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第18話
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まだ午前の方向に太陽がある時刻、帰り道に汗を垂らしながら自宅へと向かう。紫苑さんの『誰かが止めてくれるのを待っていた』という言葉は、かなり深く奥の方に突き刺さって抜けなくなっていた。
人間誰でも自傷行為の何処かに『救い』を求めているものである。それが救われるのを待ち続け、いつまでも保留を繰り返す。それが人間の一般的思考。
数日前、上を渡った白線の辺りに差し掛かったところで某コンビニエンスストアから登場した斗真に遭遇した。片手に握られた袋には『濃厚豚骨アルティメット』という文字が透けていた。くそっ。この時間にお腹減るものを見せやがって。
「豚骨……太ってしまえ…」
「運動してるから大丈夫だ。つかお前はなに体重なんか気にしてんだ。女子か。」
いや、謎に体重が増えやすいのもまた一つ悩みである。別に増えているわけじゃない、どちらかというと変動が激しいだけである。理由なんか、運動不足以外にないと思うけど。
「…いいか日向。このクソ暑い夏に食べるラーメンはな…何故か物凄い美味しいんだ。」
「やめてくれない?普通にお腹減るから………」
これ以上この場に居ると、腹の虫が騒ぎ出しそうだったので退散する事にした。手を腹部に当てて立ち去ろうともう片方の手を振り「さようなら」とジェスチャーをした。
「…どした。生理か?」
「もういい加減殴るぞお前。」
なんだこいつは。デリカシーのカケラもないのか。いや、僕が男という事実があるからこそのネタだったのかもしれない。趣味悪いなオイ。全国の現在進行形な方々に謝罪してきなさいと言いたいところだが、何を隠そう朝はあのダークマターしか口にしていないのである。10時だろうが空腹は訪れ———
「僕は今空腹と闘っているんだ!とりあえずそのカップ麺を隠せ!」
たかが空腹と言うだろう。ふざけるな。この空腹を体感していないから言えるのだ。とは言えないが、胃の中が空虚であることに変わりはない。
「…わーったよ。俺ん家来いよ。なんか作ってやるから…そっちの方が近いだろ?」
普通なら喜んで着いていきたいところではある。しかし、果たして斗真は料理が出来るのだろうか。過去を遡れば遡るほどただの脳筋である彼の姿しか想像できなかった。
「…斗真料理出来たの?」
「インスタントかレトルトなら作れるぞ。」
ダメな人だった。栄養の偏りなんてものじゃないだろう。一人暮らし始めて二ヶ月くらいで肝臓死にそうだなと不意に思ってしまった。まぁ、せっかくの誘いなので乗ることにしたが。幸い今日は優香も昼ご飯を作る気力がないはずなのでちょうど良いのではないだろうか。
「相変わらずきったないなぁ斗真の部屋…」
「うるせぇ。これが一番落ち着くんだよ。」
典型的な片付けられない人の言い訳みたいな台詞を吐いて台所へ向かった斗真を見届け、簡易的な造りの低い机の前に座った。
辺りを見回す限りロクな物は置いていなかったが、良くある『友達の部屋に遊びに来たときベッドの下を漁るイベント』を脳内で想像していた。なにを考えているんだ。そもそもそんな物見つけて何がしたいんだ。イベントの趣旨が全く掴めないまま座り込んで今朝の出来事を頭で整理していた。
「おぅら出来たぞカレーだ。」
急に開いた扉の先に二つの器を抱えた斗真が居た。内面的に男二人、レトルトカレーを囲む異様な光景が広かったが何を気にすることなく一口ずつ丁寧に口へ運んでいった。
「そういやラーメンはよかったの?」
「あぁ、あれ今日の夜食。ゲームのイベントあるからな。」
こうやって二人で落ち着くのも、かなり久しい感じがした。
人間誰でも自傷行為の何処かに『救い』を求めているものである。それが救われるのを待ち続け、いつまでも保留を繰り返す。それが人間の一般的思考。
数日前、上を渡った白線の辺りに差し掛かったところで某コンビニエンスストアから登場した斗真に遭遇した。片手に握られた袋には『濃厚豚骨アルティメット』という文字が透けていた。くそっ。この時間にお腹減るものを見せやがって。
「豚骨……太ってしまえ…」
「運動してるから大丈夫だ。つかお前はなに体重なんか気にしてんだ。女子か。」
いや、謎に体重が増えやすいのもまた一つ悩みである。別に増えているわけじゃない、どちらかというと変動が激しいだけである。理由なんか、運動不足以外にないと思うけど。
「…いいか日向。このクソ暑い夏に食べるラーメンはな…何故か物凄い美味しいんだ。」
「やめてくれない?普通にお腹減るから………」
これ以上この場に居ると、腹の虫が騒ぎ出しそうだったので退散する事にした。手を腹部に当てて立ち去ろうともう片方の手を振り「さようなら」とジェスチャーをした。
「…どした。生理か?」
「もういい加減殴るぞお前。」
なんだこいつは。デリカシーのカケラもないのか。いや、僕が男という事実があるからこそのネタだったのかもしれない。趣味悪いなオイ。全国の現在進行形な方々に謝罪してきなさいと言いたいところだが、何を隠そう朝はあのダークマターしか口にしていないのである。10時だろうが空腹は訪れ———
「僕は今空腹と闘っているんだ!とりあえずそのカップ麺を隠せ!」
たかが空腹と言うだろう。ふざけるな。この空腹を体感していないから言えるのだ。とは言えないが、胃の中が空虚であることに変わりはない。
「…わーったよ。俺ん家来いよ。なんか作ってやるから…そっちの方が近いだろ?」
普通なら喜んで着いていきたいところではある。しかし、果たして斗真は料理が出来るのだろうか。過去を遡れば遡るほどただの脳筋である彼の姿しか想像できなかった。
「…斗真料理出来たの?」
「インスタントかレトルトなら作れるぞ。」
ダメな人だった。栄養の偏りなんてものじゃないだろう。一人暮らし始めて二ヶ月くらいで肝臓死にそうだなと不意に思ってしまった。まぁ、せっかくの誘いなので乗ることにしたが。幸い今日は優香も昼ご飯を作る気力がないはずなのでちょうど良いのではないだろうか。
「相変わらずきったないなぁ斗真の部屋…」
「うるせぇ。これが一番落ち着くんだよ。」
典型的な片付けられない人の言い訳みたいな台詞を吐いて台所へ向かった斗真を見届け、簡易的な造りの低い机の前に座った。
辺りを見回す限りロクな物は置いていなかったが、良くある『友達の部屋に遊びに来たときベッドの下を漁るイベント』を脳内で想像していた。なにを考えているんだ。そもそもそんな物見つけて何がしたいんだ。イベントの趣旨が全く掴めないまま座り込んで今朝の出来事を頭で整理していた。
「おぅら出来たぞカレーだ。」
急に開いた扉の先に二つの器を抱えた斗真が居た。内面的に男二人、レトルトカレーを囲む異様な光景が広かったが何を気にすることなく一口ずつ丁寧に口へ運んでいった。
「そういやラーメンはよかったの?」
「あぁ、あれ今日の夜食。ゲームのイベントあるからな。」
こうやって二人で落ち着くのも、かなり久しい感じがした。
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