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【第四章 国境の町グロリア】
2.厳重な検問
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城門の前には、すでに多くの人や荷馬車が行列を作っていた。商人風の男が大量の木箱を載せた荷車を引きながら交渉していたり、旅の途中と思しき冒険者集団が書類を提示していたりと、やや混雑している。
リュートたちが列に並ぶと、鎧に身を包んだ兵士が一人近づいてきた。
「次、そこの旅芸人団、書類を確認する」
無骨な態度だが、公務に慣れているのか動きには無駄がない。
ケインが落ち着いた手つきで王国の許可証や興行計画書を差し出す。兵士はそれを念入りにチェックし、メンバー全員の名前が書かれた台帳と照合(しょうごう)する。
「アルカディア座、代表は……ケイン・ドレイヴン。うむ、許可証に記載の通りだな。ちなみにそこの若いのは?」
兵士はリュートに目を向ける。
「こちらは新入りの見習い座員、リュートだ。今回が初の巡業になる」
ケインが穏やかに答えると、兵士は少し眉(まゆ)をひそめつつも、「ふん」と鼻で応じる。
「わかった。念のため、荷物の中身を見せてもらうぞ」
馬車や鞄が一通り検査される。リラのジャグリング用具や大道芸の仕掛けも、ひとつひとつ丁寧に確認される。
途中、兵士の一人が大きな木箱を開けて、何か目新しい道具を見つけた様子で声をあげた。
「これは……猛獣か何かの人形か? やけにリアルだが」
「はは、舞台で使う小道具ですよ。うちの人形使いが工夫して作ったんです」
リラが明るく笑ってごまかす。それは先日もショーで使っていた狼のような仮面を装備する人形らしく、リアルな毛並が売りなのだとか。
やがて兵士たちは検査を終え、書類をケインに返却した。
「よし、問題なし。グロリアへようこそ。城門を入って右手の詰所に役所があるから、そちらで興行の許可を申請してくれ。それが済めば、あとは自由に行動していい」
こうして、アルカディア座は無事に街の中へ入る許可を得た。リュートは少し緊張したが、何事もなく通過できたことに安堵するのだった。
リュートたちが列に並ぶと、鎧に身を包んだ兵士が一人近づいてきた。
「次、そこの旅芸人団、書類を確認する」
無骨な態度だが、公務に慣れているのか動きには無駄がない。
ケインが落ち着いた手つきで王国の許可証や興行計画書を差し出す。兵士はそれを念入りにチェックし、メンバー全員の名前が書かれた台帳と照合(しょうごう)する。
「アルカディア座、代表は……ケイン・ドレイヴン。うむ、許可証に記載の通りだな。ちなみにそこの若いのは?」
兵士はリュートに目を向ける。
「こちらは新入りの見習い座員、リュートだ。今回が初の巡業になる」
ケインが穏やかに答えると、兵士は少し眉(まゆ)をひそめつつも、「ふん」と鼻で応じる。
「わかった。念のため、荷物の中身を見せてもらうぞ」
馬車や鞄が一通り検査される。リラのジャグリング用具や大道芸の仕掛けも、ひとつひとつ丁寧に確認される。
途中、兵士の一人が大きな木箱を開けて、何か目新しい道具を見つけた様子で声をあげた。
「これは……猛獣か何かの人形か? やけにリアルだが」
「はは、舞台で使う小道具ですよ。うちの人形使いが工夫して作ったんです」
リラが明るく笑ってごまかす。それは先日もショーで使っていた狼のような仮面を装備する人形らしく、リアルな毛並が売りなのだとか。
やがて兵士たちは検査を終え、書類をケインに返却した。
「よし、問題なし。グロリアへようこそ。城門を入って右手の詰所に役所があるから、そちらで興行の許可を申請してくれ。それが済めば、あとは自由に行動していい」
こうして、アルカディア座は無事に街の中へ入る許可を得た。リュートは少し緊張したが、何事もなく通過できたことに安堵するのだった。
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