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本編・取り違えと運命の人
056 君の名は ①
秋になってすぐ、兄夫婦のもとに、無事、元気な女の子が生まれた。
「Hから始まる名前で、なんにしようか迷ったんだが」
親戚間で六番目の子供だったから、兄は頭文字がFのフラヴィオと名づけられて、その次に生まれた私はGのジュリエッタと名づけられた。私はいとこ達の中で最年少で、いとこ達は自分の子供の名づけを好きにしたから、私の後にこの法則で名づけられた子供はいない。だから、Gの次のH、なのか。なるほど。
でも、H始まりの名前って、難しくない?
「母親と美貌の王妃つながりで、ちょっと異国風に、ヘレナにした」
なんでもヘレナって、とある国の伝説で戦争のきっかけになっちゃったくらいの美貌の王妃の名前なんだそう。ついでに、義姉の名前のギネヴラは、偶然だけど、別の国の伝説で王の腹心とのみちならぬ恋に身を焦がした美貌の王妃なんだって。母親が美貌の王妃だから娘も美貌の王妃。子供の名前で遊ぶなよ。
思わずギネヴラさんを見ると、なんだか苦笑してる。そして、義姉に抱えられたヘレナちゃんはとっても可愛い。美人つながりは確かだ。
「よく遊び人のところには娘が生まれるって言うけど、まさにその通りになったわね。ヘレナちゃん、美人に成長することは確定だから、あんたもやきもきさせられればいいわよ!」
因果応報! 今までのおのれの所業を心の底から反省するがいい!
「ああ。ひどいことしたなって、反省してる」
「え……」
あっさりそう言われると。なんだか拍子抜けする。
「まあ、やきもきさせられる時間は長い方がいいかな」
「え? 意味わかんない」
「罪滅ぼしと、とにかくこいつが元気で長生きしてくれりゃ、それでいい」
よくわかんないけど、フラヴィオも人の親になって、少しは成長したってことなのかな。そんなことを思いながら、家路についた。
「あの」
家に帰り着くなり、困惑したような微妙な表情でリカルドが話しかけてきた。
「なあに?」
「たぶん、フラヴィオさん、ジュリエッタに言った意味だけじゃなくて、あの名前つけてくれたんだと思うんだ」
「え? つけてくれた?」
「フラヴィオさん、今でも結構、俺の職場に来てくれることあって、俺がいる時は必ず声掛けてくれるんだけど」
いつの間にそんなになかよくなったんだ、君らは。
「こないだ、俺の父ちゃんと母ちゃんの話になって」
「そんな話まで」
「うん、訊ねられたから。それで、その……俺の母ちゃん、エレナっていうんだ」
「え……」
「優しくて料理上手で綺麗で自慢の母です! って言ったら、なんかニヤニヤしてたから、マザコンだって勘違いされたかな? くらいに思ってたんだけど……。そして、別の日に、『生まれてくるのが娘だってわかったから、名前は最初のプレゼントだし、あやかれるように素敵な女性にちなんだものを付けようと思う』って、おっしゃってて……」
この国にはH始まりの名前があまりない。Hは普通発音しないから、Hを省いた形に変わってしまうか、異国風の名前で使われるかしかないからだ。
ヘレナ(Helena)というちょっと異国風な名前も、Hがなければとても一般的な名前で。つまり、エレナ(Elena)。
フラヴィオ、あいつ……!
「Hから始まる名前で、なんにしようか迷ったんだが」
親戚間で六番目の子供だったから、兄は頭文字がFのフラヴィオと名づけられて、その次に生まれた私はGのジュリエッタと名づけられた。私はいとこ達の中で最年少で、いとこ達は自分の子供の名づけを好きにしたから、私の後にこの法則で名づけられた子供はいない。だから、Gの次のH、なのか。なるほど。
でも、H始まりの名前って、難しくない?
「母親と美貌の王妃つながりで、ちょっと異国風に、ヘレナにした」
なんでもヘレナって、とある国の伝説で戦争のきっかけになっちゃったくらいの美貌の王妃の名前なんだそう。ついでに、義姉の名前のギネヴラは、偶然だけど、別の国の伝説で王の腹心とのみちならぬ恋に身を焦がした美貌の王妃なんだって。母親が美貌の王妃だから娘も美貌の王妃。子供の名前で遊ぶなよ。
思わずギネヴラさんを見ると、なんだか苦笑してる。そして、義姉に抱えられたヘレナちゃんはとっても可愛い。美人つながりは確かだ。
「よく遊び人のところには娘が生まれるって言うけど、まさにその通りになったわね。ヘレナちゃん、美人に成長することは確定だから、あんたもやきもきさせられればいいわよ!」
因果応報! 今までのおのれの所業を心の底から反省するがいい!
「ああ。ひどいことしたなって、反省してる」
「え……」
あっさりそう言われると。なんだか拍子抜けする。
「まあ、やきもきさせられる時間は長い方がいいかな」
「え? 意味わかんない」
「罪滅ぼしと、とにかくこいつが元気で長生きしてくれりゃ、それでいい」
よくわかんないけど、フラヴィオも人の親になって、少しは成長したってことなのかな。そんなことを思いながら、家路についた。
「あの」
家に帰り着くなり、困惑したような微妙な表情でリカルドが話しかけてきた。
「なあに?」
「たぶん、フラヴィオさん、ジュリエッタに言った意味だけじゃなくて、あの名前つけてくれたんだと思うんだ」
「え? つけてくれた?」
「フラヴィオさん、今でも結構、俺の職場に来てくれることあって、俺がいる時は必ず声掛けてくれるんだけど」
いつの間にそんなになかよくなったんだ、君らは。
「こないだ、俺の父ちゃんと母ちゃんの話になって」
「そんな話まで」
「うん、訊ねられたから。それで、その……俺の母ちゃん、エレナっていうんだ」
「え……」
「優しくて料理上手で綺麗で自慢の母です! って言ったら、なんかニヤニヤしてたから、マザコンだって勘違いされたかな? くらいに思ってたんだけど……。そして、別の日に、『生まれてくるのが娘だってわかったから、名前は最初のプレゼントだし、あやかれるように素敵な女性にちなんだものを付けようと思う』って、おっしゃってて……」
この国にはH始まりの名前があまりない。Hは普通発音しないから、Hを省いた形に変わってしまうか、異国風の名前で使われるかしかないからだ。
ヘレナ(Helena)というちょっと異国風な名前も、Hがなければとても一般的な名前で。つまり、エレナ(Elena)。
フラヴィオ、あいつ……!
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