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第6章 森の奥の隠れ里
第94話 一緒に遊ぼう
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「大丈夫。大丈夫」
ポン、ポンとアンジェは泣きじゃくるリオンの背中を軽く叩く。
なだめる彼の姿はまるで赤子をあやす母親のようで、慈しみに溢れていた。こんなこと、俺には真似できない。多分、兄であるライザにも。
「……あーあ」
この陰気臭さから逃げるように、俺は曇り空を仰いだ。
こんな空気はどうも苦手だ。どんな顔をすればいいのかわからないし、リオンをどう慰めていいのかもわからない。こういうのは、アンジェのほうがずっと向いている。
リオンの嗚咽を聞きながら彼らから視線を外すと、倒れた木の隣でボールが転がっているのを見つけた。『オルヴィルカ』で爆破クソ野郎に蹴ったボールと同じく、革でできている。
つま先でちょんっと触れ、ボールの感触を確かめる。素材も重みもサッカーボールとは違うが多少真似事くらいはできそうだ。
「よっ、と」
転がったボールにスピンをかけ、軸足に当てる。そこから軽くつま先で蹴るとボールが宙に浮いたので、そこからポン、ポンと足でボールを蹴った。
「……あら?」
ボールを操る俺を見て、アンジェはリオンを抱いていた腕をほどく。
周りの異変に気づいたのか、リオンもアンジェの胸でうずくまっていた顔を上げた。
交互にボールを蹴って軽くリフティングする俺をリオンが不思議そうな顔で見てくる。目は涙で濡れているが、泣いている様子はない。
「ほらよっと」
リオンに見せつけるように高めにボールを上げ、それを避けるように足を回してまたぐ。アラウンド・ザ・ワールド。久しぶりにやったが、意外とできるものだ。
「まあ……お見事」
綺麗に決まった回し技に、見ていたアンジェが感嘆の声をあげる。といっても、俺自身も成功したことにびっくりしている。
「凄いわムギちゃん。ピエロみたい」
「大袈裟だよ。昔、ちょっとサッカーやってただけで」
軽く笑いながら浮いたボールを膝で蹴る。こんな程度のリフティングなんて、サッカーでは基本中の基本だ。
だが、アンジェにリオンにも伝わっておらず、二人して「さっかー?」と首を傾げていた。それはそうだ。この世界にサッカーがない。すっかり忘れていた。
「えっと……まあ、ボールを蹴って遊ぶゲームだ」
そう言って、浮いたボールを地面に落とし、弾まないように足で押さえる。
「お前もやるか?」
リオンに言うと、彼は目をパチクリさせた。ここまで来ると、彼の涙をすっかり引っ込んでいた。
「……遊んでいいの?」
恐る恐る訊いてくるリオンに、俺はニッと口角を上げる。
「当たり前だろ。俺と遊ぼうぜ」
すると、リオンの表情はパァァと明るくなり、屈託のない笑顔で力強く頷いた。そんな彼の嬉しそうな表情を見たアンジェは、安心したように「ふぅ」と息をついた。
「ほら、行くぞ」
ボールを足の内側で蹴ってリオンにパスする。
ボールを追いかけるリオンは器用に足で押さえ、「えいっ!」と俺に向かってボールを蹴った。
コロコロと転がったボールはゆっくりと俺のところにやってくる。パワーはないが、運動音痴ではなさそうだ。
「ほれ、もう一回」
今度はさっきより強めに蹴ってみる。楽しそうにボールを追いかけるリオンの姿はまるで子犬のようだ。それもまた、あどけなくて可愛らしい。
「フフッ。すっかり機嫌治ったわね」
そう言ってアンジェは横たわっている木に座って俺たちを見守る。
彼の言う通り、これでリオンの気晴らしができたみたいだ。俺ができることと言ったら、こうして遊んでやるくらいだろう。上手くいってちょっとホッとした。
「やるわねムギちゃん。惚れ直したわ」
「いや、それほどでも……あと、頼むから惚れないで」
お褒めの言葉に照れそうになったが、聞き逃せない発言にすぐ現実引き戻される。けれども、当のアンジェは「ウフッ」と悪戯っぽく笑うだけだ。それが一番怖いというのに。
そんな他愛のないやり取りの後、ボールで遊んでいるリオンに向け、アンジェが不意に問いかけた。
ポン、ポンとアンジェは泣きじゃくるリオンの背中を軽く叩く。
なだめる彼の姿はまるで赤子をあやす母親のようで、慈しみに溢れていた。こんなこと、俺には真似できない。多分、兄であるライザにも。
「……あーあ」
この陰気臭さから逃げるように、俺は曇り空を仰いだ。
こんな空気はどうも苦手だ。どんな顔をすればいいのかわからないし、リオンをどう慰めていいのかもわからない。こういうのは、アンジェのほうがずっと向いている。
リオンの嗚咽を聞きながら彼らから視線を外すと、倒れた木の隣でボールが転がっているのを見つけた。『オルヴィルカ』で爆破クソ野郎に蹴ったボールと同じく、革でできている。
つま先でちょんっと触れ、ボールの感触を確かめる。素材も重みもサッカーボールとは違うが多少真似事くらいはできそうだ。
「よっ、と」
転がったボールにスピンをかけ、軸足に当てる。そこから軽くつま先で蹴るとボールが宙に浮いたので、そこからポン、ポンと足でボールを蹴った。
「……あら?」
ボールを操る俺を見て、アンジェはリオンを抱いていた腕をほどく。
周りの異変に気づいたのか、リオンもアンジェの胸でうずくまっていた顔を上げた。
交互にボールを蹴って軽くリフティングする俺をリオンが不思議そうな顔で見てくる。目は涙で濡れているが、泣いている様子はない。
「ほらよっと」
リオンに見せつけるように高めにボールを上げ、それを避けるように足を回してまたぐ。アラウンド・ザ・ワールド。久しぶりにやったが、意外とできるものだ。
「まあ……お見事」
綺麗に決まった回し技に、見ていたアンジェが感嘆の声をあげる。といっても、俺自身も成功したことにびっくりしている。
「凄いわムギちゃん。ピエロみたい」
「大袈裟だよ。昔、ちょっとサッカーやってただけで」
軽く笑いながら浮いたボールを膝で蹴る。こんな程度のリフティングなんて、サッカーでは基本中の基本だ。
だが、アンジェにリオンにも伝わっておらず、二人して「さっかー?」と首を傾げていた。それはそうだ。この世界にサッカーがない。すっかり忘れていた。
「えっと……まあ、ボールを蹴って遊ぶゲームだ」
そう言って、浮いたボールを地面に落とし、弾まないように足で押さえる。
「お前もやるか?」
リオンに言うと、彼は目をパチクリさせた。ここまで来ると、彼の涙をすっかり引っ込んでいた。
「……遊んでいいの?」
恐る恐る訊いてくるリオンに、俺はニッと口角を上げる。
「当たり前だろ。俺と遊ぼうぜ」
すると、リオンの表情はパァァと明るくなり、屈託のない笑顔で力強く頷いた。そんな彼の嬉しそうな表情を見たアンジェは、安心したように「ふぅ」と息をついた。
「ほら、行くぞ」
ボールを足の内側で蹴ってリオンにパスする。
ボールを追いかけるリオンは器用に足で押さえ、「えいっ!」と俺に向かってボールを蹴った。
コロコロと転がったボールはゆっくりと俺のところにやってくる。パワーはないが、運動音痴ではなさそうだ。
「ほれ、もう一回」
今度はさっきより強めに蹴ってみる。楽しそうにボールを追いかけるリオンの姿はまるで子犬のようだ。それもまた、あどけなくて可愛らしい。
「フフッ。すっかり機嫌治ったわね」
そう言ってアンジェは横たわっている木に座って俺たちを見守る。
彼の言う通り、これでリオンの気晴らしができたみたいだ。俺ができることと言ったら、こうして遊んでやるくらいだろう。上手くいってちょっとホッとした。
「やるわねムギちゃん。惚れ直したわ」
「いや、それほどでも……あと、頼むから惚れないで」
お褒めの言葉に照れそうになったが、聞き逃せない発言にすぐ現実引き戻される。けれども、当のアンジェは「ウフッ」と悪戯っぽく笑うだけだ。それが一番怖いというのに。
そんな他愛のないやり取りの後、ボールで遊んでいるリオンに向け、アンジェが不意に問いかけた。
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