転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第6章 森の奥の隠れ里

第101話 魔物使い《テイマー》、アルジャー

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「ほら、リッチーヌ。挨拶しなよ」

 青年はポンポンと獣、及び、リッチーヌの頭をポンポンと叩く。

 リッチーヌという可愛い名前の割には顔面が全然可愛くなかった。

 飼い主と似て口元からは八重歯が生えているが、奴の場合は長くて鋭利で愛想の欠片もない。それに、「挨拶しなよ」と言われているのに、俺たちを見て「グルルルル……」と威嚇している。奴にとってこれが挨拶なのだろうか。そんな殺意まで剥き出しにしなくてもいいではないか。

 半笑いしていると、青年はトンッとリッチーヌから飛び降り、腰元に差していた鉄の爪を装備した。

「どもども。俺はアルジャー。ご覧の通り【魔物使いテイマー】っす。以後よろしく」

 シャキッと爪のついた手でアルジャーと名乗る青年は敬礼する。

 それにしてもなんだこいつの軽いノリは。これから命の取り合いをしようとしているのに、緊張感がまるでない。これだけ見てばただのチャラついた青年だ。しかし、この惨状を巻き起こしたのは他でもなくこいつら。俺たちを油断させる気なのだろうか。

 ちらりとアンジェを見ると、すでに彼は剣を抜いていた。その隣でライザはポケットから煙草を出し、咥えた煙草に火を点ける。戦闘前の一服といったところか、この状況下でもライザは至って冷静だった。

「カマ野郎……お前、あのデカブツのほう行けるか?」

 横目で視線を送られると、アンジェは「あら」と上品に口に手を当てる。

「奇遇ね。あたしも同じこと考えてたの」

「ウフッ」と嬉しそうに言うアンジェだが、ライザはちっとも嬉しくなさそうだ。

 けれども、アンジェがリッチーヌの相手をするとしたら、俺の相手もリッチーヌか。

 表情を強張らせながら、視線とフォークの先をリッチーヌに向ける。

 それを見たライザが呆れたように深いため息をついた。

「何してるんだよ汚物……てめえは俺とこのクソガキの相手だ」

「あぁ!?」

 聞き捨てならない呼び名に思わず不機嫌な声をあげる。その呼び方も気に喰わないが、何よりその組み合わせもどうかしている。

「なんで俺がお前と組まないといけないんだよ。普通、仲間同士組むだろ」

 そう反論してみるが、ライザは不快そうに眉を寄せ、再び息をついた。

「馬鹿かてめえは。相性を考えろ」

 完全に蔑んでくるライザだったが、彼の言い分はこうだった。

 まず、属性魔法から見ると、「火」であるアンジェは「水」であるライザが弱点なのでこの二人は自然と分かれる。幸い、アルジャーの属性も「火」だ。となると、ライザの相手はアルジャー一択となる。

「火属性の近距離攻撃なら、リオンがついたほうが動きやすいんだよ。だったら、消去法でお前は俺とつくしかないだろ」

 ここまで見事なまでの正論を並べられると、ぐうの音も出ない。しかし、その言いようだとつまるところ俺は「余りもの」だということか。

「ぐぬぬ……」とライザを見ていると、冷ややかな目でライザは「なんだよ……」と言う。

「拾ってやってるんだから感謝しろよ。というか、お前の属性魔法なんだよ」

「氷」

「余計カマ野郎と組めねえじゃねえか、ド阿呆。というか、今までどうやって闘ってきたんだよ」

「うるせえ! 気合いだ!」

 語気を強めてそう返すと、ライザはいかにも忌まわしそうな顔で俺に聞こえるように舌打ちしてきた。

 そんなやり取りをリオンはきょとんとした様子で眺めている。

「兄ちゃん。僕、アンジェ君とあの魔物さんと戦えばいいの?」

「ああ。行けるだろ?」

「うーん……凄く頑張る」

 一瞬難しそうにしたリオンだが、ライザにポンッと軽く頭を撫でられると途端に澄ました顔になった。彼も戦う覚悟ができたようだった。

「というかお前、リオンにも戦わせる気かよ」

 確かにリオンはとんでもない【治療師ヒーラー】だし、ここに来たのは彼の意志だ。そうではあるのだが、アンジェと組むとはいえこんな子供にあのどでかい魔物の相手をさせるなんて、ライザの奴は何を企んでいるのだ。

 そんな俺の心配をよそに、ライザはリオンのことを信頼しきっていた。

「安心しろ。こいつはお前よりも強えよ」

 そうやって不敵な笑みを浮かべるライザだが、俺もおそらくアンジェも懸念していた。

「サポート頼むわね。リオちゃん」

 そう言いつつもアンジェの表情が緊張で強張っている。リオンをかばいながら戦おうとしているのだろう。だが、そんな攻防同時に行って戦えるような相手ではないこともわかっているはずだ。飄々としているのは、このエルフ兄弟だけだ。
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