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第7章 流浪人とエルフの子
第114話 オリビアという女
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「……あ、魚」
ハッと我に返り、打ち上げられた魚の元に駆け寄る。こんなに魚が取れるのは初めてなものだから、正直戸惑っていた。
活きがいい魚にうろたえながらも、ひとまず持ってきたボロボロな麻の袋に入れていく。生で掴む魚はぬめぬめして気持ち悪いし、袋に放り投げても、その中でまだ暴れている。それが何匹もいるものだから、嬉しいとはいえちょっと困惑した。
そんなことをしている間も、オリビアはやたらと大人しかった。その抱いた違和感から振り向くと、彼女はその場でしゃがんでガサゴソと自分の鞄を漁っていた。
「何してるんだよ」
「んー? ちょっと改良してあげようかなって思って」
そう言って彼女が取り出したのは魔物のコアだった。それを彼女はポンッと投げ、即座に自分の手をかざす。
「『創造魔法』」
彼女が魔法を演唱すると、コアは緑色の光に包まれ途端に姿形を変えた。そしてそれが地面に着地した時には、長方形の木箱になっていた。
「は!?」
いきなり現れた木箱にギョッとする。コアが木箱になるなんて、誰が思うか。しかもあんな一瞬で、物質すら変わっている。
そんな唖然としている俺をよそに、オリビアは木箱を開け、俺に手渡した。
「ほら、これに魚を入れなよ。ちょうど入りそうでしょ?」
ニコニコ笑いながらオリビアは言ってくるが、俺は彼女の異様な魔法が怖くて思わずたじろいだ。
「な、なんなんだよあんたは……」
けれども、彼女は相変わらず飄々としている。
「言ったでしょ、私【創造者】なの。材料とそれを補える魔力があればたとえ家でも作れちゃ――」
しかし、オリビアが得意気な顔になる前、彼女の腹の音が鳴いた。その恰好のつかなさに眉をひそめていると彼女は「あはは……」と頬を引き攣らせて自分の腹部を撫でた。
「ごめんねー。昨日から何も食べてなくて」
「魚は捕れるのに?」
「捕れても火がないから調理できないもん」
「なんでも作れるのに?」
「今、ちょうどファイアー・コア切らしてて、作れるものも作れないのよ」
半笑いになるオリビアに構わず彼女の腹の音は鳴り続ける。なんて情けないのだ。呆れてため息が出る。
「……この魚、一緒に食べる?」
「え!? いいの!?」
「いいのっていうか……これ捕ったのあんただし」
ばつが悪そうにぽりぽりと頬を掻くが、彼女の表情はパァと明るくなり、嬉しそうに俺の手を取った。
「ありがとう! 恩に着るよライザ君!」
俺の手を握ったままオリビアはぶんぶんと振る。その力に圧倒されながらも、俺は「お、おう」と頷いた。
なんというか、彼女から凄くパワーを感じる。生命力というか、活気というか、とにかく俺が持っていない者を彼女は持っていた。その一方で、ちょっとした懸念もあった。あの人が、彼女を見た時にどんなリアクションをするか、ということだ。
――まあ、なんとかなるか。
そう楽観的に思いながら、俺はひとまず彼女を家に連れて行くことにした。
「連れて行く」と言っても鉄仮面をかぶった全身鎧姿の人物を連れ込むのは流石に怪しまれるのでなるべく誰にも会わないように遠回りをしながら家に向かった。幸い、みんな狩りや畑を耕しに行っていたので人には会うことなく、なんとか家に着くことができた。
木造のボロい三角小屋を見てもオリビアは何も言わなかった。ただ、何か考えているのか、俺の家を見上げたまま動かないでいた。
「おい、人に見つかるから入るぞ」
俺の一声で我に返ったオリビアは「うん」と返事をし、静かに扉を開けた俺の後に続いた。
「……ただいま」
よそよそしい声で家に入ると、奥から「おかえりー」と親父の声が聞こえた。なんとなく想像はできていたが、案の定家には親父がいた。どうせ今日も狩りに行けなかったのだろう。
奥の部屋のドアノブが回る。親父のお出ましに、オリビアの背筋が伸びる。
こんなことにもなっているとは知らず、親父は悠々と扉を開けた。
「どうしたんだい? 随分と早かった――」
そこまで言って親父の動きが止まった。そして丸眼鏡の奥にある目を大きく見開いた彼はその場で転げ落ちるように尻もちをついた。
ハッと我に返り、打ち上げられた魚の元に駆け寄る。こんなに魚が取れるのは初めてなものだから、正直戸惑っていた。
活きがいい魚にうろたえながらも、ひとまず持ってきたボロボロな麻の袋に入れていく。生で掴む魚はぬめぬめして気持ち悪いし、袋に放り投げても、その中でまだ暴れている。それが何匹もいるものだから、嬉しいとはいえちょっと困惑した。
そんなことをしている間も、オリビアはやたらと大人しかった。その抱いた違和感から振り向くと、彼女はその場でしゃがんでガサゴソと自分の鞄を漁っていた。
「何してるんだよ」
「んー? ちょっと改良してあげようかなって思って」
そう言って彼女が取り出したのは魔物のコアだった。それを彼女はポンッと投げ、即座に自分の手をかざす。
「『創造魔法』」
彼女が魔法を演唱すると、コアは緑色の光に包まれ途端に姿形を変えた。そしてそれが地面に着地した時には、長方形の木箱になっていた。
「は!?」
いきなり現れた木箱にギョッとする。コアが木箱になるなんて、誰が思うか。しかもあんな一瞬で、物質すら変わっている。
そんな唖然としている俺をよそに、オリビアは木箱を開け、俺に手渡した。
「ほら、これに魚を入れなよ。ちょうど入りそうでしょ?」
ニコニコ笑いながらオリビアは言ってくるが、俺は彼女の異様な魔法が怖くて思わずたじろいだ。
「な、なんなんだよあんたは……」
けれども、彼女は相変わらず飄々としている。
「言ったでしょ、私【創造者】なの。材料とそれを補える魔力があればたとえ家でも作れちゃ――」
しかし、オリビアが得意気な顔になる前、彼女の腹の音が鳴いた。その恰好のつかなさに眉をひそめていると彼女は「あはは……」と頬を引き攣らせて自分の腹部を撫でた。
「ごめんねー。昨日から何も食べてなくて」
「魚は捕れるのに?」
「捕れても火がないから調理できないもん」
「なんでも作れるのに?」
「今、ちょうどファイアー・コア切らしてて、作れるものも作れないのよ」
半笑いになるオリビアに構わず彼女の腹の音は鳴り続ける。なんて情けないのだ。呆れてため息が出る。
「……この魚、一緒に食べる?」
「え!? いいの!?」
「いいのっていうか……これ捕ったのあんただし」
ばつが悪そうにぽりぽりと頬を掻くが、彼女の表情はパァと明るくなり、嬉しそうに俺の手を取った。
「ありがとう! 恩に着るよライザ君!」
俺の手を握ったままオリビアはぶんぶんと振る。その力に圧倒されながらも、俺は「お、おう」と頷いた。
なんというか、彼女から凄くパワーを感じる。生命力というか、活気というか、とにかく俺が持っていない者を彼女は持っていた。その一方で、ちょっとした懸念もあった。あの人が、彼女を見た時にどんなリアクションをするか、ということだ。
――まあ、なんとかなるか。
そう楽観的に思いながら、俺はひとまず彼女を家に連れて行くことにした。
「連れて行く」と言っても鉄仮面をかぶった全身鎧姿の人物を連れ込むのは流石に怪しまれるのでなるべく誰にも会わないように遠回りをしながら家に向かった。幸い、みんな狩りや畑を耕しに行っていたので人には会うことなく、なんとか家に着くことができた。
木造のボロい三角小屋を見てもオリビアは何も言わなかった。ただ、何か考えているのか、俺の家を見上げたまま動かないでいた。
「おい、人に見つかるから入るぞ」
俺の一声で我に返ったオリビアは「うん」と返事をし、静かに扉を開けた俺の後に続いた。
「……ただいま」
よそよそしい声で家に入ると、奥から「おかえりー」と親父の声が聞こえた。なんとなく想像はできていたが、案の定家には親父がいた。どうせ今日も狩りに行けなかったのだろう。
奥の部屋のドアノブが回る。親父のお出ましに、オリビアの背筋が伸びる。
こんなことにもなっているとは知らず、親父は悠々と扉を開けた。
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