87 / 242
第6章 森の奥の隠れ里
第87話 エルフというかウルフというか
しおりを挟む
「あ、そうだ。怪我……」
布団を捲ってみると彼も俺と同様身包みを剥がされていた。けれども、あれだけ血が出るほど死神に風穴を開けられた怪我は完全になくなっていた。この怪我だけではない。彼もまた腕や顔の切り傷も治っている。
「なあリオン……この傷、いったい誰が――」
そこまで言いかけたところで、リビングから扉が開くことが聞こえた。
「あ! 兄ちゃんだ!」
きょとんとしていたリオンの表情が一気に明るくなる。彼の兄も俺たちがこの部屋にいることを察したようで、足音が近づいてきた。
ドアノブが回り、ガチャリと扉が開かれる。
だが、現れたリオンの兄を見てギョッとした。
年齢は俺と同じくらいの二十代前半だろう。青い髪で、リオンと似た大きな目をした青年だった。ただし、煙草をふかしながらこちらを睨みつけてくる姿はとても柄が悪かった。弟はこんなに可愛らしいのに、この差はなんだ。
いや、リオンとのギャップはいい。驚いたのはそこではないのだ。
彼の短い髪から出ている両耳は俺たちより長く、先が尖っていた。これは知っている。俗に言う「エルフ耳」だ。
もしかして、彼がエルフか?
いきなり現れた目的の人種に、ごくりと唾を呑む。
一方、リオンの兄は怪訝そうな表情のまま、煙草を吸って白い煙を吐き出した。
「……起きたのか、汚物」
「ああ!?」
開口早々に侮辱され、俺も顔をしかめた。けれどもリオンの兄はかったるそうに舌打ちをして、再び煙草を咥える。
こんなにも不機嫌そうなのに、リオンは構わず笑顔で彼の元へ駆け寄っていく。
「兄ちゃんー。この人、ムギト君とアンジェ君って言うんだよー」
「そうかい……だが、これ以上関わるんじゃねえぞ。特にこのド変態野郎にはな」
「脱がしたのてめえじゃねえかよ!!」
聞き捨てならない発言に指を差してツッコミを入れる。しかし、リオンの兄は「ああ……?」とドスの効いた声で返してきた。
「気安く話しかけるんじゃねえよ、汚らわしい」
「んだと! 喧嘩売ってるのかてめえ!!」
「やんのかコラ。ぶちのめしてやるよ」
お互い睨み合いながら青筋を立てる。今にも取っ組み合いが始まりそうな空気感だ。
それなのに、リオンは兄を抱きしめたまま俺に話しかけてきた。
「ムギト君。この人がライザ兄ちゃんだよ」
呑気なリオンに思わずガクッと項垂れる。闘争心メラメラだったのに、このタイミングでそんな紹介をされてしまったら、奴に対する怒りも冷めてしまった。それはライザも同じようで、決まりの悪そうな顔をしながら、ガシガシとリオンの頭を強く撫でた。
「……あんたが俺たちのことを助けてくれたのか?」
尋ねてみるが、ライザは煙草をふかしただけ反応はない。だが、近くの灰皿に煙草を置くと、呆れたようにため息をついた。
「俺じゃねえよ。リオンがお前らを拾って、全部勝手にやったんだ。礼ならこいつに言え」
そう言ってライザは頭を掻き、リオンを置いて部屋を出て行った。
それにしても、リオンがやったってどういうことだ?
首を傾げてリオンを見ると、リオンも不思議そうに目をパチクリさせていた。
「なあ、本当にお前が俺たちをここまで運んでくれたのか?」
「うん」
「怪我の治療も?」
「うん」
あっけらかんとリオンに答えられたが、にわかに信じがたかった。なんせ、リオンはこんなに華奢で、なおかつ体の小さな子供だ。それを一人で成人男性二人を運んだなんて想像できん。
「いったい……どうやって……」
顎に手を添えて考えるが、リオンは「どうやって?」とぽかんとしていた。
そんなことを話しているうちに、奥のベッドでアンジェが「うっ……」と呻き声をあげた。
「アンジェ?」
名を呼ぶと、アンジェは目を開け、ゆっくりと起き上がった。
布団を捲ってみると彼も俺と同様身包みを剥がされていた。けれども、あれだけ血が出るほど死神に風穴を開けられた怪我は完全になくなっていた。この怪我だけではない。彼もまた腕や顔の切り傷も治っている。
「なあリオン……この傷、いったい誰が――」
そこまで言いかけたところで、リビングから扉が開くことが聞こえた。
「あ! 兄ちゃんだ!」
きょとんとしていたリオンの表情が一気に明るくなる。彼の兄も俺たちがこの部屋にいることを察したようで、足音が近づいてきた。
ドアノブが回り、ガチャリと扉が開かれる。
だが、現れたリオンの兄を見てギョッとした。
年齢は俺と同じくらいの二十代前半だろう。青い髪で、リオンと似た大きな目をした青年だった。ただし、煙草をふかしながらこちらを睨みつけてくる姿はとても柄が悪かった。弟はこんなに可愛らしいのに、この差はなんだ。
いや、リオンとのギャップはいい。驚いたのはそこではないのだ。
彼の短い髪から出ている両耳は俺たちより長く、先が尖っていた。これは知っている。俗に言う「エルフ耳」だ。
もしかして、彼がエルフか?
いきなり現れた目的の人種に、ごくりと唾を呑む。
一方、リオンの兄は怪訝そうな表情のまま、煙草を吸って白い煙を吐き出した。
「……起きたのか、汚物」
「ああ!?」
開口早々に侮辱され、俺も顔をしかめた。けれどもリオンの兄はかったるそうに舌打ちをして、再び煙草を咥える。
こんなにも不機嫌そうなのに、リオンは構わず笑顔で彼の元へ駆け寄っていく。
「兄ちゃんー。この人、ムギト君とアンジェ君って言うんだよー」
「そうかい……だが、これ以上関わるんじゃねえぞ。特にこのド変態野郎にはな」
「脱がしたのてめえじゃねえかよ!!」
聞き捨てならない発言に指を差してツッコミを入れる。しかし、リオンの兄は「ああ……?」とドスの効いた声で返してきた。
「気安く話しかけるんじゃねえよ、汚らわしい」
「んだと! 喧嘩売ってるのかてめえ!!」
「やんのかコラ。ぶちのめしてやるよ」
お互い睨み合いながら青筋を立てる。今にも取っ組み合いが始まりそうな空気感だ。
それなのに、リオンは兄を抱きしめたまま俺に話しかけてきた。
「ムギト君。この人がライザ兄ちゃんだよ」
呑気なリオンに思わずガクッと項垂れる。闘争心メラメラだったのに、このタイミングでそんな紹介をされてしまったら、奴に対する怒りも冷めてしまった。それはライザも同じようで、決まりの悪そうな顔をしながら、ガシガシとリオンの頭を強く撫でた。
「……あんたが俺たちのことを助けてくれたのか?」
尋ねてみるが、ライザは煙草をふかしただけ反応はない。だが、近くの灰皿に煙草を置くと、呆れたようにため息をついた。
「俺じゃねえよ。リオンがお前らを拾って、全部勝手にやったんだ。礼ならこいつに言え」
そう言ってライザは頭を掻き、リオンを置いて部屋を出て行った。
それにしても、リオンがやったってどういうことだ?
首を傾げてリオンを見ると、リオンも不思議そうに目をパチクリさせていた。
「なあ、本当にお前が俺たちをここまで運んでくれたのか?」
「うん」
「怪我の治療も?」
「うん」
あっけらかんとリオンに答えられたが、にわかに信じがたかった。なんせ、リオンはこんなに華奢で、なおかつ体の小さな子供だ。それを一人で成人男性二人を運んだなんて想像できん。
「いったい……どうやって……」
顎に手を添えて考えるが、リオンは「どうやって?」とぽかんとしていた。
そんなことを話しているうちに、奥のベッドでアンジェが「うっ……」と呻き声をあげた。
「アンジェ?」
名を呼ぶと、アンジェは目を開け、ゆっくりと起き上がった。
10
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる