83 / 242
第5章 『死の森』へ
第83話 ピンチは重なるもの
しおりを挟む
それにしてもあれが本場の『冷たい風』か。
俺の技を見てノアが笑っていた理由がようやくわかった。あんなのと比べると、俺の魔法はカス同然だ。
けれども、俺が攻めなければこの勝負は負ける。それに、俺も最初から魔法で勝負していない。
「おらぁ!」
気合いに身を任せ、バトルフォークを掲げたまま死神に突っ込む。しかし、その動きも完全に奴に見破られており、俺の攻撃を両腕で防いできた。
無理矢理押し込んでみようとするが、体格差のせいもあってか、奴はピクリとも動かなかった。そしてついには両腕を振るわれ、俺ごと吹っ飛ばした。
「ムギちゃん!」
アンジェが声をあげた時には俺は再び地面に転がされていた。しかし、これは然程ダメージはなく、すぐに立ち上がることができた。
「くっそー……邪魔だなあの腕……」
魔法もパワーも圧倒的。しかも相手のリーチは長い。これは攻撃を当てるのはかなり厳しそうだ。
つまるところ、大ピンチである。
そのピンチに追い打ちをかけるようにアンジェが告白する。
「ムギちゃん……謝りたいことがあるの」
「なんだよ、この期に及んで……」
「多分……あたし、魔法打てるのあと一発だわ」
「マジか」
ちらりとアンジェを見ると、彼は頬を引き攣らせながら滲んだ脂汗を手で拭っていた。
彼の場合、当の昔に体力の限界が来ていたはずだ。火事場の馬鹿力でここまで動いてくれたのだろうが、それも切れたのだろう。
しかし、ここまでふらふらなのにアンジェは徐に剣の切っ先を死神の前に向けた。
「だからこそ……これであいつの動きを止めるわ」
「そんな……無茶するなよ」
「いいえ、このままだと今度は体力がなくなっちゃう。動けるうちに動かないと」
だから、力を貸して。
そう紡いだ彼の剣は、すでにわずかに炎が纏っていた。
「……わかった」
彼の覚悟に俺も腹を括る。
おそらく彼は死神目がけて火炎放射を一直線に打つだろう。
そして死神がサイドどちらかに動く隙を突いて俺が攻撃を仕かけるのだ。同時に襲いかかれば一発は食らわせられるはず。
「行くわよ」
彼の言葉を合図に俺は一気に死神に距離を詰めた。その動きを見てアンジェが火炎放射を放った。
だが、その時空洞になっているはずの死神の口元がにやりと笑った気がした。
息を呑んだ時にはもう遅かった。俺は奴の術中にはまっていたのだ。
チームプレイなのは何も俺たちだけではない。奴らにも仲間がいるのだ。
「ケケケケッ!!」
笑い声をあげたブルースピリットたちが一斉に俺に飛びかかる。
しかも嚙みつくのではなく視界を阻んでいるように俺の顔面に纏わりつく。これのせいで俺の足は止まり、見事に押さえ込まれてしまった。
「こいつら……気持ち悪いんだよ!」
わらわらと群れるブルースピリットたちを力任せに薙ぎ払う。するとフォークに直撃したブルースピリットたちは喚きながらぶっ飛んでいった。
これでようやく邪魔者は消えた。
けれども、視界が晴れた俺を待っていたのは、振りかぶった死神の鋭利な爪だった。
はめられた。
ブルースピリットが俺の動きを止めたのは攻撃を防いだだけではない。死角を作って死神に攻撃させる隙を与えたのだ。あいつらは、初めから俺を狙っていたのだ。
しかし、この間合いでは避けることができない。
――刺される!
その恐怖に俺は反射的に目をつむってしまった。
途端、横から何かが俺に突っ込んできた。
あまりの勢いに俺は地面に転がるくらいふっ飛ばされた。一瞬何が起こったかわからなかったが、ハッと振り返ると、視界に飛び散った赤い鮮血が映じた。
――嫌な予感がした。
地面に倒れ込んだまま、恐る恐る顔を上げる。そこで見えた残酷な光景に俺は目を見開いたまま動くことができなかった。
俺の技を見てノアが笑っていた理由がようやくわかった。あんなのと比べると、俺の魔法はカス同然だ。
けれども、俺が攻めなければこの勝負は負ける。それに、俺も最初から魔法で勝負していない。
「おらぁ!」
気合いに身を任せ、バトルフォークを掲げたまま死神に突っ込む。しかし、その動きも完全に奴に見破られており、俺の攻撃を両腕で防いできた。
無理矢理押し込んでみようとするが、体格差のせいもあってか、奴はピクリとも動かなかった。そしてついには両腕を振るわれ、俺ごと吹っ飛ばした。
「ムギちゃん!」
アンジェが声をあげた時には俺は再び地面に転がされていた。しかし、これは然程ダメージはなく、すぐに立ち上がることができた。
「くっそー……邪魔だなあの腕……」
魔法もパワーも圧倒的。しかも相手のリーチは長い。これは攻撃を当てるのはかなり厳しそうだ。
つまるところ、大ピンチである。
そのピンチに追い打ちをかけるようにアンジェが告白する。
「ムギちゃん……謝りたいことがあるの」
「なんだよ、この期に及んで……」
「多分……あたし、魔法打てるのあと一発だわ」
「マジか」
ちらりとアンジェを見ると、彼は頬を引き攣らせながら滲んだ脂汗を手で拭っていた。
彼の場合、当の昔に体力の限界が来ていたはずだ。火事場の馬鹿力でここまで動いてくれたのだろうが、それも切れたのだろう。
しかし、ここまでふらふらなのにアンジェは徐に剣の切っ先を死神の前に向けた。
「だからこそ……これであいつの動きを止めるわ」
「そんな……無茶するなよ」
「いいえ、このままだと今度は体力がなくなっちゃう。動けるうちに動かないと」
だから、力を貸して。
そう紡いだ彼の剣は、すでにわずかに炎が纏っていた。
「……わかった」
彼の覚悟に俺も腹を括る。
おそらく彼は死神目がけて火炎放射を一直線に打つだろう。
そして死神がサイドどちらかに動く隙を突いて俺が攻撃を仕かけるのだ。同時に襲いかかれば一発は食らわせられるはず。
「行くわよ」
彼の言葉を合図に俺は一気に死神に距離を詰めた。その動きを見てアンジェが火炎放射を放った。
だが、その時空洞になっているはずの死神の口元がにやりと笑った気がした。
息を呑んだ時にはもう遅かった。俺は奴の術中にはまっていたのだ。
チームプレイなのは何も俺たちだけではない。奴らにも仲間がいるのだ。
「ケケケケッ!!」
笑い声をあげたブルースピリットたちが一斉に俺に飛びかかる。
しかも嚙みつくのではなく視界を阻んでいるように俺の顔面に纏わりつく。これのせいで俺の足は止まり、見事に押さえ込まれてしまった。
「こいつら……気持ち悪いんだよ!」
わらわらと群れるブルースピリットたちを力任せに薙ぎ払う。するとフォークに直撃したブルースピリットたちは喚きながらぶっ飛んでいった。
これでようやく邪魔者は消えた。
けれども、視界が晴れた俺を待っていたのは、振りかぶった死神の鋭利な爪だった。
はめられた。
ブルースピリットが俺の動きを止めたのは攻撃を防いだだけではない。死角を作って死神に攻撃させる隙を与えたのだ。あいつらは、初めから俺を狙っていたのだ。
しかし、この間合いでは避けることができない。
――刺される!
その恐怖に俺は反射的に目をつむってしまった。
途端、横から何かが俺に突っ込んできた。
あまりの勢いに俺は地面に転がるくらいふっ飛ばされた。一瞬何が起こったかわからなかったが、ハッと振り返ると、視界に飛び散った赤い鮮血が映じた。
――嫌な予感がした。
地面に倒れ込んだまま、恐る恐る顔を上げる。そこで見えた残酷な光景に俺は目を見開いたまま動くことができなかった。
10
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる