転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第7章 流浪人とエルフの子

第111話 俺の正体

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「何者かって聞かれても……俺は俺だろ」

 そう答えると、ライザは呆れたように嘆息を吐く。「言わなきゃわかんねぇのか」口には出していないが、そう言っているように見えた。

「お前ら……『ザラクの森』を越えて来たんだろ?」

「そうだけど……それがどうかしたのかよ」

「それが答えだよ。あんな瘴気に近い毒霧が充満しているところは普通ならば人間は越えられない。それなのに、お
 前は越えられた。一般よりも魔力がお前が、だ」

 淡々と告げるライザの推測に俺は何も言えなかった。ただ、緊張で体が震え、彼の迷いない眼差しに恐れ慄いた。

「リオンがお前らをうちに来た時、カマ野郎のほうは症状で毒霧にやられているのはすぐわかった。だが、お前のほうは魔力が枯渇して気絶していただけ。かと言ってお前には毒霧を吸わないようにする魔法も道具もなさそうだ。生身で森を抜けたとしか考えられない」

 森を抜けたことがあるライザからしてみればあの毒霧が効かない俺は異端なのだろう。思い返せば、彼はリオンに「関わるな」と言うほど初めから俺を警戒していた。それは何も俺が人間だからというだけではなかったのだ。

「だが、お前以外にも生身で森を抜けてきた奴がいた――あのアルジャーという奴だ。しかし、あいつは魔王の配下。魔界から来たとするなら、瘴気と近い毒霧が効かないのは頷ける」

 ――と、するのなら魔物、もしくは魔王の配下ならば、『ザラクの森』の毒霧は効かないということになる。すなわち、あの毒霧が効かない俺もこの例外に属する可能性がある。ライザはそう睨んでいた。

「もう一度問う。お前、何者なんだ?」

 トリガーに触れる指にグッと力が篭る。こいつのことだから、敵と見做みなしたらなんのためらいもなく俺を撃つことだろう。

「でも、俺は魔王の配下じゃねえよ……」

 そう言ったところで、ライザの疑念は晴れるのだろうか。なんせ、俺に瘴気が効かないことは揺るがない事実だ。

 魔力はない。だが、魔王の配下ではない。ならば、どうして俺には瘴気が効かないのだ。俺自身その理由がわかっていないから彼に弁明ができない。けれども、弁明できなければこの状況を打破するのは難しい。

 俺と魔王の配下との共通点なんて、何一つ……。

「……悪魔サタン?」

 ふと、心当たりが頭によぎる。その単語に反応してライザの眉が微かに動いた。

悪魔サタンって、どういうことだ?」

 確認するようにライザが尋ねる。しかし、俺が悪魔サタンだということはアンジェにだって言っていない。けれども、これしか考えられなかった。俺のクラスの能力が瘴気を無効にすることだとしたら、瘴気が効かないことに繋がるのだ。

 いったい、どうすればいい。この状況で誤魔化したらライザに脳天を打ち抜かれそうだ。ノアはクラスがバレた時のデメリットは触れていなかったが、どう転んでも地獄なような気がしてならない。くそ、どうしてこういう時にかぎってノアがいないのだ。

「……どうした。何か言えよ」

 ライザの眉間にしわが寄る。マジで発砲する五秒前といったところか。この無言に憤りを感じているのが目に見えてわかる。

 背に腹はかえられぬ。もう、言うしかない。

「……誰にも言わないでくれるか?」

 意を決した言葉は、情けないくらい震えていた。

 張り詰めた緊張にライザの顔も真剣になる。銃口は未だにぶれない。彼もまた、迷いがないのだ。

 この選択が吉と出るか凶と出るか、恐る恐る俺は彼に告げた。

「俺のクラス――【赤子の悪魔ベビー・サタン】なんだ」

「【赤子の悪魔ベビー・サタン】だって?」

 素っ頓狂な声をあげたライザがキョトン顔になる。だが、その表情もすぐに崩れ、彼は真顔の俺を馬鹿にしたように腹を抱えて笑い出した。

「なんだよそれ……それで魔王をぶっ倒すとかほざいていたのかお前は」

「うるせえなあ。てか、笑いすぎなんだよ」

 ケラケラと声を出してまで爆笑するライザにムッとする。万年仏頂面がここまで笑うとは、なんなんだ俺のクラス。さっきまでの緊張感を返してほしい。というか、ここまで笑うかよ普通。

 イライラしながらライザの笑いが治るのを待つ。そして、ようやく落ち着いたライザはひと息つくと同時に構えていた銃を降ろした。
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