転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

文字の大きさ
114 / 242
第7章 流浪人とエルフの子

第114話 オリビアという女

しおりを挟む
「……あ、魚」

 ハッと我に返り、打ち上げられた魚の元に駆け寄る。こんなに魚が取れるのは初めてなものだから、正直戸惑っていた。

 活きがいい魚にうろたえながらも、ひとまず持ってきたボロボロな麻の袋に入れていく。生で掴む魚はぬめぬめして気持ち悪いし、袋に放り投げても、その中でまだ暴れている。それが何匹もいるものだから、嬉しいとはいえちょっと困惑した。

 そんなことをしている間も、オリビアはやたらと大人しかった。その抱いた違和感から振り向くと、彼女はその場でしゃがんでガサゴソと自分の鞄を漁っていた。

「何してるんだよ」

「んー? ちょっと改良してあげようかなって思って」

 そう言って彼女が取り出したのは魔物のコアだった。それを彼女はポンッと投げ、即座に自分の手をかざす。

「『創造魔法クリエイディット』」

 彼女が魔法を演唱すると、コアは緑色の光に包まれ途端に姿形を変えた。そしてそれが地面に着地した時には、長方形の木箱になっていた。

「は!?」

 いきなり現れた木箱にギョッとする。コアが木箱になるなんて、誰が思うか。しかもあんな一瞬で、物質すら変わっている。

 そんな唖然としている俺をよそに、オリビアは木箱を開け、俺に手渡した。

「ほら、これに魚を入れなよ。ちょうど入りそうでしょ?」

 ニコニコ笑いながらオリビアは言ってくるが、俺は彼女の異様な魔法が怖くて思わずたじろいだ。

「な、なんなんだよあんたは……」

 けれども、彼女は相変わらず飄々としている。
「言ったでしょ、私【創造者クリエイター】なの。材料とそれを補える魔力があればたとえ家でも作れちゃ――」

 しかし、オリビアが得意気な顔になる前、彼女の腹の音が鳴いた。その恰好のつかなさに眉をひそめていると彼女は「あはは……」と頬を引き攣らせて自分の腹部を撫でた。

「ごめんねー。昨日から何も食べてなくて」

「魚は捕れるのに?」

「捕れても火がないから調理できないもん」

「なんでも作れるのに?」

「今、ちょうどファイアー・コア切らしてて、作れるものも作れないのよ」

 半笑いになるオリビアに構わず彼女の腹の音は鳴り続ける。なんて情けないのだ。呆れてため息が出る。

「……この魚、一緒に食べる?」

「え!? いいの!?」

「いいのっていうか……これ捕ったのあんただし」

 ばつが悪そうにぽりぽりと頬を掻くが、彼女の表情はパァと明るくなり、嬉しそうに俺の手を取った。

「ありがとう! 恩に着るよライザ君!」

 俺の手を握ったままオリビアはぶんぶんと振る。その力に圧倒されながらも、俺は「お、おう」と頷いた。

 なんというか、彼女から凄くパワーを感じる。生命力というか、活気というか、とにかく俺が持っていない者を彼女は持っていた。その一方で、ちょっとした懸念もあった。あの人が、彼女を見た時にどんなリアクションをするか、ということだ。

 ――まあ、なんとかなるか。

 そう楽観的に思いながら、俺はひとまず彼女を家に連れて行くことにした。

「連れて行く」と言っても鉄仮面をかぶった全身鎧姿の人物を連れ込むのは流石に怪しまれるのでなるべく誰にも会わないように遠回りをしながら家に向かった。幸い、みんな狩りや畑を耕しに行っていたので人には会うことなく、なんとか家に着くことができた。

 木造のボロい三角小屋を見てもオリビアは何も言わなかった。ただ、何か考えているのか、俺の家を見上げたまま動かないでいた。

「おい、人に見つかるから入るぞ」

 俺の一声で我に返ったオリビアは「うん」と返事をし、静かに扉を開けた俺の後に続いた。

「……ただいま」

 よそよそしい声で家に入ると、奥から「おかえりー」と親父の声が聞こえた。なんとなく想像はできていたが、案の定家には親父がいた。どうせ今日も狩りに行けなかったのだろう。

 奥の部屋のドアノブが回る。親父のお出ましに、オリビアの背筋が伸びる。

 こんなことにもなっているとは知らず、親父は悠々と扉を開けた。

「どうしたんだい? 随分と早かった――」

 そこまで言って親父の動きが止まった。そして丸眼鏡の奥にある目を大きく見開いた彼はその場で転げ落ちるように尻もちをついた。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...