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第6章 森の奥の隠れ里
第86話 知らない場所と知らない子供
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体が重い。
まるで腹部に鉛が乗っているようだ。
それでいて、この包み込まれるような温もりはなんなのだろう。
うっすらと瞼を開けると、木製の天井が映り込んできた。しかも、ベッドの上に寝かされている。
知らない場所だ。どうして俺はこんなところにいるのだろう。
『ザラクの森』を抜けたところまではかろうじて覚えているのだが……確かそこで力尽きたような気がする。
けれども、随分と眠っていたようで記憶が混濁していた。
「どこだここ……」
寝ぼけ眼で頭を掻くが、ふと掛け布団の上に目を落としてギョッとした。
緑色で耳が隠れるくらい程のマッシュボブの髪をした男の子が掛け布団にしがみつくように眠りについていたのだ。
年齢は十歳前後と言ったところか。言うまでもなく、知らない子だ。
戸惑っていると、男の子がパチッと目を開けた。
男の子は大きな翠眼でじっと俺を見つめてくる。
そして何度か瞬きをした男の子は、やがて不思議そうに首を傾げた。
「……お兄ちゃん、だぁれ?」
「いや……それはこっちのセリフなんだけど……」
頬を引きつらせながら苦笑するが、男の子は相変わらずぽかんとしている。
それにしても、こんな至近距離でパッチリとした純粋無垢な目で見つめられると調子が狂ってしまう。
「えっと……ムギトだ」
頬を掻き、視線を逸らして答えると男の子も名乗ってくれた。
「僕はリオン」
「リオンな……ここってお前の家?」
「うん、そうだよ」
あっけらかんとした口調でリオンは頷く。しかも未だに布団にしがみついて俺の上から降りようとしない。
半目になって眉をひそめていると、突然リオンが俺の両耳に手を伸ばしてきた。
「……ムギト君の耳、僕と似てる?」
「ああ?」
リオンがふにふにと耳輪の上部を触ってくる。これは流石にくすぐったく、思わず首を振って払った。
「耳の形なんてみんな同じだろ?」
「同じ? 僕はみんなと違うよ?」
「ほら」と、リオンは髪を掻き上げ、隠れていた耳を見せてくる。
言われてみれば子供にしてはちょっと耳輪の上が長いような気がするが、それくらい微々たる差だろう。
「あんま変わんねえよ」
「そうかなー」
「そうそう。ほら、もう降りろよ」
小首を傾げるリオンを持ち上げ、そのままベッドの下に降ろす。
ついでに自分も起き上がると、服を着ていないことに気づいた。
「ん!?」
慌てて布団の下を捲ると、パンツは履いていた。ならば、他の服はどこへ行った?
うろたえながら服を探していると、リオンがスッと畳まれた俺の服を手渡してくれた。
「おお、サンキュー。でも、なんで俺脱がされてるんだ?」
「兄ちゃんが『汚い服でベッドに寝かせるな』って言ってたから」
と言うリオンの横で服を広げてみると、確かに泥やら血やらで汚れていた。
「まあ……このまま寝ると汚れるわな」
そもそも、こんなに汚れてしまったらこの服はもう着れない。仕方ない。鞄から着替えを出すか。
ため息をつきながら自分の鞄を探す。そこでようやく、体に痛みがないことに気づいた。
「……あれ?」
死神の『冷たい風』で腕や頬を切ったのに、いつのまにか腕の傷も頬の傷も綺麗さっぱりなくなっている。
――なんで、傷が治ってるんだ?
消えた腕の傷をじっと見つめ、記憶を呼び起こす。だが、思い出したのは怪我なんかよりもっと大事なことだった。
「やっべ! アンジェ!!」
ガバッと立ち上がると隣でリオンが「アンジェ?」と目をパチクリさせた。
「もしかして、ムギト君と一緒にいた赤い髪のお兄ちゃんのこと?」
「そう! それ! 知ってるのか?」
「うん。こっちの部屋にいるよ」
そう言ってリオンは俺の手を引き、俺を隣の部屋へと連れて行った。
部屋に入ると、アンジェがベッドの中で眠っていた。
慌てて彼の元に近づき、顔を覗き込んでみる。すると、アンジェは安らか表情で寝息をたてて眠っていた。森で倒れた時よりずっと血色もいいし、この分だとそのうち目を覚ましてくれそうだ。
まるで腹部に鉛が乗っているようだ。
それでいて、この包み込まれるような温もりはなんなのだろう。
うっすらと瞼を開けると、木製の天井が映り込んできた。しかも、ベッドの上に寝かされている。
知らない場所だ。どうして俺はこんなところにいるのだろう。
『ザラクの森』を抜けたところまではかろうじて覚えているのだが……確かそこで力尽きたような気がする。
けれども、随分と眠っていたようで記憶が混濁していた。
「どこだここ……」
寝ぼけ眼で頭を掻くが、ふと掛け布団の上に目を落としてギョッとした。
緑色で耳が隠れるくらい程のマッシュボブの髪をした男の子が掛け布団にしがみつくように眠りについていたのだ。
年齢は十歳前後と言ったところか。言うまでもなく、知らない子だ。
戸惑っていると、男の子がパチッと目を開けた。
男の子は大きな翠眼でじっと俺を見つめてくる。
そして何度か瞬きをした男の子は、やがて不思議そうに首を傾げた。
「……お兄ちゃん、だぁれ?」
「いや……それはこっちのセリフなんだけど……」
頬を引きつらせながら苦笑するが、男の子は相変わらずぽかんとしている。
それにしても、こんな至近距離でパッチリとした純粋無垢な目で見つめられると調子が狂ってしまう。
「えっと……ムギトだ」
頬を掻き、視線を逸らして答えると男の子も名乗ってくれた。
「僕はリオン」
「リオンな……ここってお前の家?」
「うん、そうだよ」
あっけらかんとした口調でリオンは頷く。しかも未だに布団にしがみついて俺の上から降りようとしない。
半目になって眉をひそめていると、突然リオンが俺の両耳に手を伸ばしてきた。
「……ムギト君の耳、僕と似てる?」
「ああ?」
リオンがふにふにと耳輪の上部を触ってくる。これは流石にくすぐったく、思わず首を振って払った。
「耳の形なんてみんな同じだろ?」
「同じ? 僕はみんなと違うよ?」
「ほら」と、リオンは髪を掻き上げ、隠れていた耳を見せてくる。
言われてみれば子供にしてはちょっと耳輪の上が長いような気がするが、それくらい微々たる差だろう。
「あんま変わんねえよ」
「そうかなー」
「そうそう。ほら、もう降りろよ」
小首を傾げるリオンを持ち上げ、そのままベッドの下に降ろす。
ついでに自分も起き上がると、服を着ていないことに気づいた。
「ん!?」
慌てて布団の下を捲ると、パンツは履いていた。ならば、他の服はどこへ行った?
うろたえながら服を探していると、リオンがスッと畳まれた俺の服を手渡してくれた。
「おお、サンキュー。でも、なんで俺脱がされてるんだ?」
「兄ちゃんが『汚い服でベッドに寝かせるな』って言ってたから」
と言うリオンの横で服を広げてみると、確かに泥やら血やらで汚れていた。
「まあ……このまま寝ると汚れるわな」
そもそも、こんなに汚れてしまったらこの服はもう着れない。仕方ない。鞄から着替えを出すか。
ため息をつきながら自分の鞄を探す。そこでようやく、体に痛みがないことに気づいた。
「……あれ?」
死神の『冷たい風』で腕や頬を切ったのに、いつのまにか腕の傷も頬の傷も綺麗さっぱりなくなっている。
――なんで、傷が治ってるんだ?
消えた腕の傷をじっと見つめ、記憶を呼び起こす。だが、思い出したのは怪我なんかよりもっと大事なことだった。
「やっべ! アンジェ!!」
ガバッと立ち上がると隣でリオンが「アンジェ?」と目をパチクリさせた。
「もしかして、ムギト君と一緒にいた赤い髪のお兄ちゃんのこと?」
「そう! それ! 知ってるのか?」
「うん。こっちの部屋にいるよ」
そう言ってリオンは俺の手を引き、俺を隣の部屋へと連れて行った。
部屋に入ると、アンジェがベッドの中で眠っていた。
慌てて彼の元に近づき、顔を覗き込んでみる。すると、アンジェは安らか表情で寝息をたてて眠っていた。森で倒れた時よりずっと血色もいいし、この分だとそのうち目を覚ましてくれそうだ。
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