転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第7章 流浪人とエルフの子

第123話 柄ではないことはわかっている

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 ◆ ◆ ◆


 思わず出てきた直情的な言葉に、ライザは目を瞠ったままぽかんとしていた。何か変なこと言ったかだろうか。ど正論だと思うのだが。というか、こんなに報われない話を聞かされてもどんな顔をすればいいかわかんねえよ、こん畜生。

「……まあ、とりあえずオリビアさんが超良い人だってことはわかった」

 そんなに良い人で、しかも美人ならライザの親父さんも惚れるのもわかる。それに、口には出していないがライザも彼女のことが好きだったはずだ。

 親父さんも殺され、オリビアさんも死んだ。ライザに残されたのは二人の忘れ形見であるリオンだけ。俺がライザと同じ立場でも彼と同じ道をたどるだろう。たとえ、武力でのし上がったとしても。

「ところでお前ら……そんなので幸せなのか?」

「ああ?」

 唐突に尋ねると、ライザは不機嫌そうに眉をひそめた。

「いや、幸せならいいんだけどよ。オリビアさんの言葉を汲み取ると、ずっとこの里にいるのは勿体ないなって思ってさ」

 現にオリビアさんはこう言っていた。「私が見た世界を、君たちにも見せてあげたい」と。俺からしてみれば、それがオリビアさんの生きざまの全てで、彼女の願いのような気がした。

「確かにお前は人間にいい思い出はないかもしれないけど……この世界も悪くないぞ」

 違う世界から来ている俺が言うのだ。説得力はあるはずだ。

 確かに危険な魔物はうじゃうじゃいるし、ムカつく奴もいるけれども、それよりもこの世界には広い大地と美しい街並みと、何より素敵な出会いがあった。それだけでも、この世界は美しいと思う。

「そりゃ、殻にこもるのは楽だけど……それだけでは世界は変わらないし。殻をやぶってみないと、世界の美しさもわかんないだろ? オリビアさんもきっとそういうこと言ってるんだよ」

 頭を掻きながら口をへの字にしてライザに告げる。自分でも柄に合わないことを言っているのはわかっている。しかし、こいつの顔を見ていると、なぜかこういうことを言いたくなるのだ。

「とにかく、お前もリオンも幸せになれる素質があるんだから、好き勝手にやればいいってことだよ」

 最後に語気を強めてそう言うと、ライザは目を丸くして何度も瞬きした。俺にこんなことを言われるとは思わなかったのだろう。だが、もっと煙たがられると思ったのにライザは反論せず、フッと小さく笑った。

「……そうやって言って、リオンを連れ出したいだけだろ?」

「まあ、リオンの力は貸してほしいけどよ……」

 リオンに来てもらうことで百人馬力になることは間違いない。しかし、今の目的はセリナを助けることだ。ここにエルフがいることがわかったのだからウィンド・コア・ピンを使ってセリナをここに連れてくるか、役目が終わったらリオンをここまで送り届けるか、選択肢は最初よりずっと増えている。

「けど、あとはリオンが決めることだ。俺もお前もとやかく言う筋合いはないだろ」

 そう言うと、ライザは意外そうな顔をした。俺が無理矢理にでもリオンを連れて行くと思っていたのだろうか。【赤子の悪魔ベビー・サタン】の俺も、そこまで悪魔ではない。

「あ、でも勘違いするなよ。友達は助けてほしいからな。というか、魔王の配下を倒す手伝いをしたんだからそれくらいやってくれてもいいだろ?」

「……お前はほとんど何もやってないだろうが」

「何を言う。一応とどめ刺したじゃねえか。一応」

「一応な」

 顔をしかめる俺にライザは「やれやれ」と息を吐く。

「ところで……その友達って女か?」

「お、女だけど……それがなんだよ」

 突拍子もなく訊いてくるライザに突っかかる。しかし、そんな俺を見てライザは「ほう」とニヤリと笑う。

「なるほど……惚れた女だった訳か」

「ほ、惚れてなんかねえよ! ただの友達だ!」

 必死に否定してみるが、ライザは口元をニヤニヤさせるだけで何も言わなかった。多分、俺の必死さと火照った顔を見て色々と察したのだろう。それにしても、その全てを見透かしたような顔がムカつく。
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