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【第五章 闇に潜む足音】
6.衛兵の動揺
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翌朝。
リュートはガロウとともにグロリアの衛兵詰所を訪れた。ケインや他のメンバーは宿に残って、昨日助けた女性の看病と、公演スケジュールの手続きを行うことになっている。
詰所の中には鎧を着た兵士たちが行き交い、書類の確認や報告を手際よく処理している。
「……昨夜の魔物の件か。確かに城壁の中で魔物を見かけたという情報が最近増えていてな。数日前から行方不明者が出ているという報告もある。だが、真偽を確かめようにも、目撃者の証言がバラバラで……」
対応に出てきたのは、分厚い眉が印象的な衛兵長。彼は苦しげな表情で話しながら、机の上の地図を指し示す。
「報告によると、被害に遭った人々の居場所が、実に街のあちこちに散在している。特定のエリアが狙われているわけでもなく、夜間巡回の兵を増やしても、なかなか尻尾を掴めないんだ」
リュートは思わず唸る。街全体で起きている事件であれば、それだけ対処も難しくなる。
「俺たちは昨夜、まさに人を襲っている魔物を見かけました。死骸はまだ路地裏に残っていると思います。すみませんが、早めに回収してもらいたいです」
ガロウが静かに言葉を補足する。
衛兵長は深く頷き、部下の兵士に指示を出す。
「わかった。すぐに回収班を送ろう。……ただ、こんな化け物が街中に入り込むとは信じがたい話だな。もし何者かが意図的に呼び込んでいるのだとしたら……」
言葉を濁す衛兵長に、リュートは思わず問いかける。
「呼び込む……? そんなことが可能なんですか?」
「さあな。だが、人為的に魔物を操る術があるという話は、昔から絶えず囁かれている。もしそれが事実なら……」
重苦しい空気が詰所を包む。誰もが「まさか」と思いつつも、可能性がないとは言い切れない状況になってきているのだ。
リュートはガロウとともにグロリアの衛兵詰所を訪れた。ケインや他のメンバーは宿に残って、昨日助けた女性の看病と、公演スケジュールの手続きを行うことになっている。
詰所の中には鎧を着た兵士たちが行き交い、書類の確認や報告を手際よく処理している。
「……昨夜の魔物の件か。確かに城壁の中で魔物を見かけたという情報が最近増えていてな。数日前から行方不明者が出ているという報告もある。だが、真偽を確かめようにも、目撃者の証言がバラバラで……」
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「報告によると、被害に遭った人々の居場所が、実に街のあちこちに散在している。特定のエリアが狙われているわけでもなく、夜間巡回の兵を増やしても、なかなか尻尾を掴めないんだ」
リュートは思わず唸る。街全体で起きている事件であれば、それだけ対処も難しくなる。
「俺たちは昨夜、まさに人を襲っている魔物を見かけました。死骸はまだ路地裏に残っていると思います。すみませんが、早めに回収してもらいたいです」
ガロウが静かに言葉を補足する。
衛兵長は深く頷き、部下の兵士に指示を出す。
「わかった。すぐに回収班を送ろう。……ただ、こんな化け物が街中に入り込むとは信じがたい話だな。もし何者かが意図的に呼び込んでいるのだとしたら……」
言葉を濁す衛兵長に、リュートは思わず問いかける。
「呼び込む……? そんなことが可能なんですか?」
「さあな。だが、人為的に魔物を操る術があるという話は、昔から絶えず囁かれている。もしそれが事実なら……」
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