24 / 30
第24話
しおりを挟む
不安を積もらせた心境はどれだけ経とうと変わる事はなく、微塵も涼しさなど感じないままこの日本は9月への突入を迎えたのである。
いつも通りに登校して醜態を晒せばいいのだと脳内を整理していつもの道に着く。いや、何一つ解決出来てないんだなこれが。いつも以上に頭が回らないのは久しい登校という点もあるだろう。ええ、それも充分に理由としては確立するのだが。いや、その他といっても暑さのせいでもない。
まあここまで言えば察しが付くであろう。月に一度の体内カーニバルである。午前授業のみで終わるとは言え、2ヶ月の間動かしていなかった身体が環境に適応しようと奮闘する日だというのに。これ以上考えても苦痛は増すばかりなので蒸し暑さに内心ブチ切れつつ脚を動かすのだった。
「…どしたの日向ちゃん。」
「察して…………」
机に突っ伏しホラーゲームから聞こえてきそうな声で返事をした。我ながら中々気持ち悪いと思う。まあ最近のホラゲはクオリティが上がりすぎて手をつける気になれないのだが…
はいはい、どうせビビリですよ…これ二回目な気がする。しかし悪いが今はそんな事を気にしている場合ではない。
全く、この妙な苛々とした感情はどこに持って行こうか。だいぶ前の件も兼ねて1発斗真を殴るべきなのだろうか。
「御影ちゃん…僕、斗真殴りたい………」
「それはやめとこうよ…」
珍しく正常な解答が返ってきた事に少々驚いたが、今日は普段以上にストレスがすごいのだ。もう帰ったらすぐ寝よう。
風景を目に入れようと上半身の向きを変えると、何故か汗ばんだワイシャツが目に映った。
「…紫苑さんいつから居たんですか⁉︎」
「いや、割と最初の方から居たけど…」
全く気付かなかった。いつもの存在感は一体どこにいったのだろうか…いや、反応が鈍っているだけなのか。いつも通りの表情と声色で佇んでいた紫苑さんはこちらと目線の高さを同じ位置に蹲み込んできた。その過程で突っ込まざるを得ないものが見えたのだが、見間違いだと本気で申し訳ないので敢えて口は出さなかった。これは幻覚とかそういう類かもしれないから黙っておこう。
「紫苑ちゃん…」
さらに寝返りを打つと無言で自分の胸元を指差す御影ちゃんの姿が。やはり見間違いではなかったようだ。ていうか見てしまったことが申し訳ない。再び顔の向きを戻すと、その光景には律儀に色まではっきりと見えたものが映り込んでいた。ていうか、なんか普通にでかい。踊ってるときはそんなに気にしなかったのに今改めて見ると全身通してモデル的な存在に紛れていても違和感ないほどである。
「ん、ああほんとだ。まぁいいか、そんなに目立たないでしょこの色なら…」
「いや目立つよ‼︎理由は敢えて言わないけど普通に目立ってるよ‼︎」
普段突っ込まれる側の御影ちゃんがツッコミに徹底している。ものすごく珍しい光景だなこれ。それに紫苑さんは天然とかそういう次元じゃない気がするのだが。
あと、別にツッコミと言ってもそういうアレではないのであしからず…何言ってんだ僕は。カーニバルのせいで思考回路までおかしくなっているのだろうか。
ここ一ヶ月程の感覚では、こんな生活ばかりをしていると自分の悩みを忘れそうになる。早くも帰路に並んだ僕らは部活へ向かった斗真を置き去りに横断歩道を渡っていた。
「そういえば、紫苑ちゃん今日はいいの?」
「実は…あの教室勝手に使ってたせいで使用禁止令でちゃって…」
苦笑を見せたが、彼女は「まあ3人で帰れるならそっちを選んじゃうかな」と言って無垢な笑顔へ顔を変えた。
「まあ今日は早く帰った方がいいよね、日向ちゃんこんなだし…」
「僕はお気になさらず…」
もうまともに会話をすることすら難しくなっているのだろうか。行き場を失った苛立ちは一周回って菩薩の類に近い何かに変わり、悟りを開きかけていた。
「やっぱ日向ちゃんも来るんだね。普通にそういうの考えてないと思ってたけど…」
「まあ日向ちゃん毎月こんな感じだからね~」
もう毎月おかしくなると分かっているらしい。黒歴史を作るその前に終わらないかななんて考えるも、今は帰宅したい気持ちが最優先だ。
「すいません限界っぽいんでそろそろ帰ります。」
一礼を置いて無理のない小走りで自宅へ脚を動かした。こうして中学生活最後の二学期を最悪な形で迎えたのであった。
「…なにあれ小動物?なんかすごい可愛い……」
「すごいわかるよ御影ちゃん。日向ちゃんって小動物みあるよね。なんか…ハムスター?」
こんな会話をしている事は微塵も知らない八雲日向は自宅に辿り着く為、必死に小走りを続けていた。
「ハムスターなのかな…子犬ってよりは子猫って感じだけど…」
「まあ齧歯類って感じではないかな…振り回されるタイプだろうし…」
一方日向は自宅の玄関で安堵を唱えていた
いつも通りに登校して醜態を晒せばいいのだと脳内を整理していつもの道に着く。いや、何一つ解決出来てないんだなこれが。いつも以上に頭が回らないのは久しい登校という点もあるだろう。ええ、それも充分に理由としては確立するのだが。いや、その他といっても暑さのせいでもない。
まあここまで言えば察しが付くであろう。月に一度の体内カーニバルである。午前授業のみで終わるとは言え、2ヶ月の間動かしていなかった身体が環境に適応しようと奮闘する日だというのに。これ以上考えても苦痛は増すばかりなので蒸し暑さに内心ブチ切れつつ脚を動かすのだった。
「…どしたの日向ちゃん。」
「察して…………」
机に突っ伏しホラーゲームから聞こえてきそうな声で返事をした。我ながら中々気持ち悪いと思う。まあ最近のホラゲはクオリティが上がりすぎて手をつける気になれないのだが…
はいはい、どうせビビリですよ…これ二回目な気がする。しかし悪いが今はそんな事を気にしている場合ではない。
全く、この妙な苛々とした感情はどこに持って行こうか。だいぶ前の件も兼ねて1発斗真を殴るべきなのだろうか。
「御影ちゃん…僕、斗真殴りたい………」
「それはやめとこうよ…」
珍しく正常な解答が返ってきた事に少々驚いたが、今日は普段以上にストレスがすごいのだ。もう帰ったらすぐ寝よう。
風景を目に入れようと上半身の向きを変えると、何故か汗ばんだワイシャツが目に映った。
「…紫苑さんいつから居たんですか⁉︎」
「いや、割と最初の方から居たけど…」
全く気付かなかった。いつもの存在感は一体どこにいったのだろうか…いや、反応が鈍っているだけなのか。いつも通りの表情と声色で佇んでいた紫苑さんはこちらと目線の高さを同じ位置に蹲み込んできた。その過程で突っ込まざるを得ないものが見えたのだが、見間違いだと本気で申し訳ないので敢えて口は出さなかった。これは幻覚とかそういう類かもしれないから黙っておこう。
「紫苑ちゃん…」
さらに寝返りを打つと無言で自分の胸元を指差す御影ちゃんの姿が。やはり見間違いではなかったようだ。ていうか見てしまったことが申し訳ない。再び顔の向きを戻すと、その光景には律儀に色まではっきりと見えたものが映り込んでいた。ていうか、なんか普通にでかい。踊ってるときはそんなに気にしなかったのに今改めて見ると全身通してモデル的な存在に紛れていても違和感ないほどである。
「ん、ああほんとだ。まぁいいか、そんなに目立たないでしょこの色なら…」
「いや目立つよ‼︎理由は敢えて言わないけど普通に目立ってるよ‼︎」
普段突っ込まれる側の御影ちゃんがツッコミに徹底している。ものすごく珍しい光景だなこれ。それに紫苑さんは天然とかそういう次元じゃない気がするのだが。
あと、別にツッコミと言ってもそういうアレではないのであしからず…何言ってんだ僕は。カーニバルのせいで思考回路までおかしくなっているのだろうか。
ここ一ヶ月程の感覚では、こんな生活ばかりをしていると自分の悩みを忘れそうになる。早くも帰路に並んだ僕らは部活へ向かった斗真を置き去りに横断歩道を渡っていた。
「そういえば、紫苑ちゃん今日はいいの?」
「実は…あの教室勝手に使ってたせいで使用禁止令でちゃって…」
苦笑を見せたが、彼女は「まあ3人で帰れるならそっちを選んじゃうかな」と言って無垢な笑顔へ顔を変えた。
「まあ今日は早く帰った方がいいよね、日向ちゃんこんなだし…」
「僕はお気になさらず…」
もうまともに会話をすることすら難しくなっているのだろうか。行き場を失った苛立ちは一周回って菩薩の類に近い何かに変わり、悟りを開きかけていた。
「やっぱ日向ちゃんも来るんだね。普通にそういうの考えてないと思ってたけど…」
「まあ日向ちゃん毎月こんな感じだからね~」
もう毎月おかしくなると分かっているらしい。黒歴史を作るその前に終わらないかななんて考えるも、今は帰宅したい気持ちが最優先だ。
「すいません限界っぽいんでそろそろ帰ります。」
一礼を置いて無理のない小走りで自宅へ脚を動かした。こうして中学生活最後の二学期を最悪な形で迎えたのであった。
「…なにあれ小動物?なんかすごい可愛い……」
「すごいわかるよ御影ちゃん。日向ちゃんって小動物みあるよね。なんか…ハムスター?」
こんな会話をしている事は微塵も知らない八雲日向は自宅に辿り着く為、必死に小走りを続けていた。
「ハムスターなのかな…子犬ってよりは子猫って感じだけど…」
「まあ齧歯類って感じではないかな…振り回されるタイプだろうし…」
一方日向は自宅の玄関で安堵を唱えていた
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる