世界の旅人

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第八章 空を駆ける大災厄

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バンパイアのリーダー含む、バンパイア軍は全滅した。
そして、フユシはある決断をする。
「アユハ。ここからは一旦別行動だ」
急に言われたのだから、アユハは異を唱える。
「なんでよ?別に私は別にこの世界をどうこうするつもりはないのだけど」
「そういうどうこうの問題じゃない。元々、この世界は俺の管轄だ。本来、世界の運命を正したり、動かすのが神。別に神たちが趣味なり、イタズラするなりは別にいい。だが、本来の職務を放棄してるようなやつは処罰をやんなきゃならん」
「えーと。つまりはあなたの部下が真面目に仕事やってないと?」
フユシは首を縦に振る。
「あとはまあ、腐敗した体制の粛清だね。伝承にして、守るようにはさせてるけど、伝承だからって守んねぇやつもいるから、そういう王国なり帝国なりをぶっ潰すんだよな」
「一体、どういうことよ…」
すると、フユシがこう答える。
「この世界ではかなり…いや、伝説とも言われる時代の話なんだが、この世界に転生したやつがいてね。勇者として活躍したあとは、王様になって幸せに暮らしていたんだ」
「よくあるハッピーエンドの典型ね」
「まあな。で、そいつがな、当時は俺は彼の仲間だったんだが、俺の能力がバレてな。王様を妬むやつらに殺されかけたっていうか…」
「返り討ちにした…でしょ?」
「あはは…そゆこと。で、俺の能力を利用しようとする馬鹿共は後をたたず。王様にも迷惑かけたんだがな…」
少し顔が寂しそうな、暗い雰囲気になる。
「その王様が、この国を滅ぼして、後の時代のために伝承させてくれってさ。まあ、あの時の俺は少し狂ってたんだろう。ストレス発散とばかりに国をぶっ壊した。女子供構わずな」
「え…っ!?」
「…それが結果オーライだったんだろう。今でも伝わるほど、恐怖され、伝承されてきた」
アユハは、一番気になったことを聞く。
「その…王様は?」
フユシは後ろを振り向くことなく、答える。
「俺特製の加護を与えたよ。効能は様々。条件は、俺の設定した条件を満たしているか。つまりは、心優しいやつほど幸せに、悪人になるほど不幸になる加護だ」
「なんか凄いわね…」
「まあ、そりゃ凄いさ。百年位前に、王様の子孫が見つかり、コピーできないか、同じような加護を他の人に与えられないか、実験台にされた」
「それって…」
「名ばかりの、人体実験。もちろん、当時の子孫は態度は悪いけど、心根が優しいから加護が彼を助けた」
「……」
「さて、昔話は終わりにして、行ってくる」
すると、アユハがフユシの服を引っ張り、引き留める。
「また人々を虐殺するの?」
「………」
長い沈黙。
そして、開いた口から出た言葉は
「さすがに、そんなことはしないよ。アイツが俺に頼んだのはそんなんじゃないからな…」
と言い、微笑む。
だが、アユハはしっかりと見ていた。
彼の、フユシの目が全く笑っていないことに。
そして、その目はどんな感情とも言えない、複雑すぎてただの深淵の目をしていた。
アユハは息をのむ。
本当に、フユシを行かせていいのか。
そんな考えが頭に浮かぶ。
「アユハ」
頭に手がおかれる。
「アユハが思っているような事は、絶対にしない。俺だって、当時の事は後悔している。だから、【選別の炎】を使うつもりだよ」
そうして、フユシは石で雑に組み上げられたような翼を開く。
色は、虹色。
一定の色にとどまることなく、常に色が変わる。
いや、色はあるのか。
それさえわからないほど、フユシは、彼という存在はわからない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この日、一柱の神が全治百年の大怪我を負わされ、世界各地に【選別の炎】がまかれた。
当時の事を知っている人々は、口を揃えてこれに近いことを言う。
《あれは大災厄。我々では絶対に勝てない化け物。人の姿をし、巨大なる闇を持つものに、聖なる炎が。選別されし、人々は生き延び、恐怖した。我々は、彼に、ヤツに管理されている。そう思わせる程の、力を持っていた》
そして、決まっていう言葉がある。
《伝承は本当だ。事実だ。闇なるものは、全て粛清される。ひどいやつほど、青く燃えた》
世界は、この星は、宇宙から見れば青い炎がよく見えただろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

全てを終えたフユシは、ひっそりとした、焼け焦げた悪なる存在たちの骸の前にいた。
今だに、青く燃えるところがある。
「ユリ、俺はこうすればいいよな…」
涙が、自然と溢れ出る。
「ユリ、どこにいるんだよ。死ぬこともできない俺が友達に出来るのは、こんなことだけだ…。ユリ、俺は…」
ズブッ
背中から、ナイフが刺される。
「よくも…よくも父上を…!」
服装からして、貴族なのだろう。
少年の目は、復讐の目をしていた。
「…刺したければ、いくらでも刺すがいい。俺は死ねない。死なない。殺せるものなら殺してみろ…!?」
少年は、呆然とした。
憎いはずの相手が死にたいと願うのだ。
だが、彼の目を見ることで少年は思考を止めた。
「ケハッ。カハッハッハ!?あはは?!∞≠▼°℃%&=@≠≧ゞ_?!‘〇―∂ゑÅヮΔ♪¶±×」
フユシは、フユシという人格を暴走させたフユシではないものが、少年を見据えていた。
言葉にならない、奇声をあげながら。
「く、狂ってる…!?う、うわぁぁぁ!?」
少年は逃げた。
彼の目が、見ることもできなくなった。
ただ、恐怖した。
目は、もはや目ではなく、穴だった。
そうとしか表せないほどの、暗い暗い、黒。
彼は、フユシは壊れている。
あの日から。この身体になった、あの日から。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

解説⬇

【選別の炎】
聖なる炎ともいえる。フユシオリジナル調整の火魔法。条件に値する者たちだけに、燃え移り、対象者を青き炎に包み込み、焼き殺す。消火はまず出来ない。

・フユシの人格
いつとも知れない、遥か長い時間を生きている彼は、死に近い体験をしながらも、死ねず、転生、再生などを体験している。次第に、人格が別人になったり、二重人格になったりと、人としての寿命を超えたフユシは、現在、完全に壊れている。一見、そのような様子は見られないが、すでに壊れていてもはや普通の見た目になっている。
死に対する恐怖は全くない。
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