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本編・取り違えと運命の人
023 お気に入り
あ、枝毛だ。
私の髪はわりと丈夫で、枝毛とかあんまりできない方だけど、たまたま一本見つけてしまったので、鋏で切ることにする。ぱちん。さあ、鋏を元に戻そう、としたところで、帰宅したリカルドに大声で叫ばれた。
「ジュ、ジュリエッタ!! 切っちゃやだ!!!」
リカルドの鬼気迫る勢いに、あやうく鋏を落としそうになった。
「え、枝毛?」
「そう。それも切り終わった後だったから、びっくりした」
「そ、そうなんだ。よかった……」
大変安堵した様子でリカルドは袋を下ろした。
「ちゃんと髪切るなら、自分でじゃなくて、美容院行くよ。さすがに」
「あ、そうか。そうだよね……」
「髪、長い方がいいの?」
私の髪は肩より少し長いくらい。ぎりぎり結える長さだけど、ド直毛で、結ってもすぐ落ちてしまうから、下ろしていることが多い。もう少し伸ばしたら結びやすくなるかな、それともいっそバッサリ切っちゃった方が楽かな? と、迷っていたところだった。
「……長い方が、というか、俺、大好きなんだ、ジュリエッタの髪」
そんなこと初めて聞いた。
「ほら、俺の髪、ちょっと癖あるし、色も薄茶でなんかはっきりしないし。ジュリエッタの真っ直ぐで黒い髪、すごく綺麗だなあって」
「えー? ストレート、結びづらいし地味だからカールがよかったし、色も、黒じゃなくて、金髪とか赤毛とか、華やかなのがよかったんだけど、私」
えっ! と、勢い込んでリカルドが言う。
「つやつやですっごく綺麗だよ! なめらかでさわるの全然あきないし、黒い色も夜の帳を下ろしたみたいで神秘的だし、短いとなんだかもったいないというか……」
リカルドはそう言いながら、私の髪に指を絡ませた。そして、はっとした表情を浮かべ、あわてて髪から指を外し、続ける。
「み、短くしたいなら、もちろん、いいんだけど! 俺、髪で好きになった訳じゃないし、ジュリエッタなら、きっと短いのも似合うし、可愛いし……」
私の意思を尊重しようと、あわてて言い訳し始めたリカルドが可愛くて、なんだかくすっとなった。
私の髪がそんなに気に入られていたなんて、全然知らなかった。自分の髪にあんまり思い入れがなかったし、綺麗と思ったこともなかったから。
「特に切りたい訳じゃないし、もう少し伸ばしたら結びやすくなるかなと思ってたから、伸ばそうかな」
そう、リカルドに訊ねるように言ってみる。
「うん! 今の長さもいいけど、もう少し長くてもきっと素敵だ!!」
リカルド、ぱああって音がしそうなくらい、明らかに嬉しそうな顔になった。単純。
その日から、私は自分の髪がお気に入りになり、ヘアケアに時間をかけるようになった。単純。
私の髪はわりと丈夫で、枝毛とかあんまりできない方だけど、たまたま一本見つけてしまったので、鋏で切ることにする。ぱちん。さあ、鋏を元に戻そう、としたところで、帰宅したリカルドに大声で叫ばれた。
「ジュ、ジュリエッタ!! 切っちゃやだ!!!」
リカルドの鬼気迫る勢いに、あやうく鋏を落としそうになった。
「え、枝毛?」
「そう。それも切り終わった後だったから、びっくりした」
「そ、そうなんだ。よかった……」
大変安堵した様子でリカルドは袋を下ろした。
「ちゃんと髪切るなら、自分でじゃなくて、美容院行くよ。さすがに」
「あ、そうか。そうだよね……」
「髪、長い方がいいの?」
私の髪は肩より少し長いくらい。ぎりぎり結える長さだけど、ド直毛で、結ってもすぐ落ちてしまうから、下ろしていることが多い。もう少し伸ばしたら結びやすくなるかな、それともいっそバッサリ切っちゃった方が楽かな? と、迷っていたところだった。
「……長い方が、というか、俺、大好きなんだ、ジュリエッタの髪」
そんなこと初めて聞いた。
「ほら、俺の髪、ちょっと癖あるし、色も薄茶でなんかはっきりしないし。ジュリエッタの真っ直ぐで黒い髪、すごく綺麗だなあって」
「えー? ストレート、結びづらいし地味だからカールがよかったし、色も、黒じゃなくて、金髪とか赤毛とか、華やかなのがよかったんだけど、私」
えっ! と、勢い込んでリカルドが言う。
「つやつやですっごく綺麗だよ! なめらかでさわるの全然あきないし、黒い色も夜の帳を下ろしたみたいで神秘的だし、短いとなんだかもったいないというか……」
リカルドはそう言いながら、私の髪に指を絡ませた。そして、はっとした表情を浮かべ、あわてて髪から指を外し、続ける。
「み、短くしたいなら、もちろん、いいんだけど! 俺、髪で好きになった訳じゃないし、ジュリエッタなら、きっと短いのも似合うし、可愛いし……」
私の意思を尊重しようと、あわてて言い訳し始めたリカルドが可愛くて、なんだかくすっとなった。
私の髪がそんなに気に入られていたなんて、全然知らなかった。自分の髪にあんまり思い入れがなかったし、綺麗と思ったこともなかったから。
「特に切りたい訳じゃないし、もう少し伸ばしたら結びやすくなるかなと思ってたから、伸ばそうかな」
そう、リカルドに訊ねるように言ってみる。
「うん! 今の長さもいいけど、もう少し長くてもきっと素敵だ!!」
リカルド、ぱああって音がしそうなくらい、明らかに嬉しそうな顔になった。単純。
その日から、私は自分の髪がお気に入りになり、ヘアケアに時間をかけるようになった。単純。
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