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弐 異能
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人相の悪い二人組の男が立つ。
俺は、何故かその二人の後ろによろめく妖しい炎を見た気がした。
「おい」
声をかけられた。
「は、はい…?」
改めてよく見ると、顔はヤクザ、服装もヤクザの服っぽいものだった。
「お前、さっき河童に会ったろ?」
「はい…、え?い、一体どういう…?」
すると、喋っていたヤクザの隣のヤクザが
「明弘、とりあえず捕まえるズラ」
「ちょ、ええっ?」
隣のヤクザが縄を取り出す。
だが、明弘と呼ばれたヤクザは止める。
「止めとけ。まだこの少年の異能がわからねぇんだ。無理矢理は不味い」
「い、異能?」
「幸い、聞き分けのいい少年のようだ。少年、何もしないから付いてきてくれないか?」
正直、行くのは嫌だ。怪しすぎる。
だが、河童といい異能といい、気になる。
「わ、わかりました。で、でも縛らないで…」
ー五分後
俺が連れてこられたのは、いかにもヤクザの事務所みたいな場所だった。
でも、不思議なことに大通りに近いはずなのに人気がほとんどなかった。
「ほら、入りな」
扉の前に立たせられる。
「し、失礼します…」
正直、生きた心地がしない。
でも、中を見てみると意外と簡素な場所だった。
「そいつが、今回の被害者か?」
「そうだズラ。一足遅かったズラけど、自力で河童を倒してたズラ」
「ようやく河童が消えるな」
いつの間にか、いかにもボスみたいな人の前に語尾にズラがつく人がいた。
「ボス。いつものを」
「わかってるよ。確か繁信君と言ったね。君がここに連れてこられたのは、河童と遭遇し、倒したからだ」
「あのぅ。よくわからないんですけど…」
普通にそう思った。
「つまりはだな。君は河童を倒したことで異能を手に入れている」
「異能?」
「そうズラ。あ、自己紹介がまだだったズラね。坂田 狛雪ズラ。そっちは金木 明弘」
「あ、はい」
異能?
超能力の類いかな?
「いかにも、超能力の類いかな?ていう顔をしているズラね。確かに超能力に近いズラ」
「だが、異能は都市伝説や怪奇現象等を切り抜けたり、逃げ切れた人のみに与えられる能力だ。ちなみに私はここのボスをやらせてもらっている、茅場 祐輔だ」
…みんな後付けに自己紹介しているな…
「君は河童を倒したことで異能を手に入れているはずだ。異能は多種多様だから、同じ異能を持つものはあまりいない」
「えーと。つまり、一人一人違うって事ですか?」
「そういう事だ、繁信君。ここは、元々ヤクザの事務所だったが今は違う」
「俺たちは都市伝説や怪奇現象に遭遇した人を、保護と異能についての説明をしている」
「はあ」
「で今、君を鑑定して、君が得た異能は…[想像装着]?もんげーズラ」
「レアドロップか…」
「え?え?」
意味がわからない。レアドロップ?まさか俺、殺される?
「ああ。説明しないとな。基本的に、手に入れる異能は出会った都市伝説や怪奇現象に影響されている。河童なら、例えば[水圧調整]、[筋力増強]…みたいな感じだ。」
「それで、俺の場合は全く関係ない異能だと?」
「そういうことになるズラ。こういうのは、いつの間にかレアドロップって言われてるズラけどね」
というか、今思えば坂田さんズラをめっちゃ使ってるな!!
「内容は…イメージした人物や物になる…。繁信君、何かイメージして装着って念じるか言うかしてみてくれ」
「はぁ。ん…装着!」
思い浮かべたのは、最近見たアニメ映画のロボットだ。
光に包まれて体に何かがくっついていく。
光が収まると、白い装甲が各所にくっついていた。
背中には、人が背負うには重すぎるヘイグス機関と呼ばれるものらしきバックパックがあった。
「おい。お前……!?」
「き、君は…」
「女子なんズラか!?」
「え?そうだけど、なんで?」
そう答えると、一斉に茅場さんたちは叫ぶ。
「「「まぎわらしいんだよっ(ズラ)!!」」」
気を取り直して、俺の能力を確認する。
「別の姿に換装すると、換装しきれるまで二秒弱。武器は強くイメージすることで、作られるみたいですね」
「なんかいいなぁ。私なんて[俊敏]と[筋力増強]だけなのに」
「いや、ボス。それだけでも十分に強い」
「強さの問題じゃないズラ。明弘さん。男のロマンとか、かっこよさが関係しているズラ」
「ははは…」
少し、俺は安堵していた。
みんな、勝手に誤解しているくせに、女だってわかると態度を変えてきた。
時には、ひどい罵倒や暴力を受けたこともある。
俺も俺で、多少自分も悪いとは今は思うが。
「それで、君はどうする?」
「はい?」
改めて、聞くことがあると、ソファーに座らされて唐突に聞かれる。
「ああ。すまん。言葉が足りなかったな。君はこれからどうしていきたいと思うんだ、と聞いているんだ」
つまりは、異能を持つ俺にこれからどうするかと聞いているのだろうか。
「そう聞かれても、俺はわからない。というか、どうすればいいかわからない」
と、素直に心の内の事を話す。
「ウム。では、私が選択肢を与えよう」
と言う。
そして、選択肢が3つ出された。
1、この事務所こと、〔茅場組〕に入って、異能を持つ者【異能者】を保護したり、妖怪などの化け物を倒したりする。
2、何事もなかったのように日常生活に戻る。
3、【異能者】だけの何処かはわからない、[ピロティ]という町に移住するか。
「私としては、1か3をオススメする。君の異能は、何かの拍子で誤作動を起こしかねない。特に、君のは特殊すぎて、知られたら良くてスカウト。悪くて殺される」
「え?なんで殺されんの??」
その問いに答えてくれたのは明弘さん。
「異能は、持っている相手を殺すなり、譲渡するなりで増やせるんだ。もちろん、妖怪などの化け物をぶち殺しても増えるが」
「ゲームの言葉を流用して、PKズラ。プレイヤーキルだズラ」
つまり、無所属だととても狙われやすく、俺の場合、無理矢理でもその異能を手に入れようとしてくると…
「あれ?でも、譲渡できるって…」
「それには特定の条件が必要だ。まずは、化け物を五体以上倒しているか、何も持っていない一般人からだ」
と、今度は茅場さん。
「私が知っている限り、譲渡した者はこの世から消える」
「つまりは無理か…」
どうしようか。
このままでは、俺がこの人たちに殺されそうで怖い。
答えが出るまで、十分ほどかかったが、茅場さんたちは怒ることはなく、この人たちは優しい人たちだ、と思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
解説⬇
【異能】
妖怪などを倒すと、手に入れる能力の総称。誰が言い始めかは知らないが、今の名称になっている。何故、異能が与えられるのかは不明。わかることは、異能が人に対して様々な影響を与えるということ。
【想像装着】
主人公繁信の異能。レア異能で、イメージした物の能力を再現する。武器の場合は、こちらもイメージで出現する。弱点は、換装時間。そして、コントロールのしづらさ。
【筋力増強】
茅場 祐輔の持つ異能。単純なステータスアップで、筋力に関係する部分がパワーアップする。
【俊敏】
茅場 祐輔の持つ異能。足が主に強化される。全国で特に多い異能。
俺は、何故かその二人の後ろによろめく妖しい炎を見た気がした。
「おい」
声をかけられた。
「は、はい…?」
改めてよく見ると、顔はヤクザ、服装もヤクザの服っぽいものだった。
「お前、さっき河童に会ったろ?」
「はい…、え?い、一体どういう…?」
すると、喋っていたヤクザの隣のヤクザが
「明弘、とりあえず捕まえるズラ」
「ちょ、ええっ?」
隣のヤクザが縄を取り出す。
だが、明弘と呼ばれたヤクザは止める。
「止めとけ。まだこの少年の異能がわからねぇんだ。無理矢理は不味い」
「い、異能?」
「幸い、聞き分けのいい少年のようだ。少年、何もしないから付いてきてくれないか?」
正直、行くのは嫌だ。怪しすぎる。
だが、河童といい異能といい、気になる。
「わ、わかりました。で、でも縛らないで…」
ー五分後
俺が連れてこられたのは、いかにもヤクザの事務所みたいな場所だった。
でも、不思議なことに大通りに近いはずなのに人気がほとんどなかった。
「ほら、入りな」
扉の前に立たせられる。
「し、失礼します…」
正直、生きた心地がしない。
でも、中を見てみると意外と簡素な場所だった。
「そいつが、今回の被害者か?」
「そうだズラ。一足遅かったズラけど、自力で河童を倒してたズラ」
「ようやく河童が消えるな」
いつの間にか、いかにもボスみたいな人の前に語尾にズラがつく人がいた。
「ボス。いつものを」
「わかってるよ。確か繁信君と言ったね。君がここに連れてこられたのは、河童と遭遇し、倒したからだ」
「あのぅ。よくわからないんですけど…」
普通にそう思った。
「つまりはだな。君は河童を倒したことで異能を手に入れている」
「異能?」
「そうズラ。あ、自己紹介がまだだったズラね。坂田 狛雪ズラ。そっちは金木 明弘」
「あ、はい」
異能?
超能力の類いかな?
「いかにも、超能力の類いかな?ていう顔をしているズラね。確かに超能力に近いズラ」
「だが、異能は都市伝説や怪奇現象等を切り抜けたり、逃げ切れた人のみに与えられる能力だ。ちなみに私はここのボスをやらせてもらっている、茅場 祐輔だ」
…みんな後付けに自己紹介しているな…
「君は河童を倒したことで異能を手に入れているはずだ。異能は多種多様だから、同じ異能を持つものはあまりいない」
「えーと。つまり、一人一人違うって事ですか?」
「そういう事だ、繁信君。ここは、元々ヤクザの事務所だったが今は違う」
「俺たちは都市伝説や怪奇現象に遭遇した人を、保護と異能についての説明をしている」
「はあ」
「で今、君を鑑定して、君が得た異能は…[想像装着]?もんげーズラ」
「レアドロップか…」
「え?え?」
意味がわからない。レアドロップ?まさか俺、殺される?
「ああ。説明しないとな。基本的に、手に入れる異能は出会った都市伝説や怪奇現象に影響されている。河童なら、例えば[水圧調整]、[筋力増強]…みたいな感じだ。」
「それで、俺の場合は全く関係ない異能だと?」
「そういうことになるズラ。こういうのは、いつの間にかレアドロップって言われてるズラけどね」
というか、今思えば坂田さんズラをめっちゃ使ってるな!!
「内容は…イメージした人物や物になる…。繁信君、何かイメージして装着って念じるか言うかしてみてくれ」
「はぁ。ん…装着!」
思い浮かべたのは、最近見たアニメ映画のロボットだ。
光に包まれて体に何かがくっついていく。
光が収まると、白い装甲が各所にくっついていた。
背中には、人が背負うには重すぎるヘイグス機関と呼ばれるものらしきバックパックがあった。
「おい。お前……!?」
「き、君は…」
「女子なんズラか!?」
「え?そうだけど、なんで?」
そう答えると、一斉に茅場さんたちは叫ぶ。
「「「まぎわらしいんだよっ(ズラ)!!」」」
気を取り直して、俺の能力を確認する。
「別の姿に換装すると、換装しきれるまで二秒弱。武器は強くイメージすることで、作られるみたいですね」
「なんかいいなぁ。私なんて[俊敏]と[筋力増強]だけなのに」
「いや、ボス。それだけでも十分に強い」
「強さの問題じゃないズラ。明弘さん。男のロマンとか、かっこよさが関係しているズラ」
「ははは…」
少し、俺は安堵していた。
みんな、勝手に誤解しているくせに、女だってわかると態度を変えてきた。
時には、ひどい罵倒や暴力を受けたこともある。
俺も俺で、多少自分も悪いとは今は思うが。
「それで、君はどうする?」
「はい?」
改めて、聞くことがあると、ソファーに座らされて唐突に聞かれる。
「ああ。すまん。言葉が足りなかったな。君はこれからどうしていきたいと思うんだ、と聞いているんだ」
つまりは、異能を持つ俺にこれからどうするかと聞いているのだろうか。
「そう聞かれても、俺はわからない。というか、どうすればいいかわからない」
と、素直に心の内の事を話す。
「ウム。では、私が選択肢を与えよう」
と言う。
そして、選択肢が3つ出された。
1、この事務所こと、〔茅場組〕に入って、異能を持つ者【異能者】を保護したり、妖怪などの化け物を倒したりする。
2、何事もなかったのように日常生活に戻る。
3、【異能者】だけの何処かはわからない、[ピロティ]という町に移住するか。
「私としては、1か3をオススメする。君の異能は、何かの拍子で誤作動を起こしかねない。特に、君のは特殊すぎて、知られたら良くてスカウト。悪くて殺される」
「え?なんで殺されんの??」
その問いに答えてくれたのは明弘さん。
「異能は、持っている相手を殺すなり、譲渡するなりで増やせるんだ。もちろん、妖怪などの化け物をぶち殺しても増えるが」
「ゲームの言葉を流用して、PKズラ。プレイヤーキルだズラ」
つまり、無所属だととても狙われやすく、俺の場合、無理矢理でもその異能を手に入れようとしてくると…
「あれ?でも、譲渡できるって…」
「それには特定の条件が必要だ。まずは、化け物を五体以上倒しているか、何も持っていない一般人からだ」
と、今度は茅場さん。
「私が知っている限り、譲渡した者はこの世から消える」
「つまりは無理か…」
どうしようか。
このままでは、俺がこの人たちに殺されそうで怖い。
答えが出るまで、十分ほどかかったが、茅場さんたちは怒ることはなく、この人たちは優しい人たちだ、と思った。
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解説⬇
【異能】
妖怪などを倒すと、手に入れる能力の総称。誰が言い始めかは知らないが、今の名称になっている。何故、異能が与えられるのかは不明。わかることは、異能が人に対して様々な影響を与えるということ。
【想像装着】
主人公繁信の異能。レア異能で、イメージした物の能力を再現する。武器の場合は、こちらもイメージで出現する。弱点は、換装時間。そして、コントロールのしづらさ。
【筋力増強】
茅場 祐輔の持つ異能。単純なステータスアップで、筋力に関係する部分がパワーアップする。
【俊敏】
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