163 / 242
第12章 VS暗殺者・パルス
第163話 「その筋肉はなんのため」
しおりを挟む
この時だけ、全てがコマ送りに見えた。
「うおらぁぁぁ!」
果敢に吠えた俺。
爆風の勢いで蹴り破られた扉は宙を舞い、それを見たミドリーさんが驚いで目を剥く。
飛び蹴りが決まった俺は華麗に着地するが、その途端に床一面に溜まっていた水が爆発したように跳ねた。
「ミドリー神官!」
遅れてアンジェが声を荒げて部屋に入る。だが、アンジェも、その後に続いて入ったリオンとノアも飛ぶ水飛沫にギョッとしていた。
部屋が水たまりのように水浸しだ。それも、着地しただけで顔面と服がビシャビシャになるくらいに。リオンの起こした爆風も相まって、とんだ派手な登場になってしまった。
この舞台を整えたのはパルス。ただ、理由はまだわからない。こいつの魔法属性は水だから、そこは十分注意しないといけない。
こちらが警戒する一方で、パルスは目を細めて手をパチパチと叩いた。
「……おめでとうございます。ゲームクリアですよ」
口調も表情も明るいが、眼鏡の奥にある大きな目は決して笑っていなかった。
ひしひしと感じる殺気に俺とアンジェがそれぞれ武器を構え、リオンは予め持っていた杖を握り直す。
もう間もなく一触即発する空気間の中、戦う前にやることが一つある。それをリオンはちゃんとわかってくれていた。
無言でリオンが杖を振ると杖のウィンド・コアがぼんやりと光り、先からつむじを巻いた風が現れた。そのつむじ風に引き寄せられるように向かい風が吹いたと思うと、今度は目の前にいたはずのミドリーさんが一瞬でいなくなった。
ミドリーさんの頭部に置いていたパルスの足が空《から》になり、即座に足が床に着く。ぴちゃんと奴の足元で水が飛んだと思ったら、今度はリオンの足元でミドリーさんが転がっていた。
「へえ……これが風の魔法。さっきの風も、君が起こしたのですね?」
パルスが感心するようにリオンを見る。だが、リオンは無言でパルスのことを見つめ返していた。純粋無垢な彼が俺たちに初めて見せた敵意だった。
一方、アンジェは人命のほうを優先していた。
「大丈夫ですか?」
そう言ってアンジェはミドリーさんの腕に巻かれている鎖を外す。器用なアンジェのおかげで鎖はすんなりと外れた。これでとりあえずは人質救出だ。
「……ほんと、あんたの筋肉はなんのためについてるんすか」
冗談交じりでミドリーさんに言うと、「そうだな」と苦笑いされた。しかし、パルスに食らわされた傷も自分の治癒魔法であっという間に治している。ここはひとまず任せてよさそうだ。これで、安心してパルスに臨める。
「まあ、せいぜい頑張りたまえよ」
そう言ってノアはトンッとリオンから降りてミドリーさんの横に座った。この姿では戦闘の邪魔になると思ったのだろう。こいつなりに意外と気を遣っているらしい。
意外といえば、こんなにも隙だらけなのにパルスのほうは俺たちの臨戦態勢が整うのを待っていた。
「……準備は終わりました?」
パルスがクイッと眼鏡を直し、ニッと口角を上げる。
「……随分と優しいのね」
「僕としても、ゲームは楽しみたいもので」
つまり、背中を向けているうちは攻撃を仕かけてこない。だが、その逆も然り。色々と察したアンジェは徐に立ち上がり、俺たちの隣に着いた。
「……では、最後のゲームと致しましょうか」
「うるせえ、さっさとやるぞ万年厨二病」
ここまでの怒りを込めてバトルフォークの切っ先をパルスに向ける。挑発の意味は捉えられていないようだが、この際どうでもいい。俺はさっさとこいつをぶん殴りたい。
「それでは――始めましょうか」
互いの殺気がぶつかり合う。始まりの合図に堪らず足を踏み込む。
だが、攻撃を仕かけたのは俺なのに、パルスの眼中に俺はいなかった。
「……まずは君からですよ、ハーフエルフ君」
ニタついたパルスの目がカッと見開く。その瞬間、パルスの体は足元からドロリと溶け、水に沈んだ。
「うおらぁぁぁ!」
果敢に吠えた俺。
爆風の勢いで蹴り破られた扉は宙を舞い、それを見たミドリーさんが驚いで目を剥く。
飛び蹴りが決まった俺は華麗に着地するが、その途端に床一面に溜まっていた水が爆発したように跳ねた。
「ミドリー神官!」
遅れてアンジェが声を荒げて部屋に入る。だが、アンジェも、その後に続いて入ったリオンとノアも飛ぶ水飛沫にギョッとしていた。
部屋が水たまりのように水浸しだ。それも、着地しただけで顔面と服がビシャビシャになるくらいに。リオンの起こした爆風も相まって、とんだ派手な登場になってしまった。
この舞台を整えたのはパルス。ただ、理由はまだわからない。こいつの魔法属性は水だから、そこは十分注意しないといけない。
こちらが警戒する一方で、パルスは目を細めて手をパチパチと叩いた。
「……おめでとうございます。ゲームクリアですよ」
口調も表情も明るいが、眼鏡の奥にある大きな目は決して笑っていなかった。
ひしひしと感じる殺気に俺とアンジェがそれぞれ武器を構え、リオンは予め持っていた杖を握り直す。
もう間もなく一触即発する空気間の中、戦う前にやることが一つある。それをリオンはちゃんとわかってくれていた。
無言でリオンが杖を振ると杖のウィンド・コアがぼんやりと光り、先からつむじを巻いた風が現れた。そのつむじ風に引き寄せられるように向かい風が吹いたと思うと、今度は目の前にいたはずのミドリーさんが一瞬でいなくなった。
ミドリーさんの頭部に置いていたパルスの足が空《から》になり、即座に足が床に着く。ぴちゃんと奴の足元で水が飛んだと思ったら、今度はリオンの足元でミドリーさんが転がっていた。
「へえ……これが風の魔法。さっきの風も、君が起こしたのですね?」
パルスが感心するようにリオンを見る。だが、リオンは無言でパルスのことを見つめ返していた。純粋無垢な彼が俺たちに初めて見せた敵意だった。
一方、アンジェは人命のほうを優先していた。
「大丈夫ですか?」
そう言ってアンジェはミドリーさんの腕に巻かれている鎖を外す。器用なアンジェのおかげで鎖はすんなりと外れた。これでとりあえずは人質救出だ。
「……ほんと、あんたの筋肉はなんのためについてるんすか」
冗談交じりでミドリーさんに言うと、「そうだな」と苦笑いされた。しかし、パルスに食らわされた傷も自分の治癒魔法であっという間に治している。ここはひとまず任せてよさそうだ。これで、安心してパルスに臨める。
「まあ、せいぜい頑張りたまえよ」
そう言ってノアはトンッとリオンから降りてミドリーさんの横に座った。この姿では戦闘の邪魔になると思ったのだろう。こいつなりに意外と気を遣っているらしい。
意外といえば、こんなにも隙だらけなのにパルスのほうは俺たちの臨戦態勢が整うのを待っていた。
「……準備は終わりました?」
パルスがクイッと眼鏡を直し、ニッと口角を上げる。
「……随分と優しいのね」
「僕としても、ゲームは楽しみたいもので」
つまり、背中を向けているうちは攻撃を仕かけてこない。だが、その逆も然り。色々と察したアンジェは徐に立ち上がり、俺たちの隣に着いた。
「……では、最後のゲームと致しましょうか」
「うるせえ、さっさとやるぞ万年厨二病」
ここまでの怒りを込めてバトルフォークの切っ先をパルスに向ける。挑発の意味は捉えられていないようだが、この際どうでもいい。俺はさっさとこいつをぶん殴りたい。
「それでは――始めましょうか」
互いの殺気がぶつかり合う。始まりの合図に堪らず足を踏み込む。
だが、攻撃を仕かけたのは俺なのに、パルスの眼中に俺はいなかった。
「……まずは君からですよ、ハーフエルフ君」
ニタついたパルスの目がカッと見開く。その瞬間、パルスの体は足元からドロリと溶け、水に沈んだ。
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる