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第23話
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あの日を境に、3人で出掛けるようなことが増えた。いや、増えたのはいいのだが、この状況に納得がいかないのだ。日めくりカレンダーは8/31を示し、なんともありがちと言えるであろう展開が我が家の自室で勃発しているのだった。
「だからそこはaがこっちにかかって…」
「a…かける……とは?」
何故義務教育が行き届いていないのであろうか。多項式の展開くらいできて当然と思っていたのだが、眼前の光景では基本中の基本と言っても過言ではない問題が展開されようとしていた。
何故31日にこんなに残っているのかは大体予想がつくので良いとしよう。しかし、だ。
何故鳴上さんまで同じ課題を解いているのだろうか。教え合うという概念はこんな一方的だっただろうか。まあ、構わないのだがせめて計画を立てて取り組んでいただきたいものだと脱力した。
ありがちイベントと言われようと、始まってしまったものは仕方がない。しかしなにかと理由をつけて逃げようとする二人の友人に制御が効かないので、半ば諦め形態の現状である。
「御影ちゃん最近どうなの?うまくいってる?」
「順調だよ~。日向ちゃんとどんどん近づいてってるからね!」
確かに、日に日に距離感は詰められているような気はするが今そんなことを言っている場合ではないのは本人たちも分かっているだろう。
「あの…明日から登校だって分かってます…?」
「分かってるよ?」
じゃあ早く終わらせてくださいな。全くそう感じないんだよと心の中に留めるのだった。
1学期最後のあの日以来、登校するということに恐怖を抱くようになってしまったが、不思議と今なら耐えられる気がする。当然この二人や斗真の様にはいそうですかとならない人物は居るだろう。ていうかそれが大半を占めているだろう。
自問自答の繰り返しなのだが、彼女らの様な、どんな相手にも笑えさって接することが出来る人間と並ぶのはやはり怖いとは感じる。別に守ってもらえるなんて考えているわけではない。自分の場合だが、面と向かって蔑まれるより影で笑われていた方が辛い。いつその本音が直接飛んでくるのかわからない故、恐ろしさは増えるばかりな様で、世の中にはくると分かった攻撃の方が破壊力が上がる事柄もあるのだと、あるとき痛感した。
こんな雑談の妄想を繰り広げていた末、放心状態で最終ページの最終問に数字を書き込んだ彼女らは称賛の声を上げていた。
「やっと終わった…やっと終わったよ……」
「頭痛い…寝たい…」
倒れ込む二人に苦笑しつつ計算用の印刷紙に書き込んだ落書きに消しゴムを当てた。ベッドに上半身を乗せ、少し低い声を上げる御影ちゃんは同じ単語を何度も並べていた。
「疲れた…手痛い……はぁ…日向ちゃんの匂い…」
ちょっと色々マズイ発言が聞こえた様な気がしたのだが、気のせいだろうか。気のせいだと思おう。それが得策だと信じたい…
「いいなー御影ちゃん、私も彼氏欲しいなー」
「えへへ…いいよぉこれは…こんなにくっついても大丈夫なんだから…」
そういいながら此方によってくる御影ちゃんは膝をつき、カーペットに向かい僕押し倒す様な形に身体を動かした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎何してるんですかぁぁぁぁぁぁ‼︎」
小悪魔の様な笑み、先程までの疲れ切った瞳とは打って変わった表情でこちらを見つめていた。こんな状況下でさえ本気で可愛いとか思ってしまった自分自身を殴りたくなる。
「普通逆じゃないのそれ…でもいいなー2人とも。私もこんなの体験してみたいなー」
胡座を組んで笑う呑気な言葉は眼前の光景を止めようとする気配は全く感じられず、ただ純粋とは言い難いのだが純粋に近い何かの目で此方をみていた。
「ちょ…やめ…」
「いいじゃん?たまには立場逆転しても…」
右手を拘束された。もう既に逃げ場がほとんど滅んでしまったこの現状をどうやって打破すべきなのだろうか。
「たまには…って事はいつもこんな…意外と積極的だね日向ちゃんは…」
またあらぬ誤解を招いてしまっている。どうしてこう単純な人しかいないのだこの空間には。もう呆れというより畏怖を感じる迄にある。
「ほら…大人しくしてよ…」
あちら側も体力を消費している模様だが、余り荒っぽい事は出来ないので解決策がかなり絞られるのである。しかもこの脳は時間経過しか思いつかなかった。それ故にこの身を時の流れに委ねたのであった。
「お姉ちゃん、斗真さん来てるけ……ど…………」
「あ。」
押し倒される姉、押し倒す友、撮影する友、動揺する妹。
なんだこの修羅場は。本気でどうやって誤魔化せばいいんだ。
この後、悪ふざけの類だったと言い聞かせ、とんでもない形で中学生活最後の夏休みは幕を閉じた。
「だからそこはaがこっちにかかって…」
「a…かける……とは?」
何故義務教育が行き届いていないのであろうか。多項式の展開くらいできて当然と思っていたのだが、眼前の光景では基本中の基本と言っても過言ではない問題が展開されようとしていた。
何故31日にこんなに残っているのかは大体予想がつくので良いとしよう。しかし、だ。
何故鳴上さんまで同じ課題を解いているのだろうか。教え合うという概念はこんな一方的だっただろうか。まあ、構わないのだがせめて計画を立てて取り組んでいただきたいものだと脱力した。
ありがちイベントと言われようと、始まってしまったものは仕方がない。しかしなにかと理由をつけて逃げようとする二人の友人に制御が効かないので、半ば諦め形態の現状である。
「御影ちゃん最近どうなの?うまくいってる?」
「順調だよ~。日向ちゃんとどんどん近づいてってるからね!」
確かに、日に日に距離感は詰められているような気はするが今そんなことを言っている場合ではないのは本人たちも分かっているだろう。
「あの…明日から登校だって分かってます…?」
「分かってるよ?」
じゃあ早く終わらせてくださいな。全くそう感じないんだよと心の中に留めるのだった。
1学期最後のあの日以来、登校するということに恐怖を抱くようになってしまったが、不思議と今なら耐えられる気がする。当然この二人や斗真の様にはいそうですかとならない人物は居るだろう。ていうかそれが大半を占めているだろう。
自問自答の繰り返しなのだが、彼女らの様な、どんな相手にも笑えさって接することが出来る人間と並ぶのはやはり怖いとは感じる。別に守ってもらえるなんて考えているわけではない。自分の場合だが、面と向かって蔑まれるより影で笑われていた方が辛い。いつその本音が直接飛んでくるのかわからない故、恐ろしさは増えるばかりな様で、世の中にはくると分かった攻撃の方が破壊力が上がる事柄もあるのだと、あるとき痛感した。
こんな雑談の妄想を繰り広げていた末、放心状態で最終ページの最終問に数字を書き込んだ彼女らは称賛の声を上げていた。
「やっと終わった…やっと終わったよ……」
「頭痛い…寝たい…」
倒れ込む二人に苦笑しつつ計算用の印刷紙に書き込んだ落書きに消しゴムを当てた。ベッドに上半身を乗せ、少し低い声を上げる御影ちゃんは同じ単語を何度も並べていた。
「疲れた…手痛い……はぁ…日向ちゃんの匂い…」
ちょっと色々マズイ発言が聞こえた様な気がしたのだが、気のせいだろうか。気のせいだと思おう。それが得策だと信じたい…
「いいなー御影ちゃん、私も彼氏欲しいなー」
「えへへ…いいよぉこれは…こんなにくっついても大丈夫なんだから…」
そういいながら此方によってくる御影ちゃんは膝をつき、カーペットに向かい僕押し倒す様な形に身体を動かした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎何してるんですかぁぁぁぁぁぁ‼︎」
小悪魔の様な笑み、先程までの疲れ切った瞳とは打って変わった表情でこちらを見つめていた。こんな状況下でさえ本気で可愛いとか思ってしまった自分自身を殴りたくなる。
「普通逆じゃないのそれ…でもいいなー2人とも。私もこんなの体験してみたいなー」
胡座を組んで笑う呑気な言葉は眼前の光景を止めようとする気配は全く感じられず、ただ純粋とは言い難いのだが純粋に近い何かの目で此方をみていた。
「ちょ…やめ…」
「いいじゃん?たまには立場逆転しても…」
右手を拘束された。もう既に逃げ場がほとんど滅んでしまったこの現状をどうやって打破すべきなのだろうか。
「たまには…って事はいつもこんな…意外と積極的だね日向ちゃんは…」
またあらぬ誤解を招いてしまっている。どうしてこう単純な人しかいないのだこの空間には。もう呆れというより畏怖を感じる迄にある。
「ほら…大人しくしてよ…」
あちら側も体力を消費している模様だが、余り荒っぽい事は出来ないので解決策がかなり絞られるのである。しかもこの脳は時間経過しか思いつかなかった。それ故にこの身を時の流れに委ねたのであった。
「お姉ちゃん、斗真さん来てるけ……ど…………」
「あ。」
押し倒される姉、押し倒す友、撮影する友、動揺する妹。
なんだこの修羅場は。本気でどうやって誤魔化せばいいんだ。
この後、悪ふざけの類だったと言い聞かせ、とんでもない形で中学生活最後の夏休みは幕を閉じた。
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