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第5章 『死の森』へ
第84話 お前はいつもそうやって
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それは、呼吸を忘れるほどの衝撃だった。
「……アンジェ?」
思わず彼の名前を呼ぶが、返事はなかった。
アンジェは死神に腹部を貫かれて宙に浮いたままうなだれていたのだ。しかもアンジェの血液は貫通した死神の爪を伝い、ぽたぽたと凋落している。
ピクリとも動かないアンジェを見て、浮遊しているブルースピリットがケタケタと笑う。まるでアンジェを仕留めたことを喜んでいるようだ。
一方、死神はアンジェに興味がないのか、腕を振ってアンジェを捨てるように地面に叩きつけた。
振り落とされたアンジェは地面に何バウンドした後、そのまま転がって動かなくなった。
そこで俺は我に返り、弾けたように彼の元へ駆け出した。
「お、おい……アンジェ……?」
うろたえながらもアンジェの体を起こし上げる。息はあるが、彼が噎せるとそのまま吐血した。刺された腹部の傷も深いようで、未だにどくどくと血が流れ出ている。
「ま、待ってろ……今、治してやるから……」
慌てて鞄からクーラの水を取り出し、蓋を取って彼の患部に水をかける。
だが、いくら水をかけても傷は一向に塞がらない。クーラの水では回復が追いつかないのだ。そしてついには俺の持っていたクーラの水がなくなった。
空になったウォーター・コア・ボトルを握る手は、動揺で震えていた。
このままではアンジェが死ぬ。アンジェが死ぬ。アンジェが死ぬ……
そんな縁起でもない思考が脳内にずっと駆け巡る。
「くそ……なんで……」
なんで、アンジェは俺なんかかばったのだ。
俺なんて武器も、クラスも、何一つ恵まれていないのに。それ比べてアンジェは強くて、優しくて、みんなに慕われていて……。
俺よりずっと勇者に相応しい人材ではないか。それなのに、なんで、こんな彼が死んでしまいそうなのだ。
悔しさに下唇を噛んで俯いていると、アンジェの頬にぽたりと雫が落ちた。それが自分の涙だと気づいた時、アンジェが「フフッ」と力なく笑った。
「なんでって……言われてもねえ……」
今にも消えそうな虫の息なのに、うっすらと開けたアンジェの目は笑っていた。
「だって……放っておけないじゃない……」
ゆっくり、ゆっくりとアンジェが俺の頬に手を伸ばす。そして、そっと俺の目から流れた涙を拭くと、アンジェは小さく微笑んだ。
「ごめんねムギちゃん……あなたが無事で……よかっ……」
それだけ告げたアンジェは再び目を閉じた。
それと同時に、彼の腕が脱力したようにフッと落ちる。
「アンジェ? おい、アンジェ!」
彼の名を呼んで体を揺らすが、反応はない。ただ口角は微かに上がっており、顔つきもどこか安らかだった。
それは、まるで永遠の眠りについているようで――……
そう思ってしまった時、俺の頭の中は真っ白になっていた。
眠るアンジェを呆然と見つめる中、ブルースピリットたちはまだ俺たちをあざ笑っていた。しかし、そんな不快な笑い声も俺の耳には届いていない
――許さない。
動揺で震えていた拳は、いつしか怒りに変わっていた。
もう、奴らの何もかもが許せなかった。よくもアンジェを、仲間を、こんな目に遭わした。
徐に立ち上がると、あれだけ騒がしく笑っていたブルースピリットたちがぴたりと止んだ。
俺が何かしてくるとでも思ったのだろう。だが、俺の手にはバトルフォークはない。それが奴らは不思議でたまらないらしく、警戒するようにただその場で浮遊していた。
こんなに憤っているのに、俺自身はやけに冷静だった。
いくら物理攻撃が効いたって、俺一人でこいつら全員を倒すには分が悪い。だから、物理攻撃はやめた。もっと確実な方法で、奴らの息の根を止めたい。
だが、俺自身にその能力が足りているのか、その確証はまったくなかった。なんせ、今は俺のステータス情報を管理しているノアがいない。それに、正直ちゃんと発動するのかすらもわからなかった。
それでも、俺がこの状況をひっくり返すにはこれしかない。
両腕を広げ、神経を集中させる。
「お前ら……覚悟しろよ……」
涙に濡れた目でエレメントたちを睨みつけると、奴らが息を呑んだ気がした。
「……アンジェ?」
思わず彼の名前を呼ぶが、返事はなかった。
アンジェは死神に腹部を貫かれて宙に浮いたままうなだれていたのだ。しかもアンジェの血液は貫通した死神の爪を伝い、ぽたぽたと凋落している。
ピクリとも動かないアンジェを見て、浮遊しているブルースピリットがケタケタと笑う。まるでアンジェを仕留めたことを喜んでいるようだ。
一方、死神はアンジェに興味がないのか、腕を振ってアンジェを捨てるように地面に叩きつけた。
振り落とされたアンジェは地面に何バウンドした後、そのまま転がって動かなくなった。
そこで俺は我に返り、弾けたように彼の元へ駆け出した。
「お、おい……アンジェ……?」
うろたえながらもアンジェの体を起こし上げる。息はあるが、彼が噎せるとそのまま吐血した。刺された腹部の傷も深いようで、未だにどくどくと血が流れ出ている。
「ま、待ってろ……今、治してやるから……」
慌てて鞄からクーラの水を取り出し、蓋を取って彼の患部に水をかける。
だが、いくら水をかけても傷は一向に塞がらない。クーラの水では回復が追いつかないのだ。そしてついには俺の持っていたクーラの水がなくなった。
空になったウォーター・コア・ボトルを握る手は、動揺で震えていた。
このままではアンジェが死ぬ。アンジェが死ぬ。アンジェが死ぬ……
そんな縁起でもない思考が脳内にずっと駆け巡る。
「くそ……なんで……」
なんで、アンジェは俺なんかかばったのだ。
俺なんて武器も、クラスも、何一つ恵まれていないのに。それ比べてアンジェは強くて、優しくて、みんなに慕われていて……。
俺よりずっと勇者に相応しい人材ではないか。それなのに、なんで、こんな彼が死んでしまいそうなのだ。
悔しさに下唇を噛んで俯いていると、アンジェの頬にぽたりと雫が落ちた。それが自分の涙だと気づいた時、アンジェが「フフッ」と力なく笑った。
「なんでって……言われてもねえ……」
今にも消えそうな虫の息なのに、うっすらと開けたアンジェの目は笑っていた。
「だって……放っておけないじゃない……」
ゆっくり、ゆっくりとアンジェが俺の頬に手を伸ばす。そして、そっと俺の目から流れた涙を拭くと、アンジェは小さく微笑んだ。
「ごめんねムギちゃん……あなたが無事で……よかっ……」
それだけ告げたアンジェは再び目を閉じた。
それと同時に、彼の腕が脱力したようにフッと落ちる。
「アンジェ? おい、アンジェ!」
彼の名を呼んで体を揺らすが、反応はない。ただ口角は微かに上がっており、顔つきもどこか安らかだった。
それは、まるで永遠の眠りについているようで――……
そう思ってしまった時、俺の頭の中は真っ白になっていた。
眠るアンジェを呆然と見つめる中、ブルースピリットたちはまだ俺たちをあざ笑っていた。しかし、そんな不快な笑い声も俺の耳には届いていない
――許さない。
動揺で震えていた拳は、いつしか怒りに変わっていた。
もう、奴らの何もかもが許せなかった。よくもアンジェを、仲間を、こんな目に遭わした。
徐に立ち上がると、あれだけ騒がしく笑っていたブルースピリットたちがぴたりと止んだ。
俺が何かしてくるとでも思ったのだろう。だが、俺の手にはバトルフォークはない。それが奴らは不思議でたまらないらしく、警戒するようにただその場で浮遊していた。
こんなに憤っているのに、俺自身はやけに冷静だった。
いくら物理攻撃が効いたって、俺一人でこいつら全員を倒すには分が悪い。だから、物理攻撃はやめた。もっと確実な方法で、奴らの息の根を止めたい。
だが、俺自身にその能力が足りているのか、その確証はまったくなかった。なんせ、今は俺のステータス情報を管理しているノアがいない。それに、正直ちゃんと発動するのかすらもわからなかった。
それでも、俺がこの状況をひっくり返すにはこれしかない。
両腕を広げ、神経を集中させる。
「お前ら……覚悟しろよ……」
涙に濡れた目でエレメントたちを睨みつけると、奴らが息を呑んだ気がした。
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追記:2025/09/20
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