転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第6章 森の奥の隠れ里

第92話 人間は嫌われ者

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 ◆ ◆ ◆


 それからしばらくしてアンジェの仕事も俺の準備も整ったので、俺たちはリオンと一緒に家を出た。

「いってきまーす」

「いってらっしゃーい」

 元気いっぱいに駆け出すリオンを二人で見送ると、アンジェが「さて」と息をつく。

「村っていうか……里よね」

 リオンたちの家から辺りを見回すと小屋のような三角形の家がポツポツと建っていた。その隣には畑もセットだ。どの家も自給自足で生活しているらしい。

 それにしてはエルフたちの姿が見当たらない。

 家の中にいるのかもしれないが、窓もないし、扉も締め切っているので中の様子がわからなかった。そもそも人が住んでいるかどうかも怪しい。リオンたちの家は立派な平屋なのに、こちらは木を束ねてテントの形にしただけだ。家にしては簡素すぎる。

「……あたしたちも少し探索してみましょうか」

 そう言ってアンジェは里の奥へと進んでいく。

 ここは、言うならばエルフの隠れ里。しかし、従来のエルフは大きな世界樹の麓や深い森の中に住んでいるイメージなのだが、ここはどちらかというと木に囲まれた平野だ。緑は多いとはいえ、イメージのエルフの里とは少し違っていた。

「エルフってもっと小さな土地で隠れて暮らしているイメージだったけど……意外と土地が広そうね」

「『ザラクの森』で隠してるつもりなのか?」

 あんな『陰の気』が溜まっているところなんて、普通の人は抜けられない。あの森を盾にしているならば、わざわざ隠れて住まなくても良さそうだ。

 と思っていたら、アンジェが意味深な言葉を呟いた。

「それか、まだこの里が発展途上なのか……」

 その真面目な表情に俺は思わず息を呑んだ。


 二人共警戒しながら里の奥へと歩みを進めると、また似たような三角形の小さな家が見えた。

 ここは里の中心区なのか、家も多く、エルフもいた。農作業している者、水を汲んでいる者、子供たちの世話をしている者……いろんなエルフが協力し合って暮らしているように見えた。ただ、みんな道具も魔法も使わず手作業で、『オルヴィルカ』で見た農地と比べると質素だった。

 黙々と作業をしていたエルフだったが、俺たちの姿を見た途端、彼らの形相が変わった。男も女も、子供までもが血眼になってこちらを睨んでくるのだ。この歓迎のされなさ具合は笑いしか出てこない。

「こりゃ話しかけるの無理そうだな……」

 こんなに警戒心と殺気を剥き出しにされると近づくのもためらってしまう。

 困ったように頭を掻くと、隣でアンジェが考え込んでいた。

「……どうして襲ってこないのかしら」

「え?」

 素っ頓狂な声をあげると、アンジェが説明するように言葉を紡ぐ。

「だってこんなにも恨まれているのなら、殺しにかかってしてもおかしくないでしょ? でも、そんな気配はないというか……ただ、避けられているようにしか見えないわ」

 アンジェの推測に思わず唸る。ライザもエルフは人間を憎んでいるようなニュアンスなことを言っていた。殺したいほど憎んでいるのなら、今ほど絶好なチャンスはないだろうに。

「となると、誰かがあたしたちに手を出さないように促したのか……といっても、一人しか当てはまらないけど」

 そんなことができるのは最初に家を出たライザくらいだ。だが、ライザは俺と同年代の若僧だ。彼がここまでする義理と、できる権力はあるのだろうか。

「これは……リオちゃんのお兄さんを探したほうが話が早そうね」

 そう言って腕を組んだアンジェはあごに手を添えて息をついた。

 鋭い視線を浴びながら住宅区間を抜ける。すると、奥で騒がしい声が聞こえてきた。

「何かしら」

 嫌な予感がしながら、声がするほうへと向かう。

 そこにいたのはエルフの子供たちだった。しかも、みんな怖い顔で何かに石を投げている。

「おい、何してるんだ?」

 声をかけると子供たちの肩がびくっと竦み上がった。そして、俺たちの顔を見た途端、悲鳴をあげて一目散に逃げていく。とんだ嫌われ者だ。

「……なんだ?」

 全速力で去っていく子供たちを見つめる。だが、ふと視線を前に向けてみると、目を疑いたくなるような光景が広がっていた。
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