記憶のカケラ

ストーリー

異次元

ルアンによる《イビル·レイン》を浴びてペディアは意識を失った。リュカスによる力のおかげで街の外へ脱出し、フェインの持つ、いくつかの拠点の1つに行くために森を走った。

ペディアを連れてきた拠点は、今の季節に駐屯する場所である。ルアンに主にしている拠点を知られることを避けるため、ほとんど使うことがなくなった拠点の場所へと向かうことにしたのだった。


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｢……ぅ…クッ………｣

ペディアは左腕の鋭い痛みを感じて目を覚ました。見ると、アガーべと契約した契約紋が朱く光っている。

｢……また、色が変わってる｣

そう呟きながら、周囲を確認する。……ここどこ？　ペディアは思わずそう思った。

見慣れているような、そうでないような部屋。窓際には小さな鉢に植えられた白い花が咲き、灰色を基調とした部屋とベッドがあった。

『ファレノプシス、大丈夫？』

優しく、透き通るような声が背後から聞こえ、振り向くと、ペディアに似た女性が立っていた。いつだったかの夢で見た、ペディアの母親らしき人。

彼女は一直線にベッドへと向かう。ペディアの存在には気づいて居ないらしかった。

『ママ……苦しい…』

『ごめんね…。何もしてやれなくて……』

ほとんど掠れた幼い声と嘆くように謝る彼女だった。

ペディアがベッドに近づくと、黒髪をした小さな頭が見えた。ほとんど掛け布団を被っているらしく、埋もれた顔を見ることは出来なかったが、黒い靄もやがベッドを中心に広がっていた。


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ベッドにまとわりつく靄もやの正体を知るために注意深く見ようとすると、場面が変わり、見慣れた家の庭を部屋から見ていた。窓際に白い花が咲いている。ペディアが気がついた部屋から移動はしてないようだ。

視線の位置がかなり低くなっている。誰の目線だろう？

『ペディア、こっちにおいで。良いものをやろう』

ペディアの知る父の若い姿だった。部屋から見ているため、声が小さくなって聞こえてくる。庭のベンチに座り、手招きをしていた。

『パパー！』

幼いペディアが父に目掛けて全力疾走する。それに合わせて父が幼いペディアを抱き上げ、膝の上に載せた。

『ほら、開けてごらん。お前には少し早いかもしれないが……、お前の身を護ってくれるだろう』

幼いペディアの手には、手のひら大の手触りの良い箱が載せられた。少し開け方に少し苦戦しながら出てきたものは、白色の蝶々のピアスだった。

『うわぁ……きれい…』

──あれ…

幼いペディアが感動している手元に載るものは、部屋ここからでも見える。ペディアも同じものを両耳に付けているため、思わず手を耳に触れた。しかし、手の感触では、片耳しか開けておらず、雫しずくのような形をしていた。

『少し大人っぽいものを選んだから、気に入らないかもしれないけど……』

『パパ、大好き！』

父が全てを言い終わらないうちに、幼いペディアは父に抱きつく。

ペディアはその2人の姿を見て微笑ましいと思った。が、見ている視点が揺らいだ。気がつけばペディア自身の体に戻り、視点は高くなった。

｢……誰？｣

ベッドに入っていた幼い誰かということだけは分かる。黒髪に青い目をした、色白の女の子。その周囲には黒い靄もやをまとっている。

『……お姉ちゃん、見せものじゃないよ。帰って』

掠れた幼い声は、明らかにペディアのことを認識しているようだった。そして、知らない存在に警戒しているようでもあった。

｢あ……｣


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