転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第14章 旅立ちへ

第184話 天界へご招待

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「おいおいおい、ちょっと待てよ。色々説明しろよ」

 いきなり「天界に招く」とか言われたところで、みんな話についていけてない。だが、ノアはやる気なさそうにため息をつきながら、顔をしかめた。

「そんな説明なんて面倒臭くてできるか。どうせその辺りはエスメラルダ様がしてくれる」

「上司任せかよ!」

「あー、うるさいな。いいから、さっさと行くぞ」

 ノアが指をパチンッと鳴らすと、俺たちを囲むように真っ白な光が降り注いだ。だが、その光の温みも感じる間もなく、俺たちの体はふわりと宙に浮いた。

「て、天界に招くって……まさか」

 頬を引きつらせるアンジェに向け、ノアがニヤリと笑う。

「そのまさかだ。貴様ら、舌噛むのではないぞ」

 その言葉を合図に俺から重力が消えた。まるで空に引っ張られるように体が浮上する。風を切るせいで体が冷える。ついでに意識が遠くなる。多分、この時俺たち四人は同じことを思っただろう。「あ、天に召された」と。

 だが、次に意識が戻った時、ふわふわとした柔らかいところに寝かされていた。まるで羽毛布団のような寝心地だ。それが雲の上だと気づいた時、俺はその場から飛び起きた。

「ようやく起きたか。勇者様」

 腕を組んだノアが俺を見下ろしている。

 俺は綿菓子のように柔らかい地盤を転ばないようにゆっくり立ちあがった。

 顔を上げると大きな神殿が目の前にあった。ゲームの中でしか見たことがない三角屋根の白くて太い円柱が何本も立っている。この建物だけでどこかのドームと同じくらいの大きさがありそうだ。

 唖然としているうちに仲間たちも起き上がった。みんな目の前の光景に驚いており、口をあんぐりとさせたまま動かない。

「す、凄い……」

「天界の話は聞いたことがありましたが、まさか本当にあったとは思いませんでした」

「まあ、貴様らが驚くのも無理はなかろう。天界なんて行ったことがある者は、神に選ばれた者か死んだことがある者しかいない」

「クックック」と肩を揺らしながら笑うノアだったが、アンジェもセリナも顔が強張っていた。二人共、ノアに対してどう話せばいいかわからないようである。

 そんな気まずそうな二人をよそに、リオンはいい意味で遠慮がなかった。

「ねえねえ。お姉さん、本当にノア?」

 ノアのローブの裾を引っ張りながらリオンが尋ねると、ノアはガシガシとリオンの頭を撫でながら尋ね返した。

「なんだリオン……あんなに遊んでやったというのに、私の声を忘れたのか?」

「ううん。おんなじ声」

「そうであろう? こっちが本当の私なのだ」

 まるでたわいない話のように会話を進める二人だが、聞き捨てならない言葉があった。

「リオちゃん……あなた、ノアちゃんの言葉がわかっていたの?」

 同じことを思ったであろうアンジェがリオンに尋ねる。すると、リオンは不思議そうに首を傾げたままこう答えた。

「猫ってみんな喋るんじゃないの?」

「いやいや、喋らないから」

 慌てて手を横に振って否定する。けれどもリオンはまだキョトンとしていた。その様子を見たノアがニヤニヤと笑う。

「言ってやるなよ。こやつ、初めて見た猫が私だったのだ。そう思うのも仕方ない」

「初めて見た猫って……リオン、お前いつからノアの言葉が聞こえてたんだよ」

「最初からだ。なあ、リオン」

 話を振るノアにリオンがコクリと頷く。

 だが、話を聞けば聞くほど訳がわからなくなった。

 俺は、ノアから「契約している者にしか自分の言葉は理解できない」と聞かされていた。それなのに、ノアと契約していないリオンも理解していたとはどういうことだ。もしかすると、俺たちが気づかなかっただけで、ずっと前からこいつらは会話をしていたというのか。

 状況が追いついていない俺を見て、ノアが嬉しそうにほくそ笑む。完全に混乱している俺を見て楽しんでいるようだ。

「なあに、簡単なことだ。貴様ら三人の中で最初に神に認められたのがリオンだったというだけの話よ」

 聞けばアンジェもセリナもギルドに入っていたから、エスメラルダさんも正式な仲間とは認めていなかったらしい。だからどこにも所属していなくて、純粋に俺についてこようとしたリオンが最初に認められたのだという。

 ギルドを抜けたアンジェとセリナも晴れてエスメラルダさんに認められた訳だが、それでもまだ二人は気まずそうだ。その気まずさはなんとも二人らしい理由だった。
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