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第8話 angry⇆sweets
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オーディション終了後の撮影から3日。合法的な情報流出により学園中の晒し者になった我々Tri clap一同は、内心面倒くさいなと感じる視線を浴びている。
「宮古ぉ…こういうのって慣れるの…?」
「それは蕣次第。くまいろーだって多分大丈夫だから早く慣れなさい」
「うえぇ…」
嗚咽を漏らすがやはり仕方ないというより面倒が勝っている。ここ数日、ひそひそと聞こえる『Quartetto』だとか『ライブ』だとかの単語がノイローゼになるほど耳に出入りしていた。
「しっかしもう3ヶ月かぁ…早いねえ時の流れは…」
「ほんとにねぇ…んぉ?」
人気のないその一角に向かう頃、眼前には目に入れたくもない人物が立っていた。一方的被害者の私は気だるさを顔に出してしまうのも仕方がない。
「へえ。変わったねぇ七海…」
「…なに?誰?」
しかし、口にも出したくない様な人物である。説明したくもないものだが。
「せっかく七海に罪なすりつけて逃げよーと思ってたのになんかバレちゃってさ。2週間も休んじゃったよー…ねぇ?」
何故此方に非がある感じになっているのだろうか。全く無関係の人間が巻き込まれただけなのだが。
「文化祭には行ったよ、いや、まあまあ面白かったって。『あの七海』があんな事して…」
「おい」
発言を遮る声、宮古の喉から発せられたと理解するまで数秒を要する、初めて聞く彼女の声。
「なんで……あんな事しやがった……?」
「んぁ……ああ?だってさ、七海は頼まれたらなんでもする様な奴だぜ?あの日もなんか頼まれて学校残ってたの知ってたからさ…誰かに頼まれて股開いたんじゃねぇの?」
「てめっ…ふッざけん」
拳に力を入れている様子はすぐに分かる。表情は私の知っているそれとは似て非なるものだった。
「もういいよ、行こう宮古」
袖を掴み精一杯で自分の元に引き戻す。自分の軟弱な力では何もできないと分かっていたが、自己をそうでないと肯定するその感情という名付けるなら罪悪感とでも呼ばれそうなものが右腕に加担していた。
「…反省、だな。私は今後に関わる問題を起こそうとしてた…」
「なに言ってんの…?宮古が居なかったらもっと面倒なことになってたって」
ガラス張りの視界に、見下ろす景色は通り過ぎる自動車ばかり。風も吹かぬのか動かない雲となんの目的で作られたのかも分からない小さなビル群が埋め尽くす世界は、心情を良く変えてくれるものではなかった。
「ま、世界に顔晒すっつーのはああいうのを引き寄せるって事でもあるんだ。面倒だけど仕方ないんだよ…」
「大丈夫かな、いろはちゃん」
「こんな時にも他人の心配ねえ。ま、蕣らしいっちゃそうか。ほら、初めて会った頃みたいになってんぞ」
初めて会った時。正直、あの人物が介入しなければ無い現状であるというのも皮肉めいた話だが、この頃の私という存在が存在できるのもそういった事なのかもしれない。
「はぁ…じゃあもういいよ。帰りに駅前のスイーツ食べ放題に行こう。私の奢りだ」
「ふぉんふぉひぃふぇ!ふぁふぃふぁふぉふぃわぁほふ…」
「ああもう…食ってから喋れよ。あの時の卵焼きとおんなじ光景じゃ…」
普通に卵焼きの話を持ち出したが、結構記憶に新しい「あの件」が絡んでいると思い出して瞬時に言葉を仕舞い込む。幸い食べるのに夢中な蕣の耳には届いていなかったらしい。
「しっかしよく食うなぁ蕣」
「んぐっ…食べ放題なんだから食べないと損だよ⁉︎ほら宮古も…」
「あんまり食って太るなよー?」
「ゔっ…」
何か心当たりがあるようだ。まあ、眼前に構える皿の塔が全てを物語っている訳だが。
微笑ましい食べっぷりに、出来事も忘れたのだろうと微笑をこぼしてタルトを頬張る。 蕣の言う事も分かるほど美味しかった訳だが、正直そこまで沢山を食べることはできない甘さだった。
「まあ、出だしにしては好調なんじゃ無いだろうか?初仕事が地上波なんて…」
「教育番組…ですか。まあ、彼女たちなら快く受けるでしょうね」
「テレビ⁉︎」
「嘘でしょ…まだあの雑誌も出てないのに…」
「安心しなさい。放送される頃には発売してるから」
Quartetto社内で伝えられたその言葉に耳を疑うばかりだが、地上波への出演が決定したらしい。記念すべき初メディアは朝夕に放送されている某教育番組のコーナー企画だそうだ。
「そうか…あの手の番組ってかなり再放送が行われるから知名度アップにもつながるね」
「そういうこと。とりあえず明日の午前10時にQuartetto集合、衣装はこっちで用意してるから私服でいいわ」
その後私たちTri clapは、番組詳細が何も伝えられないまま解散となった。
「ったくなんの撮影かくらい教えてくれてもいいじゃん…ねえ?」
不機嫌ないろはちゃんの姿を小動物と照らし合わせ、あまりに一致しすぎて内心ちょっと引いたりした。なにやっても可愛い系で生きていけるだろうなと勝手に思い込む。
「ま、まさか教えてくれないって事は…えっちな内容の番組かもしれない…!」
「いや朝っぱらの教育番組だよ。何を教育するつもりだお前は」
「いやそれなら教えてくれるでしょ⁉︎これ絶対面積少ない水着とか着せられるよ⁉︎明日の目的地絶対市民プールだよ⁉︎」
果たして11月に市民プールは使えるのだろうか。まあ面白いので敢えて口は出さないが….というか普通にそれはそれで見てみたいというのが本音である。
「宮古ぉ…こういうのって慣れるの…?」
「それは蕣次第。くまいろーだって多分大丈夫だから早く慣れなさい」
「うえぇ…」
嗚咽を漏らすがやはり仕方ないというより面倒が勝っている。ここ数日、ひそひそと聞こえる『Quartetto』だとか『ライブ』だとかの単語がノイローゼになるほど耳に出入りしていた。
「しっかしもう3ヶ月かぁ…早いねえ時の流れは…」
「ほんとにねぇ…んぉ?」
人気のないその一角に向かう頃、眼前には目に入れたくもない人物が立っていた。一方的被害者の私は気だるさを顔に出してしまうのも仕方がない。
「へえ。変わったねぇ七海…」
「…なに?誰?」
しかし、口にも出したくない様な人物である。説明したくもないものだが。
「せっかく七海に罪なすりつけて逃げよーと思ってたのになんかバレちゃってさ。2週間も休んじゃったよー…ねぇ?」
何故此方に非がある感じになっているのだろうか。全く無関係の人間が巻き込まれただけなのだが。
「文化祭には行ったよ、いや、まあまあ面白かったって。『あの七海』があんな事して…」
「おい」
発言を遮る声、宮古の喉から発せられたと理解するまで数秒を要する、初めて聞く彼女の声。
「なんで……あんな事しやがった……?」
「んぁ……ああ?だってさ、七海は頼まれたらなんでもする様な奴だぜ?あの日もなんか頼まれて学校残ってたの知ってたからさ…誰かに頼まれて股開いたんじゃねぇの?」
「てめっ…ふッざけん」
拳に力を入れている様子はすぐに分かる。表情は私の知っているそれとは似て非なるものだった。
「もういいよ、行こう宮古」
袖を掴み精一杯で自分の元に引き戻す。自分の軟弱な力では何もできないと分かっていたが、自己をそうでないと肯定するその感情という名付けるなら罪悪感とでも呼ばれそうなものが右腕に加担していた。
「…反省、だな。私は今後に関わる問題を起こそうとしてた…」
「なに言ってんの…?宮古が居なかったらもっと面倒なことになってたって」
ガラス張りの視界に、見下ろす景色は通り過ぎる自動車ばかり。風も吹かぬのか動かない雲となんの目的で作られたのかも分からない小さなビル群が埋め尽くす世界は、心情を良く変えてくれるものではなかった。
「ま、世界に顔晒すっつーのはああいうのを引き寄せるって事でもあるんだ。面倒だけど仕方ないんだよ…」
「大丈夫かな、いろはちゃん」
「こんな時にも他人の心配ねえ。ま、蕣らしいっちゃそうか。ほら、初めて会った頃みたいになってんぞ」
初めて会った時。正直、あの人物が介入しなければ無い現状であるというのも皮肉めいた話だが、この頃の私という存在が存在できるのもそういった事なのかもしれない。
「はぁ…じゃあもういいよ。帰りに駅前のスイーツ食べ放題に行こう。私の奢りだ」
「ふぉんふぉひぃふぇ!ふぁふぃふぁふぉふぃわぁほふ…」
「ああもう…食ってから喋れよ。あの時の卵焼きとおんなじ光景じゃ…」
普通に卵焼きの話を持ち出したが、結構記憶に新しい「あの件」が絡んでいると思い出して瞬時に言葉を仕舞い込む。幸い食べるのに夢中な蕣の耳には届いていなかったらしい。
「しっかしよく食うなぁ蕣」
「んぐっ…食べ放題なんだから食べないと損だよ⁉︎ほら宮古も…」
「あんまり食って太るなよー?」
「ゔっ…」
何か心当たりがあるようだ。まあ、眼前に構える皿の塔が全てを物語っている訳だが。
微笑ましい食べっぷりに、出来事も忘れたのだろうと微笑をこぼしてタルトを頬張る。 蕣の言う事も分かるほど美味しかった訳だが、正直そこまで沢山を食べることはできない甘さだった。
「まあ、出だしにしては好調なんじゃ無いだろうか?初仕事が地上波なんて…」
「教育番組…ですか。まあ、彼女たちなら快く受けるでしょうね」
「テレビ⁉︎」
「嘘でしょ…まだあの雑誌も出てないのに…」
「安心しなさい。放送される頃には発売してるから」
Quartetto社内で伝えられたその言葉に耳を疑うばかりだが、地上波への出演が決定したらしい。記念すべき初メディアは朝夕に放送されている某教育番組のコーナー企画だそうだ。
「そうか…あの手の番組ってかなり再放送が行われるから知名度アップにもつながるね」
「そういうこと。とりあえず明日の午前10時にQuartetto集合、衣装はこっちで用意してるから私服でいいわ」
その後私たちTri clapは、番組詳細が何も伝えられないまま解散となった。
「ったくなんの撮影かくらい教えてくれてもいいじゃん…ねえ?」
不機嫌ないろはちゃんの姿を小動物と照らし合わせ、あまりに一致しすぎて内心ちょっと引いたりした。なにやっても可愛い系で生きていけるだろうなと勝手に思い込む。
「ま、まさか教えてくれないって事は…えっちな内容の番組かもしれない…!」
「いや朝っぱらの教育番組だよ。何を教育するつもりだお前は」
「いやそれなら教えてくれるでしょ⁉︎これ絶対面積少ない水着とか着せられるよ⁉︎明日の目的地絶対市民プールだよ⁉︎」
果たして11月に市民プールは使えるのだろうか。まあ面白いので敢えて口は出さないが….というか普通にそれはそれで見てみたいというのが本音である。
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