転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第6章 森の奥の隠れ里

第95話 「人間なんか」

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「ところで……あの治癒魔法ってリオちゃん以外の人もできるの?」

 俺にボールを蹴り返しながら、リオンは「うーん」と考える。

「わかんない。僕、他の人とほとんど話したことないし」

「そうだったわね……ごめんね、変なこと訊いて」

「ううん。でも、お父さんはできたって兄ちゃんが前に言ってたよ」

 どうやらリオンの治癒魔法は父親の遺伝らしい。だが、その言い草だと逆にライザには扱えなさいようだ。この世界の遺伝の仕組みがよくわからない。

「やっぱり、ライザに訊かないと色々わかんねえか」

 頭を掻きながら、戻ってきたボールを再び蹴る。

 すると、強く蹴ってしまったせいかボールはポーンっとリオンの頭上を越え、彼の奥に飛んで行った。

「悪い!」

 すぐに謝るが、リオンは「だいじょーぶ!」とニコニコしながらボールを追いかける。

 アンジェは「あらあら」と笑っていたが、何かを察したのかその笑顔はすぐに消えた。

 途端に真面目な表情にになったアンジェは木から降り、顔を横に向ける。

「……お目当てのお方がお出ましだわ」

 その言葉に振り向くと、あいつが煙草をふかしながらゆっくりと近づいていた。

「お前ら……まだいたのか」

 現れたのは他でもない。ライザだ。

「ライザ……」

 噂をすれば影……とまとめたいところだが、そう上手く行かなさそうなことは彼の表情を見れば一目瞭然だった。

「お前ら、自分の立場をわかってるのか? さっさとここから出てけよ」

 抑揚のない低い声でライザは俺たちを威嚇する。しかし、ライザの鷹のような目つきでもアンジェは落ち着いていた。

「長居してごめんなさいね。でも……あたしたちもまだ帰れないの。あなただって、あたしたちがただの旅人じゃないってことは気づいてるんでしょ?」

 淡々としているアンジェにライザは小さく舌打ちをする。下手したてに出ているとは思えないほどのアンジェの落ち着きがライザにはやりにくそうだ。

「……何が目的だ?」

 煙草は吸っているが、ライザは強張った怖い顔をしていた。答えによっては、いつでもキレそうである。

 どんよりとした曇り空に比例するような重苦しい空気だった。しかし、ここで切り出さなければ埒が明かない。

「友達を……助けてほしいんだ」

 正直に言うと、ライザは眉間にしわを寄せながら「友達?」と訊き返した。

 彼に食らいつくように俺は話を続ける。

「友達が瘴気の毒にやられて死にそうなんだ……だから、お前らエルフの力を貸してほしい」

 真剣な表情で彼に請うたが、ライザはいい顔をしなかった。

「俺たちが人間なんかを助けるとでも?」

「そうね……あなたたちが快く受けてくれるとはこっちも思ってないわ」

 腰に手を当てながら、アンジェは深く息をつく。

 そうこうしているうちにリオンがボールを持ってやってきた。だが、緊迫しているこの雰囲気に気圧けおされ、ボールを抱きしめたまま黙りこくった。

 お互い睨み合ったまま沈黙が流れる。そんな中、アンジェが先手を打ってライザに切り込んだ。

「……交渉をしたいの。この里のおさのところまで案内してくれる?」

「交渉だって?」

「ええ……『いったい何をしたらあたしたちに手を貸してくれるか』ってね」

「諦めるという選択肢はなさそうだな」

「あるとお思いで?」

 口角を上げながらアンジェは切れ長の目を微かに細める。彼の言う通りだ。なんのために命をかけて『ザラクの森』を抜けてきたのだ。それは、言葉を紡ぐまでもなくライザもわかっているはずだ。

「……厄介なカマ野郎だぜ」

「あら、えらく嫌われたものね。それとも、褒めてくれているのかしら」

「ちっ……本当にやりづれえな」

 禁句のはずの「カマ野郎」と呼ばれても、アンジェは顔色一つ変えなかった。冷静で隙を見せないアンジェにライザはガシガシと頭を掻く。しかし、面倒臭くなったのか「ふー……」と疲れを吐息に変えて吐き出した。

「……おさは案内するまでもねえよ。この俺が、里のおさだ」

「はっ!?」
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