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第14章 旅立ちへ
第187話 勇者の住居
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「やれやれ」と頭を抱えていると、ノアがリオンを背中に乗せたままエスメラルダさんに近づいた。
「エスメラルダ様、そろそろ──」
「そうですね。リオン、みなさまもノアの背中に乗せてもらえますか?」
「うん!」
リオンの元気な返事が聞こえたと思うと、俺たちの体がふわりと浮かんだ。リオンが風の魔法を使ったのだ。
「おわっ!」
「ひゃっ」
「キャッ!」
それぞれ短い悲鳴をあげながら、ノアの背中に乗せられる。人間四人、ちゃんとノアにまたぐことができた。ただ、ここからうっかり落馬……ならぬ、落猫をすると死にそうである。
そんな心配をよそに、エスメラルダさんは持っていたロッドをひょいっと振った。
ふわっと風が吹いたかと思うと、瞬きしている間に神殿の外へ出ていた。女神様にしてみれば、瞬間移動なんてロッドひと振りで出てきてしまうらしい。
「それでは、お気をつけて……あなた方の祝福をお祈りしております」
「はい、エスメラルダ様」
「温かきお言葉をありがとうございます」
見送るエスメラルダ様にアンジェとセリナがお辞儀をする。別れの挨拶を済ませると、ノアはゆっくりとエスメラルダさんに背中を向けた。いよいよ、新たな地への旅立ちだ。
「ムギト」
エスメラルダさんに名を呼ばれ、徐に振り向く。すると、エスメラルダさんは申し訳なさそうに眉尻を垂らしながら俺に告げた。
「──ノアのこと、どうかよろしくお願いします」
その表情が胸が張り裂けそうなくらい心苦しそうだったので、俺は不思議に思いつつもとりあえず敬礼しておいた。
ノアが後ろ足を蹴って走り出す。その勢いの良さに、たまらず「うお!」と声をあげてしまう。
「おいノア! もっと丁寧に走れよ!」
文句を言ってみたが、先ほどの神妙な顔つきはどこへ行ったのやら、ノアから「ああ?」とやる気のない声が返ってきた。
「そんなこと言われても困る。そもそもこの姿になるのは私も初めてだ。振り落とされても文句言うなよ」
「えぇぇぇ」
なんて理不尽。しかし、ノアはその言葉通りに俺たちに遠慮なく空の旅をしていた。空中を蹴りながら、風を切って下降していく。
「わーい!」
「あぁぁぁぁ」
走行中も降下中も、リオンの無邪気な声と俺を含めた大人たちの情けない悲鳴が天空に響き渡る。しかし、こんなにも騒いでもノアは聞く耳も持たず、そして、一切スピードを落とすこともせず、目的地へと向かった。
──そして、ついに俺たちは例の拠点へとたどり着いた。体感にして一時間。だが、実際には十五分かそこらしか経っていないという。
リオンの風の魔法を使ってノアの背中から降りる。
この時点ですでに三半規管が壊れており、地面に足がついているはずなのにまだ体が浮いているような感覚があった。それはアンジェやセリナも同様で、三人共ヘロヘロになりながらひざまずいていた。
「大の大人がなんてだらしないのだ。リオンを見習えたまえ」
「誰のせいでこうなったと思ってるんだ……」
と、苦言を言いながら顔を上げると、ノアはすでにいつもの猫の姿になっていた。
しかも「新たな定位置」と言わんばかりにリオンの頭の上にちょこんと座っている。一方、リオンはこの地上と天界のとんでもない高低差の移動でもなんともないらしく、一人だけピンピンしていた。
「でも、見てよ。凄いよ、ここ」
リオンに言われ、くらくらしていた頭を徐に上げる。そして、そこから飛び込んできた光景に思わず声が漏れた。
「おぉ……」
久しぶりに出した感嘆の声だった。前任が使っていた拠点は岬の上にある小さな一軒家だった。岬から見える広い海は太陽の光に反射してキラキラと輝いている。この空が赤くなければもっと綺麗だったことだろう。
「へえ……良い家ね」
アンジェは一軒家を見つめながら小さく呟いた。木造の外壁は白いペンキが塗られており、屋根は朱色。岬といい、背景の海といい、ここだけ見ると映画のワンシーンにでも出てきそうだ。
「エスメラルダ様、そろそろ──」
「そうですね。リオン、みなさまもノアの背中に乗せてもらえますか?」
「うん!」
リオンの元気な返事が聞こえたと思うと、俺たちの体がふわりと浮かんだ。リオンが風の魔法を使ったのだ。
「おわっ!」
「ひゃっ」
「キャッ!」
それぞれ短い悲鳴をあげながら、ノアの背中に乗せられる。人間四人、ちゃんとノアにまたぐことができた。ただ、ここからうっかり落馬……ならぬ、落猫をすると死にそうである。
そんな心配をよそに、エスメラルダさんは持っていたロッドをひょいっと振った。
ふわっと風が吹いたかと思うと、瞬きしている間に神殿の外へ出ていた。女神様にしてみれば、瞬間移動なんてロッドひと振りで出てきてしまうらしい。
「それでは、お気をつけて……あなた方の祝福をお祈りしております」
「はい、エスメラルダ様」
「温かきお言葉をありがとうございます」
見送るエスメラルダ様にアンジェとセリナがお辞儀をする。別れの挨拶を済ませると、ノアはゆっくりとエスメラルダさんに背中を向けた。いよいよ、新たな地への旅立ちだ。
「ムギト」
エスメラルダさんに名を呼ばれ、徐に振り向く。すると、エスメラルダさんは申し訳なさそうに眉尻を垂らしながら俺に告げた。
「──ノアのこと、どうかよろしくお願いします」
その表情が胸が張り裂けそうなくらい心苦しそうだったので、俺は不思議に思いつつもとりあえず敬礼しておいた。
ノアが後ろ足を蹴って走り出す。その勢いの良さに、たまらず「うお!」と声をあげてしまう。
「おいノア! もっと丁寧に走れよ!」
文句を言ってみたが、先ほどの神妙な顔つきはどこへ行ったのやら、ノアから「ああ?」とやる気のない声が返ってきた。
「そんなこと言われても困る。そもそもこの姿になるのは私も初めてだ。振り落とされても文句言うなよ」
「えぇぇぇ」
なんて理不尽。しかし、ノアはその言葉通りに俺たちに遠慮なく空の旅をしていた。空中を蹴りながら、風を切って下降していく。
「わーい!」
「あぁぁぁぁ」
走行中も降下中も、リオンの無邪気な声と俺を含めた大人たちの情けない悲鳴が天空に響き渡る。しかし、こんなにも騒いでもノアは聞く耳も持たず、そして、一切スピードを落とすこともせず、目的地へと向かった。
──そして、ついに俺たちは例の拠点へとたどり着いた。体感にして一時間。だが、実際には十五分かそこらしか経っていないという。
リオンの風の魔法を使ってノアの背中から降りる。
この時点ですでに三半規管が壊れており、地面に足がついているはずなのにまだ体が浮いているような感覚があった。それはアンジェやセリナも同様で、三人共ヘロヘロになりながらひざまずいていた。
「大の大人がなんてだらしないのだ。リオンを見習えたまえ」
「誰のせいでこうなったと思ってるんだ……」
と、苦言を言いながら顔を上げると、ノアはすでにいつもの猫の姿になっていた。
しかも「新たな定位置」と言わんばかりにリオンの頭の上にちょこんと座っている。一方、リオンはこの地上と天界のとんでもない高低差の移動でもなんともないらしく、一人だけピンピンしていた。
「でも、見てよ。凄いよ、ここ」
リオンに言われ、くらくらしていた頭を徐に上げる。そして、そこから飛び込んできた光景に思わず声が漏れた。
「おぉ……」
久しぶりに出した感嘆の声だった。前任が使っていた拠点は岬の上にある小さな一軒家だった。岬から見える広い海は太陽の光に反射してキラキラと輝いている。この空が赤くなければもっと綺麗だったことだろう。
「へえ……良い家ね」
アンジェは一軒家を見つめながら小さく呟いた。木造の外壁は白いペンキが塗られており、屋根は朱色。岬といい、背景の海といい、ここだけ見ると映画のワンシーンにでも出てきそうだ。
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