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第2部
第1話 交わる平穏
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DR解体騒動から一ヶ月の時が経った。
ベルゼブルが掲げた人間と悪魔の共存については、大方良い方向へと進んでいると感じられる。なによりも、DRに矛先を向けるという行動が重なった故に人間と悪魔の溝が少し狭まったのではないだろうか。
獄の最下層近くにて。ただ一途に、己が理想としている世界への実現を目指して脚を急がせる姿があった。
ベルゼブルは、あの会見があった日から延々と仕事に追われている。メディアに追われる身ながら、政策を進めているのだから無理もない。
まず、政策に関しては人間側の主張と悪魔側の主張を合意させ、両者の上に立つということが求められた。
羽島に対して、貴様の考え方は人類の総意でないと語った身ながらも、少数派を切り捨てなければ成り立たない世間に身を乗り出している。そんな矛盾に苛まれながらも、仕方なしとため息を残すばかりだった。
ふと、視界にとある姿が映る。この獄の最下層に位置する場にいるような輩は、限られるわけだが。
「随分と好き勝手やってるな、ベル」
右手の指でグラスを弄びながら、頬杖をついてこちらに言葉を飛ばす。小さく羽を畳んで脚をばたばたとさせる様子を見せていたのは、三代支配者がひとりアスタロトである。
彼女は、グラス内の赤い液体を少しずつ喉の奥に流し込んで頬の色を濃くする。人間の世界ではまだ陽が顔を見せているというのに、随分と早い時間からの飲酒だ。
「俺だって、やりたくてやってんじゃねえ。ただ、やらねえとまた同じことが起こるからな」
「そうか。だが、そう簡単に我々を統率できると思うなよ。多種多様に、同一個体など居ないのだから」
「あぁ。んなこた分かってる」
右側の壁にもたれかかり、その声を一蹴する。腕を組んで目を瞑り、いつの間にか睡眠欲との闘いに突入する。
「しかしまぁ、あまり目立ったことはしない方がいい。ルシファーも既に認知しているだろうが、結果的な最終論は奴が出すのだから」
三代支配者といえども、その内にもしっかりと序列は決定している。結果的にルシファーという存在には、手が届かないのだ。
「どっちのサイドに原因があろうと、繋がっちまった世界はどうにもならねえ。だったら中立させちまうのが一番楽だ。戦争なんて事になったらめんどくせえからな」
日々の過労で朦朧とする意識の中で、強引に会話を成立させる。彼女は相変わらず、どこで作られたなんの種なのかも分からない酒を少しずつ飲み進めるばかりだった。
「睡魔か?それならば一杯どうだ」
「毎度毎度、お前の言葉は意味不明すぎる」
「そうかい……あぁ、そういえば、サルガタナスを見なかったか?」
サルガタナスは、透明化や瞬間移動と多様な能力を持つ存在であり、アスタロト支配下の一人である。そんな能力を持つ彼女がどこにいようと、呼び出しにはすぐに答える筈だが……
「いや、知らん。つーか、俺ちょっと休むわ」
延々とグラスを傾けることを止めない酒乱をその場に置き去りにして、少しばかり休息を求めて踵を返した。
快晴。しかしそれながらも、冬の大気は不安定なようで木枯らしが吹き荒れるばかりだった。
「なぁトウヤ、野菜ばっか買って何するつもりだ」
「今日は3課みんなで鍋だ。マモンも呼ぶぞ」
「はぁ?なんでアイツも来るんだよ」
不満を垂れるベリアルが背後から言葉を投げかける。正直、コイツよりもマモンの方が常識があるのでベリアルがこんなこと言える立場ではないと思うのだが。
「で、肉は」
「もう買ってあるから大丈夫だ。浦矢が調達してくれてる」
久しく、3課のメンバーで夕飯を食おうということになった今日この頃。主にベリアルを養うという点においての金欠が続いていたので、なんとか節約しつつ贅沢ができそうなイベントが開かれるというのはなんとも嬉しい限りだ。
「あー、腹減ってきたな。コア食ってた頃も良かったけど、こっちの食いもんも美味くて憎めねえ」
「お前の食費俺の給料から出てんだからな?」
皮肉混じりのツッコミに、当然反応してくれるはずもない。いつか思い知らせてやりたいものだ。
「……あぁ?」
ふと、ベリアルが視界の先にとあるものを発見する。人間の肉眼では見えていないので、恐らくかなり先での出来事かと思われる。
ベリアルの進むまま、それについていくように一直線を歩く。すると、ベリアルが発見したものの正体がしっかりと目に写っていたのだ。
「ねぇーお願い‼︎行こう⁉︎ねぇ‼︎」
「いや……私はこういう店はちょっと……」
「よっ……用事が……あるので……」
そこに存在していた光景は、なんとも奇妙なものだった。6柱の大将サタナキアが、宰相であるルキフグと旅団長であるサルガタナスの両腕を掴んで、双方が引っ張り合っていたのだ。
「お前ら何してんだ?」
「え⁉︎なに⁉︎もっかい言って……ってベリアル?何してんのこんなとこで」
「それオレ様のセリフだぜ」
サタナキアはベリアルとの会話に発展したというのに、依然彼女らを引っ張る強さは全く弱まらないらしい。というか、本当に何をしているのだろうか。
「あのね、ここの店のスイーツ食べ放題‼︎一人だと寂しいからみんなで行こうって言ってるのにね‼︎」
「いや、私は甘いものは好まないのだが……」
ルキフグが、割と迷惑そうな顔で引き気味に答える。確かに甘いものというのは人によって好みが変わるものなので、一意見としては通っているのでは無いだろうか。
サタナキアの手は、未だに力を緩める気はないらしい。
「私はこういう店合いませんから……」
サルガタナスも続き、意見を述べる。幼い見た目をしている割には、謙虚な性格なのだなという印象を受ける。白い大きな帽子が、サタナキアとの綱引きによって今にも落ちそうになっていた。
「……マモンとか誘ったら?アイツ甘いものめちゃくちゃ好きだし」
「いやー、ここ女の子限定なんだよ。えーと……」
「トウヤ」
「そうそう、トウヤくん」
いや、まあ面識はほぼ無いので仕方ないとは思うが、この問われ方だと完全に忘れられてたみたいな対応で少し落ち込む。
「とりあえず店の前は迷惑だからやめとけよ」
「トウヤの言う通りだ、大将」
ルキフグさんは普通に名前を覚えてくれていた。ベリアルの状態以外で出会った唯一の6柱なので、正直覚えてもらえてなかったらどうしようかとも思ったが。
「うー、スイーツぅ……もういいもん、今度アスタロト様誘っていくもん……あ、美味しい」
「アスタロト様は酒以外興味なさそうだが……」
結果の妥協として、近場のカフェにてチョコレートパフェのやけ食いを起こすサタナキア。かなりの重量に合わせてかなり糖質も付き纏ってきそうだが、果たして彼女らにそういった概念はあるのだろうか。
「ルキフグ、お砂糖とって」
「あぁ。使いすぎるなよ」
サルガタナスは頷き、ルキフグから砂糖の瓶を受け取ると、瓶の中から角砂糖を六つ取り出してコーヒーの中に溶かし始めた。
「お前、案外甘いもの好きなんじゃないのか」
「コーヒーは甘いのが好きですけど、クリームとかフルーツは胃が重たくなるから……」
何気ないこんな会話も、完全に甘味によって思考を支配されたサタナキアの耳には届かない。漏れ出した甘い香りが、その場にいる全ての者の鼻腔を撫でていた。
ベルゼブルが掲げた人間と悪魔の共存については、大方良い方向へと進んでいると感じられる。なによりも、DRに矛先を向けるという行動が重なった故に人間と悪魔の溝が少し狭まったのではないだろうか。
獄の最下層近くにて。ただ一途に、己が理想としている世界への実現を目指して脚を急がせる姿があった。
ベルゼブルは、あの会見があった日から延々と仕事に追われている。メディアに追われる身ながら、政策を進めているのだから無理もない。
まず、政策に関しては人間側の主張と悪魔側の主張を合意させ、両者の上に立つということが求められた。
羽島に対して、貴様の考え方は人類の総意でないと語った身ながらも、少数派を切り捨てなければ成り立たない世間に身を乗り出している。そんな矛盾に苛まれながらも、仕方なしとため息を残すばかりだった。
ふと、視界にとある姿が映る。この獄の最下層に位置する場にいるような輩は、限られるわけだが。
「随分と好き勝手やってるな、ベル」
右手の指でグラスを弄びながら、頬杖をついてこちらに言葉を飛ばす。小さく羽を畳んで脚をばたばたとさせる様子を見せていたのは、三代支配者がひとりアスタロトである。
彼女は、グラス内の赤い液体を少しずつ喉の奥に流し込んで頬の色を濃くする。人間の世界ではまだ陽が顔を見せているというのに、随分と早い時間からの飲酒だ。
「俺だって、やりたくてやってんじゃねえ。ただ、やらねえとまた同じことが起こるからな」
「そうか。だが、そう簡単に我々を統率できると思うなよ。多種多様に、同一個体など居ないのだから」
「あぁ。んなこた分かってる」
右側の壁にもたれかかり、その声を一蹴する。腕を組んで目を瞑り、いつの間にか睡眠欲との闘いに突入する。
「しかしまぁ、あまり目立ったことはしない方がいい。ルシファーも既に認知しているだろうが、結果的な最終論は奴が出すのだから」
三代支配者といえども、その内にもしっかりと序列は決定している。結果的にルシファーという存在には、手が届かないのだ。
「どっちのサイドに原因があろうと、繋がっちまった世界はどうにもならねえ。だったら中立させちまうのが一番楽だ。戦争なんて事になったらめんどくせえからな」
日々の過労で朦朧とする意識の中で、強引に会話を成立させる。彼女は相変わらず、どこで作られたなんの種なのかも分からない酒を少しずつ飲み進めるばかりだった。
「睡魔か?それならば一杯どうだ」
「毎度毎度、お前の言葉は意味不明すぎる」
「そうかい……あぁ、そういえば、サルガタナスを見なかったか?」
サルガタナスは、透明化や瞬間移動と多様な能力を持つ存在であり、アスタロト支配下の一人である。そんな能力を持つ彼女がどこにいようと、呼び出しにはすぐに答える筈だが……
「いや、知らん。つーか、俺ちょっと休むわ」
延々とグラスを傾けることを止めない酒乱をその場に置き去りにして、少しばかり休息を求めて踵を返した。
快晴。しかしそれながらも、冬の大気は不安定なようで木枯らしが吹き荒れるばかりだった。
「なぁトウヤ、野菜ばっか買って何するつもりだ」
「今日は3課みんなで鍋だ。マモンも呼ぶぞ」
「はぁ?なんでアイツも来るんだよ」
不満を垂れるベリアルが背後から言葉を投げかける。正直、コイツよりもマモンの方が常識があるのでベリアルがこんなこと言える立場ではないと思うのだが。
「で、肉は」
「もう買ってあるから大丈夫だ。浦矢が調達してくれてる」
久しく、3課のメンバーで夕飯を食おうということになった今日この頃。主にベリアルを養うという点においての金欠が続いていたので、なんとか節約しつつ贅沢ができそうなイベントが開かれるというのはなんとも嬉しい限りだ。
「あー、腹減ってきたな。コア食ってた頃も良かったけど、こっちの食いもんも美味くて憎めねえ」
「お前の食費俺の給料から出てんだからな?」
皮肉混じりのツッコミに、当然反応してくれるはずもない。いつか思い知らせてやりたいものだ。
「……あぁ?」
ふと、ベリアルが視界の先にとあるものを発見する。人間の肉眼では見えていないので、恐らくかなり先での出来事かと思われる。
ベリアルの進むまま、それについていくように一直線を歩く。すると、ベリアルが発見したものの正体がしっかりと目に写っていたのだ。
「ねぇーお願い‼︎行こう⁉︎ねぇ‼︎」
「いや……私はこういう店はちょっと……」
「よっ……用事が……あるので……」
そこに存在していた光景は、なんとも奇妙なものだった。6柱の大将サタナキアが、宰相であるルキフグと旅団長であるサルガタナスの両腕を掴んで、双方が引っ張り合っていたのだ。
「お前ら何してんだ?」
「え⁉︎なに⁉︎もっかい言って……ってベリアル?何してんのこんなとこで」
「それオレ様のセリフだぜ」
サタナキアはベリアルとの会話に発展したというのに、依然彼女らを引っ張る強さは全く弱まらないらしい。というか、本当に何をしているのだろうか。
「あのね、ここの店のスイーツ食べ放題‼︎一人だと寂しいからみんなで行こうって言ってるのにね‼︎」
「いや、私は甘いものは好まないのだが……」
ルキフグが、割と迷惑そうな顔で引き気味に答える。確かに甘いものというのは人によって好みが変わるものなので、一意見としては通っているのでは無いだろうか。
サタナキアの手は、未だに力を緩める気はないらしい。
「私はこういう店合いませんから……」
サルガタナスも続き、意見を述べる。幼い見た目をしている割には、謙虚な性格なのだなという印象を受ける。白い大きな帽子が、サタナキアとの綱引きによって今にも落ちそうになっていた。
「……マモンとか誘ったら?アイツ甘いものめちゃくちゃ好きだし」
「いやー、ここ女の子限定なんだよ。えーと……」
「トウヤ」
「そうそう、トウヤくん」
いや、まあ面識はほぼ無いので仕方ないとは思うが、この問われ方だと完全に忘れられてたみたいな対応で少し落ち込む。
「とりあえず店の前は迷惑だからやめとけよ」
「トウヤの言う通りだ、大将」
ルキフグさんは普通に名前を覚えてくれていた。ベリアルの状態以外で出会った唯一の6柱なので、正直覚えてもらえてなかったらどうしようかとも思ったが。
「うー、スイーツぅ……もういいもん、今度アスタロト様誘っていくもん……あ、美味しい」
「アスタロト様は酒以外興味なさそうだが……」
結果の妥協として、近場のカフェにてチョコレートパフェのやけ食いを起こすサタナキア。かなりの重量に合わせてかなり糖質も付き纏ってきそうだが、果たして彼女らにそういった概念はあるのだろうか。
「ルキフグ、お砂糖とって」
「あぁ。使いすぎるなよ」
サルガタナスは頷き、ルキフグから砂糖の瓶を受け取ると、瓶の中から角砂糖を六つ取り出してコーヒーの中に溶かし始めた。
「お前、案外甘いもの好きなんじゃないのか」
「コーヒーは甘いのが好きですけど、クリームとかフルーツは胃が重たくなるから……」
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