蒼穹の竜王

バルッ!!

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【第五章 闇に潜む足音】

3.救いの剣閃

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そのとき、路地裏にシャキンッという金属音が鳴り渡った。
「リュート、下がれ!」
聞き慣れた声――ガロウだ。いつの間にか暗闇の中から現れたガロウは、無駄のない動きで魔物との距離を一気に詰めると、剣を横薙ぎに振るった。

魔物は女性を抱いたまま身をひねり、斬撃をかわそうとするが、ガロウの斬り込みは鋭く、魔物の肩口に浅くめり込む。
「グァッ……!」
魔物が大きく後退した瞬間、抱え込まれていた女性が床に転がり落ちる。

「リュート、あの女を安全な場所へ! 俺がこいつを引き受ける!」
ガロウの命令に、リュートはハッと我に返る。転がっている女性を慌てて抱き起こし、脇へ退避させる。女性はまだ意識が朦朧としているようだが、命に別状はなさそうだ。

ガロウと魔物は再び距離をとり、にらみ合う。ガロウの表情は無心とも言えるほど冷静で、魔物の動き一つ一つを見極めようとしているのが伝わってくる。
一方で魔物は、血を流しながらもまったく怯む気配がない。鋭い爪を構え、ガロウの隙を窺っている。

「……リュート。やつの動きに注意しろ。おまえも戦うなら、俺の合図に合わせろ」
ガロウが低い声で言葉を発する。リュートはうなずきつつ、短剣を握りなおした。
「わかった。助けてくれてありがとう、ガロウさん。でもどうしてここに……」
「後だ。今はこいつを仕留める」

言い終わるや否や、魔物が咆哮とともに飛びかかる。ガロウはそれを正面から受け止め、凄まじい衝撃で剣と爪が火花を散らす。
リュートはその隙に、魔物の横合へ回り込み、短剣で斬りつけようとする。だが魔物の動きは速く、簡単には狙いを定められない。

「チッ……!」
リュートが焦るところへ、ガロウが鋭い声を発した。
「リュート、下がれ!」
その瞬間、ガロウは魔物の攻撃を受け流すと同時に剣を振り上げ、上段から大きく斬り下ろす。

バキィッと骨を砕くような音が響き、魔物の上腕がごっそりえぐれる。
「ギャアァァ……!」
魔物は悲鳴に近い咆哮をあげ、痛みによる一瞬の隙を見せた。リュートはそれを見逃さず、思い切り短剣を突き込む。

「頼む……倒れてくれっ!」
短剣は魔物の胸のあたりに浅く刺さり、黒い血が吹き出す。魔物は狂ったように暴れ回り、凶暴な爪を振り回して抵抗するが、すでに致命傷に近いダメージを負っているのか次第に動きが鈍くなっていく。

そして、ガロウが渾身の一撃を加えると、魔物はゴトリと地面に崩れ落ちた。
「……はぁ、はぁ……」
リュートは深い呼吸を繰り返し、心臓の鼓動を鎮めようとする。ガロウは剣についた血を軽く払い、無言で魔物の死骸を見下ろした。
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