世界の旅人

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第2章 魔王の鎧と復讐

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「うーむ。宝物庫がどこだったか忘れちまった…」
生きてきた時間だけに、彼の記憶力は日常での記憶できる量はかなり低くなっている。
つまりは、彼はど忘れが十八番なのである(ちなみに、アユハにもその事を指摘されている)。
「まっ、とりあえず地下にあったはずだからそこまで移動すればいいか!」
と言い、転移魔法で転移する。
転移すると、宝物庫の番人であろう衛兵が目の前にいた。
「くっ、くせぇっ!?」
「ちょっ!?ストップストップ!俺だ!」
「え?あっ、ああ!勇者殿!」
どうやら思い出したらしい衛兵は、その勇者が目の前にいることに疑問を持つ。
「勇者殿?なぜここにいるのです?貴方はもうここにはこれないはずでは?」
「疑問に思うのはごもっともだが、今は急ぎでね。宝物庫はどこだい?」
「…!わかりました。ついてきてください」
歩き出した衛兵についていく彼に、衛兵は聞く。
「魔王の鎧に関して来てくださったのですか?」
「ああ。その通り。アレは破壊しとかないとヤバイやつになっちまったからなぁ。あの馬鹿王子が着なきゃ、こんなことしなくてすむのに」
そうして話しているうちに、宝物庫の前に来た二人。
「私が見張っておりますので、お早めに済ませてください」
「わかってるよ」
宝物庫の扉が少し開かれ、入り込む彼はすぐに例の物を見つけた。
「(うわぁー。めっちゃ黒っ。呪いが濃すぎてもう黒い塊しか見えん)」
鎧は確かに黒い塊しか見えなかった。だが、呪いに詳しいものがスキルを使って調べようなら、すぐに頭がおかしくなってしまうだろう。なにせ、呪いの言葉を発しているのだから。
「…。[極光の刃]」
まばゆい光が鎧を突き刺すと、鎧は木端微塵に砕け散った。
「ふぅ。これでなんも心配なく、次の世界へ行けるな」
扉から出た彼は、すぐに異変に気付いた。
「(血の臭い…!まさか…!)」
血の臭いがする方へ向かうと、そこに先程の衛兵がいて、左腕から先が無くなっていた。
衛兵は虫の息だったが、今から治癒魔法と蘇生魔法を使えばしばらくはまともに動かせないが、完治できるだろう。
「動くな…!今、治してやる」
すると衛兵は痛みに堪えながらも、自分の腕をやった犯人が誰かを言った。
「破魔神教の奴らが…!ごはぁっ…、ロック商会に…!」
吐血しながらも何とか伝えたその相手は、彼にとって十分に動揺させた。
「またアイツらか…!やっぱり来させなければ良かった…!」
彼は、衛兵の腕を治すと
「しばらくは動くな。失血が酷いから通信魔法でも使って、運んでもらえ」
と言って転移する。
そして、転移した先は庭が燃え盛り、道には護衛と破魔神教の死体(厳密に言うと死んでいないものもいるが)がバタバタ倒れていた。
「屋敷は燃えてないのか。アユハ…、どこだ…?」
広域探知魔法を使うと、すぐに見つけた。
「(マズイッ!)」
探知でわかった状況を即座に理解し、転移した。
そして…
ザシュッ!
右から左にかけて深い袈裟斬りをくらった。
「がはぁっ…っ!」
アユハの目の前でドサッ、と倒れる。
「あああぁぁぁ…!」
アユハは絶望した。目から生気が失われる。
「勇者様。残念に思います。貴方が魔族を匿っているなんて。でも大丈夫です。貴方のその不名誉な事実は、私たち破魔神教が消して見せましょう!」
破魔神教の一人がそう言い、アユハを見る。
「この淫魔め…!勇者様をたぶらかし、ロック様やその近い間柄の人々まで…。さあ、今からその命で償いなさい!そして悔いなさい!魔族に生まれたことを!!」
そう言うと、手に持った対魔族専用に作られた鉈を振りかぶる。
「師匠が…死んだ…師匠が…死んだ…ぁぁ…」
彼だったその体に抱きつくアユハ。まだ生温かい。
そして鉈が振り下ろされた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何も起きない。もう死んだのだろうか。
そう思って眼を開けると
「な、何故です…!?貴方は死んだ筈だ!何故ここに!?」
彼は、愛用の刀で鉈を防いでいた。
「ああ、確かに俺は死んだ。だが、それ以上教えるつもりはない」
そう答えると、刀を横に振り切る。
その瞬間、破魔神教の一人だった者は赤い霧になった。そして刀に吸い込まれる。
「久しぶりにこいつを使うな。〈タマガリ〉」
禍禍しい威圧感を放つその刀は、それに答えるかのようにキラリと光る。
「さて、全員死んでもらうか」
彼の目が、いつもの冴えない目から猟奇的な目に変わる。
「アユハ、目をつぶっとけ。目に血が入るかもしれないから」
反射的に目を閉じるアユハ。
次に目を開けると、彼以外きれいさっぱり消えていた。
「え…?」
「アユハ。こんなことになってしまったが、お別れだ。俺から直接渡せるのは、破魔神教過激派を全滅ぐらいだが、受け取ってくれ。あともうひとつはロックに頼んでるから。誕生日おめでとうアユハ。そしてさよなら」
そう言いながら、アユハの手に手紙を握らせ頭を撫で、普通では開かない黒い穴に入っていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
解説⬇

【破魔神教】
人間至上主義の宗教。マイナー宗教だが、ココルワ世界では2番目に信者が多い。あくまで、人間至上主義なので他種族の滅亡を目的とすることはない。ただし、過激派は別物で他種族を滅亡させるのが神の意思とみなして、積極的に他種族(主に魔族)や、その者たちと共存・協力しあっているものたちを殺戮している。

〈タマガリ〉種類:刀
彼が鍛練して造り出した、彼専用の刀。素体が名刀並だったのもあり、ただの刀としては高性能だが、呪いに近い付与がかけられている。全能力が最大まで上がる代償に、使用者と殺した相手の命と魂を吸い取る。使用者の場合は、一人殺すごとに寿命が百年ほど削られるので通常では誰も扱えない。

[極光の刃] 種類:光魔法
光魔法最大級の攻撃魔法の1つ。どんなに濃い呪いでも破壊し、闇に属する者たちを滅殺する。もちろん、魔力消費量は半端ない。
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