愛に生き哀に死す

軍艦あびす

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five 現実から見放されて

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夏休みはあと一週間で終わってしまう。
 そんな中、生き残っているのはついに一桁になってしまった。
 僕のグループはまだ全員生きている。このまま残りを殺し続ければ、グループ全員が脱出する事が出来る。
 子供と言えど、修羅場に置かれれば人はいつも命乞いをし、犠牲を作り、そんな事を出来る頭脳は持ち合わせている。残り八人。残りの二人を処理すればこのゲームは終わる。
 終了まであと5日の昼。日向君と僕と落葉さんと紅街さんの四人で爆弾を作りに行った時。
「ねぇ、時間がかかるけど本物の爆弾とか作っといた方がいいかな?」
 ここまで残っているという事はかなりの強者だ。残る敵二人は同じグループ。人数的には勝ったも同然だが、油断は禁物だ。作っておいた方がいいかもしれない。
 爆弾を作り始めて約15分。
 事件は起きた。
 薬品を取りに紅街さんが準備室に入ろうとした時、扉の先で待っていたのは、コルト ガバメントを構えた生徒。
 無機質な目で紅街さんの額に銃口を当て———
「紅街さんッッッ‼︎」
 手を伸ばした頃にはもう遅く、既に外れていた安全装置が作動してロックが掛かる。
 ——それは即ち、一発を打ち終えた事を示す。
 ビシャ…ビシャ…と、音を立てながらその場に倒れこむ紅街 桜だったものは今後動く事は無かった。
「桜ちゃんッ‼︎ねぇ、返事してよ桜ちゃんッ…」
 いつも人間の死に快感を覚えた落葉さんもこれには応えた様で、涙を流しながらその骸を抱きかかえる。
「日向君。行きますよ。」 
「残念だね白波くん。僕らはここでゲームオーバーかも知れない。」
 日向君は、唾を呑み、サバイバルナイフを構えました。
 僕もカッターを取り出し、戦闘体制に着きます。
「あの…一つ。聞かせて貰えませんか?その銃はどうやって手に入れたんですか?」
 少し時間稼ぎに質問をしてみた。こんな意味もない事を聞いて。
 もしかしたらリュウヤ君がきてくれるかもか知れないなんて、あるはずもない未来を願って。
 生徒は答えてくれました。
「夜、哀の根城の放送室に忍び込んで盗んだ。新しい銃があるなら、前の銃はもう使わないと思ってな…さぁ、お喋りは終わりだ。死んでくれ。」
 銃口は日向君を向きました。
 咄嗟にかわそうとしましたが、脇腹に弾が当たって日向君は倒れ込んでしまいました。
「日向君ッ‼︎」
「僕はいいから今はコイツを殺せ!」
 僕は戸惑ってしまい、生徒を見ると彼は動けない日向君めがけて、安全装置を外しました。
「日向君—————‼︎」
 『パンッ』と、破裂音を立て、日向君の周りにも赤い海が出来ました。
「次はお前だな…」
 動かない日向君を抱えた僕に、ついに銃口が向けられました。
 死ぬなら、これくらいの抵抗はしてやる。
 僕は相手の顔面にカッターを突き刺そうとしました。
 しかし、かわされてしまいました。
 これで、終わってしまいました。
 僕は諦めました。全てを投げ出し、残ったリュウヤ君と梻さんと…落葉さんは、生きて欲しい。僕らの分まで生きて欲しい。
 そう思いながら、男子生徒の顔を見つめていました。
 
 
 
 すると、生徒の頭に弾丸が飛び、赤い血飛沫が舞いました。
 扉の前に立っていたのは、紛れも無い哀さんでした。
「勝手に私のコルト ガバメント盗んだ代償です。そこでコソコソしてる貴方も共犯です。貴方の手に或るものは私の弾丸でしょう?」
 哀さんは笑顔でプファイツァー チェリスカを最後の生徒に構え、額を撃ち抜きました。
「さて、アカマチちゃんとヒュウガくんがアウトなので…四人ですね。」
 
 体育館に戻り、リュウヤ君と梻さんに全ての出来事を打ち明けた。
 ゲームをクリアした事。
 日向君と紅街さんが死んでしまった事。
 二人とも驚きを隠せない様子で、梻さんは涙を流し始めました。
「なんで…なんで一番役に立たなかった私が生き残って…闘ってくれた、守ろうとしてくれた人達が死んじゃうの?そんなの…」
「クソがぁッ‼︎」
 僕は二人に対して、語彙力も無いのに慰めをしました。
「日向君と紅街さんの分も、ちゃんと生きないといけませんね。二人のお陰で僕たちは生き残る事が出来たんですから。」
 僕は精一杯の励ましをしました。自分でもわかっていました。これが更にリュウヤ君と梻さんを不安にさせているという事を。
 
『えー、まずスメラギさんとシキミさんから帰りましょう。』
 哀さんはそう言うと、二人の首筋に注射器を刺した。
「睡眠薬です。2日ほど起きないと思います。」
 哀さんは、「さて。」と呟き、僕と落葉さんを見つめました。
「カギクラ シラハくん。答え合わせの時間ですよ。
 何故君はオチバ アイを守らなくてはならなかったのか。それは———」
 僕は、今までにない緊張を感じました。
「それは、…まぁ、実際にやった方がいいかな。愛ちゃんの瞳をよーく見て。ほら。瞳孔が鍵穴の形になっているでしょ。今この瞳は鍵が掛かっていない。つまりいろんな感情が具現化し続ける。そして、その鍵を産み出せるのは『カギクラ』の血を継いだ者だけ。もうわかったでしょ?」
 僕は答えを呟くため、大きく息を吸い込み、口を開きました。
「僕はこのゲームに鍵を手に入れる為に参加した。参加は自分の意志ではなく血が決めた。という事ですね。」
「大正解。」と、哀さんは呟きました。
「このまま日常に帰ると私は消えない。でも鍵を閉めれば、『貴方たちを無事に連れて帰る』という使命を果たせば私は消えてしまう。でも、私は消えてもいい。
『落葉 愛』が…私の主人が普通の人間として生活出来るならそれでいいって思ったんです。」
 哀さんは、白い鍵を手渡して来ました。「この鍵に、今の貴方の感情を込めて強く握って下さい。」そう呟きました。
 
 鍵は、ピンク色と青が入り混じったようなグラデーションに染まりました。
 鍵を落葉さんの目にある鍵穴に刺し、右に回しました。
 
「それと、シラハくん。何か愛に伝えること、あるんじゃないですか?」
 哀さんは咳払いをし、こちらに視線を向けました。
「………そうですね。」
 僕は深呼吸を行い、落葉さんと向き合いました。
 
 
 
「落葉さん。僕は貴方の事が好きです。」
 
「……はい!」
 
 
 
 哀さんは僕達の首筋に催眠薬を刺しました。
 
 朝、眼が覚めると自分の部屋のベッドに寝転がって居ました。
 それでも、あの出来事は夢なんかじゃありませんでした。
 
 教室に入って来たのは、僕を含む五人。
 リュウヤ君と、梻さんと、愛さん。そして僕と———
 
 
 紛れも無い、哀さんでした。
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