程の荒声で、切れ長の目も血走っていた。
「あんた、エルフがどこにいるかわかって言ってるの?」
アンジェの両手に力が籠り、俺の肩に痛みが走る。力尽くでも俺を止めるつもりだろう。だが、奴らがどこにいようが、俺には関係がない。
「いいよどこでも。地の果てまでも探しに行ってやる」
アンジェを睨みつけ、掴んできた彼の両手を無理矢理取り払う。こんなに頑なにしているのに、アンジェもアンジェで退かなかった。
「だって、『ザラクの森』を抜けなきゃいけないのよ!? 生半可な気持ちで行ける訳ないでしょ!?」
『ザラクの森』
初めて聞く地名だ。だが、この森こそがアンジェがここまで俺を止める理由なのである。
それを説明してくれたのはミドリーさんのほうだった。
「別名・死霊の森。エレメント系の魔物の住処でな、瘴気とまでは行かないが、それに近い陰の気が森中に溜まってるんだ。毒とは言わないが、普通の人間はまず近づかん。だが、エルフはその森の奥に住んでいると言われている」
「言われている?」
気になるミドリーさんの言葉に思わず突っかかる。
「そこまでわかっているのに確定じゃないんすか?」
「言っただろ。普通の人間はまず近づかない。つまり、抜けた者がいないと言っても過言ではないのだ。ただ、そういう伝承が残ってるだけでな」
「つまり、人里離れて暮らしてるってことか」
RPGなんかでもエルフは人嫌いの設定は多いがどうやらここでもそのようだ。いったい、この世界の人間はそんな高等種族に何をやらかしたのだ。恨むぞこの野郎。
だが、これでアンジェが俺を止める理由がわかった。最難関クラスのダンジョン。それを抜けたとしても確証の持てないエルフの居所。確かに無茶苦茶なことをやろうとしているのはわかる。
しかし、難関なのは何もダンジョンだけではなかった。
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