34 / 59
【第五章 闇に潜む足音】
3.救いの剣閃
しおりを挟む
そのとき、路地裏にシャキンッという金属音が鳴り渡った。
「リュート、下がれ!」
聞き慣れた声――ガロウだ。いつの間にか暗闇の中から現れたガロウは、無駄のない動きで魔物との距離を一気に詰めると、剣を横薙ぎに振るった。
魔物は女性を抱いたまま身をひねり、斬撃をかわそうとするが、ガロウの斬り込みは鋭く、魔物の肩口に浅くめり込む。
「グァッ……!」
魔物が大きく後退した瞬間、抱え込まれていた女性が床に転がり落ちる。
「リュート、あの女を安全な場所へ! 俺がこいつを引き受ける!」
ガロウの命令に、リュートはハッと我に返る。転がっている女性を慌てて抱き起こし、脇へ退避させる。女性はまだ意識が朦朧としているようだが、命に別状はなさそうだ。
ガロウと魔物は再び距離をとり、にらみ合う。ガロウの表情は無心とも言えるほど冷静で、魔物の動き一つ一つを見極めようとしているのが伝わってくる。
一方で魔物は、血を流しながらもまったく怯む気配がない。鋭い爪を構え、ガロウの隙を窺っている。
「……リュート。やつの動きに注意しろ。おまえも戦うなら、俺の合図に合わせろ」
ガロウが低い声で言葉を発する。リュートはうなずきつつ、短剣を握りなおした。
「わかった。助けてくれてありがとう、ガロウさん。でもどうしてここに……」
「後だ。今はこいつを仕留める」
言い終わるや否や、魔物が咆哮とともに飛びかかる。ガロウはそれを正面から受け止め、凄まじい衝撃で剣と爪が火花を散らす。
リュートはその隙に、魔物の横合へ回り込み、短剣で斬りつけようとする。だが魔物の動きは速く、簡単には狙いを定められない。
「チッ……!」
リュートが焦るところへ、ガロウが鋭い声を発した。
「リュート、下がれ!」
その瞬間、ガロウは魔物の攻撃を受け流すと同時に剣を振り上げ、上段から大きく斬り下ろす。
バキィッと骨を砕くような音が響き、魔物の上腕がごっそりえぐれる。
「ギャアァァ……!」
魔物は悲鳴に近い咆哮をあげ、痛みによる一瞬の隙を見せた。リュートはそれを見逃さず、思い切り短剣を突き込む。
「頼む……倒れてくれっ!」
短剣は魔物の胸のあたりに浅く刺さり、黒い血が吹き出す。魔物は狂ったように暴れ回り、凶暴な爪を振り回して抵抗するが、すでに致命傷に近いダメージを負っているのか次第に動きが鈍くなっていく。
そして、ガロウが渾身の一撃を加えると、魔物はゴトリと地面に崩れ落ちた。
「……はぁ、はぁ……」
リュートは深い呼吸を繰り返し、心臓の鼓動を鎮めようとする。ガロウは剣についた血を軽く払い、無言で魔物の死骸を見下ろした。
「リュート、下がれ!」
聞き慣れた声――ガロウだ。いつの間にか暗闇の中から現れたガロウは、無駄のない動きで魔物との距離を一気に詰めると、剣を横薙ぎに振るった。
魔物は女性を抱いたまま身をひねり、斬撃をかわそうとするが、ガロウの斬り込みは鋭く、魔物の肩口に浅くめり込む。
「グァッ……!」
魔物が大きく後退した瞬間、抱え込まれていた女性が床に転がり落ちる。
「リュート、あの女を安全な場所へ! 俺がこいつを引き受ける!」
ガロウの命令に、リュートはハッと我に返る。転がっている女性を慌てて抱き起こし、脇へ退避させる。女性はまだ意識が朦朧としているようだが、命に別状はなさそうだ。
ガロウと魔物は再び距離をとり、にらみ合う。ガロウの表情は無心とも言えるほど冷静で、魔物の動き一つ一つを見極めようとしているのが伝わってくる。
一方で魔物は、血を流しながらもまったく怯む気配がない。鋭い爪を構え、ガロウの隙を窺っている。
「……リュート。やつの動きに注意しろ。おまえも戦うなら、俺の合図に合わせろ」
ガロウが低い声で言葉を発する。リュートはうなずきつつ、短剣を握りなおした。
「わかった。助けてくれてありがとう、ガロウさん。でもどうしてここに……」
「後だ。今はこいつを仕留める」
言い終わるや否や、魔物が咆哮とともに飛びかかる。ガロウはそれを正面から受け止め、凄まじい衝撃で剣と爪が火花を散らす。
リュートはその隙に、魔物の横合へ回り込み、短剣で斬りつけようとする。だが魔物の動きは速く、簡単には狙いを定められない。
「チッ……!」
リュートが焦るところへ、ガロウが鋭い声を発した。
「リュート、下がれ!」
その瞬間、ガロウは魔物の攻撃を受け流すと同時に剣を振り上げ、上段から大きく斬り下ろす。
バキィッと骨を砕くような音が響き、魔物の上腕がごっそりえぐれる。
「ギャアァァ……!」
魔物は悲鳴に近い咆哮をあげ、痛みによる一瞬の隙を見せた。リュートはそれを見逃さず、思い切り短剣を突き込む。
「頼む……倒れてくれっ!」
短剣は魔物の胸のあたりに浅く刺さり、黒い血が吹き出す。魔物は狂ったように暴れ回り、凶暴な爪を振り回して抵抗するが、すでに致命傷に近いダメージを負っているのか次第に動きが鈍くなっていく。
そして、ガロウが渾身の一撃を加えると、魔物はゴトリと地面に崩れ落ちた。
「……はぁ、はぁ……」
リュートは深い呼吸を繰り返し、心臓の鼓動を鎮めようとする。ガロウは剣についた血を軽く払い、無言で魔物の死骸を見下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる