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第8話
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その日の夜。重い空気に満たされた自室で毎度の如く睡魔に襲われていた九時辺りに盛大な着信で目を覚ました。全てメッセージで終わらせる斗真が送ってくるわけもなく、予想通りあの名前が表示されていた。
「…はい。桜さん……?」
『あ、日向ちゃん?ごめんね今日は一緒に帰れなくて…』
一緒に…とはいうものの、正門抜けたら真逆の方向に向かうお互いなので別に謝るような事はない。寧ろこちらが頭を下げなければならない。
「あの…桜さん。お願いがあるんですが…」
『ん?なーに?』
自分からあんな事言っておきながら『余り学校で関わらないで下さい』なんて、おこがましい事この上ないと分かっていながら恐る恐る口を開いた。
『……何か、あったの?』
嫌だ。思い出したくもない事実だ。それでも仕方ないと自己暗示を繰り返して一連を伝えた。理由にはなっていると信じたい。しかし桜さんが切り返す言葉が現在進行形で襲いくる眠気を破壊するには充分だった。
『んー、嫌だ!』
「ちょっ…なっ…どうしてですか⁉︎」
『だって私はどこでも日向ちゃんと……』
一緒に居たい。それは僕だって同じだ。
その他が邪魔をするという理由に納得したわけではない。この頼みはその場しのぎである、そう思いたかった。
『私は日向ちゃんと…イチャイチャしたいから。』
全く。全くもって、いい場面を壊すのが上手い人だ。
普通に話したい、仲良くしたい、それだけだ。別にそんなスキンシップを求めているわけでは無い…と言えば嘘になるが。
『だから、ね?日向ちゃんはなにも気にしなくていいんだよ。周りとか、関係ない。そうでしょ?』
本当に、そうだ。でも、それでも気にしてしまう。周りの発言は愚か、思考までも深読みして怯えているだけの救いようのない僕は『気にしない』事が出来るだろうか。
『それで、電話した理由なんだけど…明日、一緒にお買い物行かない?』
思考を一気に解放した気分だった。会話のレベルが一気に下がりきったせいだろうか、ものすごく和んだ気がした。
「明日…ですか?別に大丈夫ですけど…」
『ほんと⁉︎じゃあ詳しい時間とかはメッセージで教えるね‼︎』
特に用事があるわけでも無ければ、課題はかなりフライングして終わらせてあった。別に遊びに行ったって誰も咎めたりしないだろう。
暫し談笑した後、少し気分が晴れたのでリビングルームへ向かって冷蔵庫から炭酸飲料を取り出し、コップへ注いでソファに腰掛けた。
始まってから十分経ったドラマを眺めながら少しずつ炭酸飲料を飲んでいった。その最中、背後に妹が居ることに気がつかなかった。
「…お姉ちゃん彼氏でも出来たの?」
ははっ…やめてくれないかな、お姉ちゃん炭酸吹き出しちゃったじゃん。
「んなっなななにわけわかんないこと言って…‼︎」
ああ、もうダメだ。すごい簡単に弱み握ったって分かる顔をしている。それに間違って伝わってしまっている事が一番たちが悪い。いや、そうでもないか。彼女が出来たなんて言おうものなら妹であろうと引かれるのは目に見えている。それなら今はこのまま…
「え、まさか斗真さん?」
このまま、置いててたまるか。なんという思考回路をしているんだこの子は。
「違うから‼︎別にそんなの無いから‼︎」
ほんとこういう状況ってどう弁明しても余計怪しくなるんだなと痛感した。そんな状況で無いことも重々承知である。
とりあえず明日、めんどくさいタイプのクラスメイトと出会わないように心がけようと考えながら妹を部屋へ追い返した。
「…はい。桜さん……?」
『あ、日向ちゃん?ごめんね今日は一緒に帰れなくて…』
一緒に…とはいうものの、正門抜けたら真逆の方向に向かうお互いなので別に謝るような事はない。寧ろこちらが頭を下げなければならない。
「あの…桜さん。お願いがあるんですが…」
『ん?なーに?』
自分からあんな事言っておきながら『余り学校で関わらないで下さい』なんて、おこがましい事この上ないと分かっていながら恐る恐る口を開いた。
『……何か、あったの?』
嫌だ。思い出したくもない事実だ。それでも仕方ないと自己暗示を繰り返して一連を伝えた。理由にはなっていると信じたい。しかし桜さんが切り返す言葉が現在進行形で襲いくる眠気を破壊するには充分だった。
『んー、嫌だ!』
「ちょっ…なっ…どうしてですか⁉︎」
『だって私はどこでも日向ちゃんと……』
一緒に居たい。それは僕だって同じだ。
その他が邪魔をするという理由に納得したわけではない。この頼みはその場しのぎである、そう思いたかった。
『私は日向ちゃんと…イチャイチャしたいから。』
全く。全くもって、いい場面を壊すのが上手い人だ。
普通に話したい、仲良くしたい、それだけだ。別にそんなスキンシップを求めているわけでは無い…と言えば嘘になるが。
『だから、ね?日向ちゃんはなにも気にしなくていいんだよ。周りとか、関係ない。そうでしょ?』
本当に、そうだ。でも、それでも気にしてしまう。周りの発言は愚か、思考までも深読みして怯えているだけの救いようのない僕は『気にしない』事が出来るだろうか。
『それで、電話した理由なんだけど…明日、一緒にお買い物行かない?』
思考を一気に解放した気分だった。会話のレベルが一気に下がりきったせいだろうか、ものすごく和んだ気がした。
「明日…ですか?別に大丈夫ですけど…」
『ほんと⁉︎じゃあ詳しい時間とかはメッセージで教えるね‼︎』
特に用事があるわけでも無ければ、課題はかなりフライングして終わらせてあった。別に遊びに行ったって誰も咎めたりしないだろう。
暫し談笑した後、少し気分が晴れたのでリビングルームへ向かって冷蔵庫から炭酸飲料を取り出し、コップへ注いでソファに腰掛けた。
始まってから十分経ったドラマを眺めながら少しずつ炭酸飲料を飲んでいった。その最中、背後に妹が居ることに気がつかなかった。
「…お姉ちゃん彼氏でも出来たの?」
ははっ…やめてくれないかな、お姉ちゃん炭酸吹き出しちゃったじゃん。
「んなっなななにわけわかんないこと言って…‼︎」
ああ、もうダメだ。すごい簡単に弱み握ったって分かる顔をしている。それに間違って伝わってしまっている事が一番たちが悪い。いや、そうでもないか。彼女が出来たなんて言おうものなら妹であろうと引かれるのは目に見えている。それなら今はこのまま…
「え、まさか斗真さん?」
このまま、置いててたまるか。なんという思考回路をしているんだこの子は。
「違うから‼︎別にそんなの無いから‼︎」
ほんとこういう状況ってどう弁明しても余計怪しくなるんだなと痛感した。そんな状況で無いことも重々承知である。
とりあえず明日、めんどくさいタイプのクラスメイトと出会わないように心がけようと考えながら妹を部屋へ追い返した。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
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