世界の旅人

GF

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第1章 外の世界へ

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勇者である彼に育てられた赤ん坊は、十四年の月日がたち、とても可愛らしく、美しくなった。
勇者である彼は、魔族の生き残りがいることを悟られないように、誰も立ち寄れない死の森に家を建てた。そして、結界を強力に張り、魔物を引き寄せなくした(まあ、もう彼は世界でナンバーワンの強さを誇るので、存在するだけでも魔除けになるのだが)。
アユハと名付けられた少女は、そこで毎日鍛練と勉強を課せられた。
それもそろそろ終わりに近づいた頃…
「む~。なんで人間の町に行かせてくれないの~ししょー?」
「何度も言ってるだろ?アユハが人間の町に行ったらアユハが死ぬかもしれないからって」
もうこれで何十回話したのだろうか。
いい加減に言うことを聞いてほしいと思う彼だが、外の世界を知りたいアユハの気持ちはわかるのであまり強くは言えない。
「ねぇ、聞いてるのー?」
不機嫌そうなアユハに、彼は少し焦った。
不機嫌な時のアユハは、プレッシャーが物凄く、勇者であった彼でさえも恐怖を感じる。あくまで、のんびりしているときは。
「あー、えーとー…」
と口ごもり、少し考えたあと
「しょうがねぇな。仕方がない。一回だけだぞ?あと俺から離れないこと」
と、ため息ながら言った。
「やったーー!」
喜ぶアユハ。だが、彼は嫌な顔をしている。
「(はあ。嫌な予感がするなぁ~)」
そう思いながら、アユハを見ているとー
「今、不吉なフラグたてたでしょ?」
ギクッ、としながら彼はおどけた言い方で
「なんのことでしょーかねぇー?」
と答えた。
「嘘つけー!」と言うアユハをおいて、思考の海に沈んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数ヵ月後、死の森を出る彼とアユハの姿があった。
「わーい」と言いながら駆け回るアユハ。
その姿は、年相応の姿だ。
「あんまり遠くに行くなよー」
と言いながら、Sランク相当のパワーデビルを殴り殺しにする彼。
鋼の剣でを切っても折れるルナ・ミスリル合金を一掴みでくしゃくしゃにできる魔物を、だ。
「というかもう倒し終わったー?」
と聞くアユハ。
「おう。終わったから早く行くか」
と答えた彼は、転移魔法の準備を始める。
「歩いて行かないのー?」
「歩いて行ったら、お前はその道順覚えて勝手に行くだろうが」
「てへ。バレた?」
他愛ない雑談をしながら、彼らは転移した。

「わぁー!ここが人間の町かぁ!」
喜びながら走り回るアユハ。
ここはロスタリオ国の王城がある城下町だ。
彼は本来、ここにアユハを来させたくなかったが、必要なアイテムがここにしか売っていないので仕方がなくここにしたのだが…。
アユハの正体がバレないように、フード付きのマントを着ているが、今にもめくれそうで彼には心臓に悪い。
「おい。そんなに走り回るな。歩いてる人の邪魔だろ?」
「えー。だって初めての町だよ!?こんなに人間がいる所に来たの初めてなんだよ!?」
「気持ちは何となく分かるから落ち着け。バレたらどうする」
なんやかんやで町のなかを歩く二人。
だが、彼を知る人は多くの人の目についている。
「アユハ、少しの間背負うぞ」
「へ?」と言ってることが解っていないアユハをおいて、背負った。
その瞬間、あちこちから殺意や何らかの意で潜んでいた者たちが動き出した。
彼はそれを察して、転移魔法で逃げる。
逃げた先はいつもお世話になっている店だ。そして彼にとってこの世界で、最も信頼できる人物の店だ。
「おう。らっしゃい。またファンとかに追っかけ回されたのか?」
「ははは…。確かにファンはいたな。めっちゃアユハに殺意を向けてたけど」
「それは難儀なもんだな」
と笑うオッサンは、城下町の中で最も儲かっているロック・ラバウダ。
筋肉の塊みたいな体をしているくせに、頭は切れるし、商売が上手い。見た目どうり、力持ちでもあるが結婚相手に恵まれていない可哀想な人間でもある。
「今日はその子のことでなんかあるんだろ?」
「ああ。こいつに魔剣をやりたいと思ってここに来た。」
「父親の性分が板について来たか?」
と笑うロック。
「やめてくれ。俺はあくまでアユハの保護者兼師匠だ。それ以上でも、それ以下でもない。て言うかアユハの前でそんなこ…」
と言いながら自分の背中にいるはずのアユハを見るとぐっすり寝ていた。
「…」
「…」
「(可愛い)」
と思う彼らだった。

「んで、魔剣の話だがどんな型をご所望で?」
「オールラウンド型かな。アユハの魔力量は高いから」
「まあ、妥当なところだろ。アユハちゃん自身、オールラウンドに戦えるからな」
この世界の魔剣は、四つのタイプがあり、遠・中・近にオールラウンドがある。
遠距離は短剣になり、基本は魔法使いがよく使う杖と同じように媒体として使う。
主には魔法使いが使う。
中・近は剣か刀で、基本的に刀身に魔法を纏わせて強化する。違うところは、中距離だと飛ぶ斬撃ができるが刀身の強化は近距離より低くなる。
近距離は刀身に魔法を纏わせるだけだが、剣の強化がとても強い。
そして、オールラウンドは魔剣の中で最も扱いの難しい。
遠・中・近に対応しているが、剣に付与する魔力量がかなり多い。そのため、普通の人間では強化さえできない代物だ。
「オールラウンドにはオールラウンドを、的にな」
と、少し意味のわからないことを言う彼。
「とりあえずそれはわかった。うちの在庫に二振りあったはずだから、後で探す。で、本命は何だ?」
「やっぱりお前は鋭いなぁ」
改めてそう思う彼に、
「まさかアレか…?」
と聞くロック。
「そうだ。魔王の鎧ダークヴォルフス、一応魔族の呪いがかかってるって報告した筈なのに、とこぞの馬鹿王子が装着しやがって。まあ、脳ミソぶっ壊れたらしいから自業自得だけどな」
と笑いながら目的を話す。
「あー。その鎧だが、うちにはないぞ」
「は?マ、マジで??」
「おうそうだぞ?どこからそんなこと聞いたんだ?ああ、まさかリンクスの野郎に聞いたな?アイツいつも間違った情報持ってるからなぁ」
「マジか…。やっぱりアイツの情報は間違いだらけだわ。んで、鎧はどこだ?」
「王城の宝物庫。だが、もう勇者でもないお前が行っても入れんぞ?」
「そこら辺は何とかするさ。ただその間、アユハのことを頼むぞ」
「おうよ。任しとけ。バレないようにしっかり隠しとくさ」
「程々にしろよ…。アイツはキレたら半径30㎞は消滅するぞ」
「え、マジか」

ー数時間後ー
「さて、ここまで来たのはいいんだが、宝物庫ってどこだっけ?」
…すぐに忘れている彼だった…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キャラ紹介⬇

アユハ(14)身長148㎝
ココルワ世界の住人。魔族の最後の生き残り。歴代魔王最大の魔力を持ち、まだ幼いところがある。最近の趣味は人間に関すること。

好きな食べ物 ポテトサラダ、師匠の手料理

使える魔法 【ほぼ全て】

将来の夢 「ひ・み・つ!」byアユハ

ロック・ラバウダ(42)身長188㎝
ココルワ世界の住人。商人を始める前は、冒険者をしていたそう。アユハの秘密を知る、数少ない一人。

好きな食べ物 こんがり肉、あんパン(こしあん)、米飯

使える魔法 【土・水魔法中級まで取得】

将来の夢 「嫁が欲しい。誰かいないか~(泣)」byロック
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