歪ミノ咎学園

第20話 偽りのヒーロー

「しかし何が理由でいきなり登校する気になったんだ…あ。そうかお前らそういう事か。」
　なんか変な勘違いされてる気がする。
　僕の用事はまぁ、毎度の忘れ物だ。今日は数学のノートを忘れてしまった。
　
　用事を済ませた僕らは、近くのショッピングモール内にあるファストフード店で昼食を食べていた。
「なんか今日…子供多くない？いつもこんなとこ来ないけど…」
「なんか子供向け特撮番組のヒーローショーがあるんだとさ。」
　昼食を食べ終わり、店を出て雑貨屋を目指す途中に、ヒーローショー最前列に座る小さな子供の中で身長の高い影が二つ見えた。
　———伊奈平と平林何やってんだよ。
「ん？知り合いでも居た？」
　冷めた目で二人を見つめながら僕は返事をした。
「……いや…人違いだよ。多分」
　
　殆どの人が子連れでヒーローショーに夢中になり、店は客が全然居なかった。
　目当ての品も買えたところで、綱手の様子がおかしいことに気づいた。
「……？どしたの？」
「…………なんか、人だかり想像したら…吐き気が…」
　落ち着け。それよくある幻痛だよ。
　人のいない一角にあるエスカレーターを降りていると、突然上から人が降ってきた。
「え？何⁉︎今人落ちたよね⁉︎」
　
　一番下の階で血を流しながら倒れる人間には、既に何人かの清掃員らしき人が集まっていた。
　隙間から見えたその顔は、よく見覚えのある顔。
「——小西…」
　彼の心臓はもう既に止まっていた。
　
「あー、スッキリしたっ！ふふん、この世に悪が栄えた試しはない！なんつって」
　両手を挙げ、伸びをしながら非常階段を降りていく井ノ尾は携帯電話を取り出して『名護センセ』と書かれた番号に電話をかけた。
「あ、せんせー。やっと終わったよ。うん。それじゃ、次はせんせーの番だよ。次は今古川だからね。」