転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第15章 絶望の街『イルニス』

第206話 創造者VS爆弾使い

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 そう思っていたのに、話に割り込んできたのはケインだった。

「俺はいいぜ。というか、俺も喧嘩を売ったのはこのお姉さんにだし」

 と、ケインは座っていた岩山から飛び降りて楽々と着地した。

「お前らにも見せてやりたかったよ。昨日見た彼女の殺意剥き出しの顔をさ」

 ククッと肩を揺らしながらケインは笑う。

 相変わらず人を見下すような厭味ったらしい笑みだったが、こいつの言う通りだった。こいつが昨日宣戦布告したのは、確かにセリナに対してだった。そういう流れになったのも、直前に俯いていたセリナの顔を覗き込んだからだと思う。あの時セリナは恐怖で震えていると思っていた。だが実際は違う。ケインに対する怒りで震えていたのだ。

 ケインが俺たちに話しかけている間もセリナはずっと奴のことを睨み続けていた。その様子を見てアンジェは諦めたように息をつき、そして構えていた剣を鞘に収めた。

「……やってやりなさい、セリちゃん。あなたの強いところをみんなに見せつけてやるのよ」

「──はい」

 アンジェに言われ、セリナは力強く返事をした。二人にそんな真面目な顔をされると、俺も引かざるを得なかった。

「でも、とどめは俺が刺す。いいか?」

 念を押すように問うと、セリナはコクリと頷いた。俺しかケインにとどめを刺せないということだけではない。こんな奴を殺して、セリナの手を汚させたくないと思ったからだ。

 彼女の揺るがない強い意志に免じて、俺もバトルフォークをホルダーに戻す。空気を察して、これまで黙っていたリオンも杖を静かに下ろした。この様子を、ノアだけは口角を上げて眺めていた。

「それでは、行きます」

 俺たちを戦いに巻き込まないようにするためか、セリナはスッとゆっくり、ゆっくりとケインのほうへと向かった。

「……お別れの言葉は済んだかい? お姉さん」

 彼女が自分に近づく間、ケインはぐるぐると肩を回して肩慣らしをした。戦う準備は万端のようだ。

「改めて自己紹介といこうじゃねえか。俺はケイン。クラスは【爆弾使いボマー】だ」

「【創造者クリエイター】のセリナです──お相手、よろしくお願いします」

 そう言って、セリナは両手をオレンジ色に光らせ、地面を手に付けた。

 セリナが手を付けた途端、地面がいきなり「ゴゴゴゴゴ……」と地響きのような音が鳴った。間もなくして地面が揺れ、彼女の足元が山のようにぼこぼこと膨らんでいった。

「おいで。みんな」

 彼女の静かな掛け声で、山のように膨らんでいった地面から飛び出るようにセリナのゴーレムたちが現れた。数は五体。いつもの膝丈高さもないゴーレムたちだ。

「へえ。【創設者クリエイター】でゴーレム使いか」

 感心するようにケインがセリナと彼女のゴーレムたちを見つめる。だが、ゴーレムたちが現れたあとでも、地響きは続いていた。

 地響きと共に盛り上がった地面は、気づけばセリナの身長を越える高さになっていた。そこから大きな雪だるまのような手足がくっつき、巨大なゴーレムへと変化した。これまでのゴーレムが手のひらサイズに見えるほど巨大なゴーレムだった。

「お初にお目にかかります。足元にいる子たちがゴレちゃんとムンちゃん。そしてこの大きい子がゴレムンちゃんです」

「全然呼び名と数が合ってないじゃねえかよ……」

 セリナの丁寧な紹介に悪態をつきながらも、巨大なゴーレムの前ではケインも苦笑いを浮かべていた。あんな大きな体で殴られたら一溜まりもないことが奴もわかっているようだった。

「だが、図体がでかいと的もでかくなるんだぜ!」

 そう言って、ケインはポケットの中から何か石のようなものを取り出した。その石はぼんやりと赤く光っている。それがファイヤー・コアだというのに気づいたのは、ケインがゴレムンちゃんに投げつけてからだった。

「おらぁ! 爆発しろ!」

 ケインが笑いながら吠えると、投げたファイヤー・コアがカッと赤く光った。

 爆発させるつもりだ。だが、奴が投げたファイヤー・コアがゴレムンちゃんに当たる前にセリナの足元にいたゴレちゃん(※推定)が飛び上がってわざとファイヤー・コアの爆弾に突っ込んでいった。
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