転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第7章 流浪人とエルフの子

第112話 シロにするのは難しい

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「――やめた。アホくさくなった」

「あ、アホくさいだと?」

 今の今まで本気で命を取られると思っていたのに、この落差はなんだというのだ。
 けれども、ここまで呆気ないのもライザなりに根拠があるからだった。

「お前らが魔王の配下じゃねえことは最初からわかっていたよ。体に紋章がなかったし」

「まあ、そうだよな……ん? 体?」

 咄嗟にサッと自分の体に触れる。「紋章がなかった」だなんて、まるで俺の体を見たような言い草だ。けれど、ここに来てから風呂にすら入っていないし、いったいいつ俺の体なんか――……。

 あ、そういえば俺、脱がされてたわ。

 思い出した。この家で目を覚ました時、パンイチにされていた。「ベッドが汚れないため」とか言っていたが、あれは俺が敵である可能性を一つ潰すためでもあったのだ。リオンに気にかけさせないように探りをかけるとはなかなかの策士だ。気持ち悪いけど。

 怪訝な顔で半目になると、察したライザが不機嫌そうにギロリとした眼差しで睨んできた。

「俺だっててめえの汚え体なんか見たくなかったわ。でも仕方ねえだろうが」

 ライザは相当頭を悩ませたはずだ。俺たちを拾ってきたリオンには悪気はない。かといって俺たちの素性はわからないし、俺は異端。だが、俺の告白により、ライザの表情もだいぶ和らいでいた。

 だからだろうか、徐に彼は俺に問うた。

「ところで、クラスってなんだ?」

「知らねえで聞いていたのかよ! 職能だよ職能! お前だって神官に神の声を聞いて銃を使ってるんじゃねえのかよ!」

「神官? 神の声?」

 必死に伝えてもライザはなんのことかわかっていないようで顔をしかめる。どうして転生してきた俺より現地人のライザのほうがわかっていないのだろうか。

 だが、やがて思い出したようにライザは「ああ……」と呟いた。

「そういえば、人間にはそんな名前がつけられるんだっけな」

 思えば、アンジェが【銃士ガンナー】と聞いた時だってライザはわかっていなかった。きっと神官に神の声を聞く前にエルフはここまで逃げてきたのだろう。そもそもエルフに神官がいるかどうかも謎だ。

「もしかして、エルフってみんな魔法能力しかわからないのか?」

「残念ながらそれすら知らない奴のほうが多い。属性魔法としてなんとなく使っている奴もいるが、どいつもこいつもちゃんとした扱い方はわかっていない」

「わかっていないって……元々魔力が高いのにか?」

「そうだな。皮肉なものだよ。魔力があっても、使い方も戦い方もわからないんだ。だからみんな、力のあるおさたかるんだよ。自分の力がわかっているのは、ずっと一人で自分のことを見てきた奴だけだ。俺や、リオンのようにな」

 そう言って、ライザは自分の銃をじっと見つめる。きっとこいつはひたすらこの銃の練習してきたのだろう。自分の才能なんて教えてくれない。それどころか、誰も知ろうとしない。そんな中、リオンのことだけでも護れるように、ずっと一人で。

 ライザの人知れぬ苦労に胸を痛めながら彼の銃を見つめていると、ライザは小さくため息をついた。

「……にしても、【赤子の悪魔ベビー・サタン】ねえ……」

「んだよ……まだ疑ってるのか」

 苦い顔をしている俺をよそに、ライザは無言で煙草に火を点ける。

 そして空を仰ぎながら煙草の煙を吐いたライザは、ぼんやりとしながら独り言のように呟いた。

「赤子は赤子でも……悪魔の赤子なんだろうな」

「――え?」

 意味ありげな発言に俺は思わず目を瞠った。けれども、ライザは何事もなかったかのように「まあ、いい」と再び煙草をふかした。

「人間なんてよくわからないもんだろ。どこかの誰かさんだってそうだった」

 そう言ってライザは徐に振り向き、右端にある墓を見つめた。

「あの墓って……リオンの親の?」

 尋ねるとライザは無言で頷く。

「……オリビア。あの『ザラクの森』を抜けた、例外の人間だ」

 名を呟いたライザの表情が愁いを帯びている。この物寂しげな瞳は、亡き彼女を想起しているのだろうか。父親がもう一人愛した、女性のことを。

「聞かせてくれないか? お前と……リオンのことを知るためにも」

 真面目な声でライザに請うと、彼は諦めたように長いため息をついた。

「……長話になっても知らねえぞ」

 暗い夜空を見上げながら、ライザは小さく笑う。

 遠くを見つめるその眼は、儚げで、それでいてどこか懐かしむような哀愁が入り混じったものだった。

 そして深く煙草の煙を吸って吐き出したライザは、ゆっくりとオリビアという女性のことを語り出した。

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