18 / 42
ストーリー
帰宅
しおりを挟む
ペディアはリュカスに指示し、街外れでリュカスの背から下ろしてもらった。街の中ではリュカスの存在がかなり目立つであろう雰囲気と姿をしているため、1番小さな大型犬サイズになってもらった。
久しぶりに帰ってきた街は、活気溢れ、各々が商売を営んでいた。ある店の武器屋を通り過ぎようとした時、見知った顔が表に出てきた。
「あれっ?ペディア??」
「あ、ジニア!久しぶり~。元気だった?」
ペディアが手を振りながら駆け寄ると、不思議そうな顔をされた。
「もちろん!…えっと、その隣にいる白いのは……?」
「私の友だちよ。久しぶりに街に帰ってきたし、この子は初めてだから、案内がてら家に帰ろうと思って」
「なるほどね。ね、最近の噂って聞いてる?」
「……うわさ?帰ってきたばっかりだから、知らないよ。どうしたの?」
ペディアが不思議そうに聞き返すと、ジニアはサッと辺りを見回し、店の奥へとリュカスを先に入れてから、背中を強く押してくる。
「早く中に入って。あなたも目立つから」
「わ、分かった」
リュカスと一緒に店の奥へ入ると、ジニアが小声で打ち明けた。
「あのね、あなたのお父さんの様子がおかしいの。あちこち回ってはペディアのことを聞いて回ってて…。ジニアは何かあるのかなって思ったけど、しばらく会ってなかったし、疑問だったんだけど…」
『ペディア、この者に伝えよ』
しばらく黙っていたリュカスが念話をしてきた。人語を話せる魔物は最上級魔物の中でも上位しか居ない希少なものだからだろう。ジニアを驚かせないために安全策をとったらしい。
「…ね、ジニア。この子がね、街の様子がピリピリしてるって言ってるんだけど……。」
「そうなの。よく聞いて、ペディア。あの人は……。ペディアのお父さんじゃない。別の何かよ。みんな、あの雰囲気に怯えてるの。下手したら街全体が破壊されかねないって」
ジニアは言いにくそうに言葉を切りつつ、思い切ったように話してくれた。言われて、1度見た父ならぬ何かの存在を思い出した。
確かに、アレは1人で対処しきれるものじゃない。でも…、どうにかしなきゃ、街の人が…。
ペディアは悩んだ末に言う。
「ごめんね、ジニア。私、あの家で気になることがあるの。それを探すために戻ってきたの。とりあえず…、あの人に見つからないようにしなきゃ行けないってことだけは分かった。
……うわさ話をしてくれてありがとう。もう行くね」
「あっ、待ってよ!ペディア。……本当に…気をつけてね…?何かあったらすぐ言ってよ!」
「うん」
ジニアは泣きそうな顔で心配してくれた。私は大丈夫だと笑顔で告げてリュカスと共に武器屋を出る。
『ペディアよ、本当に良いのか?』
「なにが? お父さんに会えたらいいけど…、そうじゃない場合が怖いな…。でも、覚悟の上だから、大丈夫」
リュカスはなにか言いたげの様子だったが、結局何も話さないまま家に着いた。門をくぐろうとしてリュカスに止められた。
『止めておけ。結界が張られている。恐らくこの種の結界は……』
リュカスは一旦言葉を区切って、分析を始めた。
『やはり。此奴は屋敷に入る者を拒んでいる。そして、ペディアが入ることによって結界が解除され、お主の父ならぬ誰かが戻ってくることになろう。
我に付いてこい』
リュカスはそう言って家周辺を回り始めた。その間にペディアは心の中でアガーべを呼ぶことにした。(『夢渡り』参照)
「ペディ姉!!」
「うわぁっ!」
ペディアが声をかけたと途端、家からアガーべが飛び出してきた。ドスンっという音と共に後ろに倒される。その様子を気にせずリュカスは尋ねた。
『……ふむ、お主がアガーべと名乗る者か?』
「うん? うんっ! そうだよ。姉ちゃんが付けてくれたんだ」
アガーペはペディアを押し倒したままの姿勢で、リュカスにニッコリ笑いながら頷く。ペディアは打ち付けた頭を擦りながら言う。
「アガーべ~。挨拶するのはいいけど、退いてくれない?」
「あっ、ごめん」
アガーべが体を起こしてペディアを解放すると、家の中の様子を教えてくれた。
「今は誰も家にいないよ。ただ、あの人が設置したものがあって、触らない方がいいと思うから教えるね」
『ペディア、アガーべ、ここから入れ。結界を壊さぬよう穴を開けた』
「ありがとう」
「狼さん器用だね?」
『このくらい容易いことだ』
久しぶりに帰ってきた街は、活気溢れ、各々が商売を営んでいた。ある店の武器屋を通り過ぎようとした時、見知った顔が表に出てきた。
「あれっ?ペディア??」
「あ、ジニア!久しぶり~。元気だった?」
ペディアが手を振りながら駆け寄ると、不思議そうな顔をされた。
「もちろん!…えっと、その隣にいる白いのは……?」
「私の友だちよ。久しぶりに街に帰ってきたし、この子は初めてだから、案内がてら家に帰ろうと思って」
「なるほどね。ね、最近の噂って聞いてる?」
「……うわさ?帰ってきたばっかりだから、知らないよ。どうしたの?」
ペディアが不思議そうに聞き返すと、ジニアはサッと辺りを見回し、店の奥へとリュカスを先に入れてから、背中を強く押してくる。
「早く中に入って。あなたも目立つから」
「わ、分かった」
リュカスと一緒に店の奥へ入ると、ジニアが小声で打ち明けた。
「あのね、あなたのお父さんの様子がおかしいの。あちこち回ってはペディアのことを聞いて回ってて…。ジニアは何かあるのかなって思ったけど、しばらく会ってなかったし、疑問だったんだけど…」
『ペディア、この者に伝えよ』
しばらく黙っていたリュカスが念話をしてきた。人語を話せる魔物は最上級魔物の中でも上位しか居ない希少なものだからだろう。ジニアを驚かせないために安全策をとったらしい。
「…ね、ジニア。この子がね、街の様子がピリピリしてるって言ってるんだけど……。」
「そうなの。よく聞いて、ペディア。あの人は……。ペディアのお父さんじゃない。別の何かよ。みんな、あの雰囲気に怯えてるの。下手したら街全体が破壊されかねないって」
ジニアは言いにくそうに言葉を切りつつ、思い切ったように話してくれた。言われて、1度見た父ならぬ何かの存在を思い出した。
確かに、アレは1人で対処しきれるものじゃない。でも…、どうにかしなきゃ、街の人が…。
ペディアは悩んだ末に言う。
「ごめんね、ジニア。私、あの家で気になることがあるの。それを探すために戻ってきたの。とりあえず…、あの人に見つからないようにしなきゃ行けないってことだけは分かった。
……うわさ話をしてくれてありがとう。もう行くね」
「あっ、待ってよ!ペディア。……本当に…気をつけてね…?何かあったらすぐ言ってよ!」
「うん」
ジニアは泣きそうな顔で心配してくれた。私は大丈夫だと笑顔で告げてリュカスと共に武器屋を出る。
『ペディアよ、本当に良いのか?』
「なにが? お父さんに会えたらいいけど…、そうじゃない場合が怖いな…。でも、覚悟の上だから、大丈夫」
リュカスはなにか言いたげの様子だったが、結局何も話さないまま家に着いた。門をくぐろうとしてリュカスに止められた。
『止めておけ。結界が張られている。恐らくこの種の結界は……』
リュカスは一旦言葉を区切って、分析を始めた。
『やはり。此奴は屋敷に入る者を拒んでいる。そして、ペディアが入ることによって結界が解除され、お主の父ならぬ誰かが戻ってくることになろう。
我に付いてこい』
リュカスはそう言って家周辺を回り始めた。その間にペディアは心の中でアガーべを呼ぶことにした。(『夢渡り』参照)
「ペディ姉!!」
「うわぁっ!」
ペディアが声をかけたと途端、家からアガーべが飛び出してきた。ドスンっという音と共に後ろに倒される。その様子を気にせずリュカスは尋ねた。
『……ふむ、お主がアガーべと名乗る者か?』
「うん? うんっ! そうだよ。姉ちゃんが付けてくれたんだ」
アガーペはペディアを押し倒したままの姿勢で、リュカスにニッコリ笑いながら頷く。ペディアは打ち付けた頭を擦りながら言う。
「アガーべ~。挨拶するのはいいけど、退いてくれない?」
「あっ、ごめん」
アガーべが体を起こしてペディアを解放すると、家の中の様子を教えてくれた。
「今は誰も家にいないよ。ただ、あの人が設置したものがあって、触らない方がいいと思うから教えるね」
『ペディア、アガーべ、ここから入れ。結界を壊さぬよう穴を開けた』
「ありがとう」
「狼さん器用だね?」
『このくらい容易いことだ』
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる