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【第四章 国境の町グロリア】
4.町の市と露店
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道を進むごとに、さまざまな屋台や露店が立ち並ぶ。豪華な生地を並べる布屋、革製品や小物を売る商人、香ばしい匂いが漂う屋台飯の店もある。
「わあ、こっちの飴細工はすごく綺麗……あっちは果物が山盛り……」
リラが目を輝(かがや)かせながらあれこれ物色している姿は、まるで少女のように無邪気だ。
一方、リュートは物珍しさに胸を弾ませつつも、同時に少し気後れしている。
「すごい人波だな……村じゃ考えられない。皆、ちゃんと目的地に行けるのか?」
「あはは、大丈夫よ。慣れればこの喧騒の中でも自然と道が分かるものさ」
リラは行き交う人混みをひらりと縫うように進み、リュートを軽くリードしていく。
ひと通り大きな通りを歩いたところで、リラが路地(ろじ)を曲がり、小さな広場に出た。ここは町の中心部にある“市”らしく、より活気に満ちた露店の集まりが見えた。
「よし、せっかくだし何か食べましょ! 屋台で売ってる串焼きなんて最高だよ~!」
「……え、でも俺、あんまりお金持ってないんだけど」
「大丈夫! 初めての町で遠慮は損(そん)。あたしが少し奢ってあげるからさ!」
リュートは遠慮しつつも、香ばしい肉の匂いに胃が刺激されてつい頷いてしまう。リラが嬉々として小銭を取り出し、店主と軽妙なやり取りを交わしながら、串焼きと焼き立てパンのセットを二人前手に入れた。
「はい、これリュートの分。熱いから気をつけて」
「ありがとう……いただきます!」
かじりつくと、ジュワッと肉汁が溢れ出し、炭火(すみび)の香りが鼻腔をくすぐる。柔らかいパンとの相性も抜群だ。リュートは思わず「うまい……!」と声を上げる。
「でしょ~? この店、前に来たときに気に入ってさ。まさかまだ健在だったとは嬉しいね」
リラも幸せそうにほおばりながら言う。
「わあ、こっちの飴細工はすごく綺麗……あっちは果物が山盛り……」
リラが目を輝(かがや)かせながらあれこれ物色している姿は、まるで少女のように無邪気だ。
一方、リュートは物珍しさに胸を弾ませつつも、同時に少し気後れしている。
「すごい人波だな……村じゃ考えられない。皆、ちゃんと目的地に行けるのか?」
「あはは、大丈夫よ。慣れればこの喧騒の中でも自然と道が分かるものさ」
リラは行き交う人混みをひらりと縫うように進み、リュートを軽くリードしていく。
ひと通り大きな通りを歩いたところで、リラが路地(ろじ)を曲がり、小さな広場に出た。ここは町の中心部にある“市”らしく、より活気に満ちた露店の集まりが見えた。
「よし、せっかくだし何か食べましょ! 屋台で売ってる串焼きなんて最高だよ~!」
「……え、でも俺、あんまりお金持ってないんだけど」
「大丈夫! 初めての町で遠慮は損(そん)。あたしが少し奢ってあげるからさ!」
リュートは遠慮しつつも、香ばしい肉の匂いに胃が刺激されてつい頷いてしまう。リラが嬉々として小銭を取り出し、店主と軽妙なやり取りを交わしながら、串焼きと焼き立てパンのセットを二人前手に入れた。
「はい、これリュートの分。熱いから気をつけて」
「ありがとう……いただきます!」
かじりつくと、ジュワッと肉汁が溢れ出し、炭火(すみび)の香りが鼻腔をくすぐる。柔らかいパンとの相性も抜群だ。リュートは思わず「うまい……!」と声を上げる。
「でしょ~? この店、前に来たときに気に入ってさ。まさかまだ健在だったとは嬉しいね」
リラも幸せそうにほおばりながら言う。
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