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本編・取り違えと運命の人
064 冬はつとめて ②
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「……俺、空気読まなくても、いいですかね?」
「空気読まないって、マッテオ、どういうこと? 読めないじゃなくて?」
「中身小学生だから、額面通り受け取って、平日の早朝にデートしてもらおうかと思って。深夜だとたぶん翌日の仕事つらいし」
今までのビアンカの彼氏のことを思い出してみる。みんなちょっと俺様っぽい感じで、人に合わせようとかいうタイプではなかった。正直、私は、みんな好きになれなかった。
「どうせ振られてもともとなんだから、最後にあがいてみてもいいかなって」
そう言ってマッテオさんは笑った。
「私、マッテオさん、いいと思う」
「ジュ、ジュリエッタ?」
「ビアンカ、今まで、彼氏切れなかったし、みんなそこそこイケメンでそこそこハイスペックだったはずなんだけど、私、なんか好きになれなかった。恋愛をゲームだと思ってるとか、支配欲強いなとか、女の子をアクセサリー扱いしてるとか、そういう感じがして。でも、マッテオさんはビアンカに喜んでもらおうっていろいろしてくれてて……。ビアンカがどうするかは正直わかんないけど、私はマッテオさんを応援する」
「あ、ありがとうございます」
「マッテオさん、群を抜いてハンサムだから、勝ち目あると思う。ビアンカ、面食いだし!」
夕飯はあらかた食べ終わっていたので、おみやげに持ってきてくれたケーキを出し、おひらき、ということになった。
「なに拗ねてるの」
リカルドが椅子を逆向きに、壁の方を向いて座っているので声を掛ける。
「拗ねてるというか……まさかジュリエッタがマッテオを褒めると思ってなかったのと、無意識に小学生を下に見ていた自分の醜さに気づいて自己嫌悪してる」
「大事な同僚に幸せになってほしいでしょ? 私も大事な友達には幸せになってほしいし」
「そうだけど……」
「リカルド」
呼びかけて振り向いたところを狙ってキスをした。
「う?」
「マッテオさんを応援したの、嫉妬した?」
「…………ちょびっと」
「でも、こんな風にキスするのはリカルドだけよ?」
「……その先のいちゃいちゃも今日はしたいです」
「嫉妬が消せるように?」
「嫉妬が消せるように」
「仕方ないなあ」
笑ってもう一度キスをすると、二人で寝室に向かった。
その後。マッテオさんは本気で早朝デートを誘い続けたらしい。朝二時間くらい会って別れてお互い仕事に行く、みたいな。エクストリーム出社。超健全。
「ビアンカ、断り文句じゃなく、本気で言ってたんだ」
「その時間も捻り出すのがんばってくれてるみたい。普段の一日を細かく聞いたマッテオ、悶絶してた」
「仕事の話、ほんとしないからなあ」
たぶん、仕事の話をしたとしても、ビアンカは大変だなんて口に出さない。そういう子だ。
「で、今度会う時、マッテオ、もうこの生活は無理だって言うつもりなんだって」
「え!」
真っ青になった私を見て、リカルドはにこにこしている。あれ?
「このままじゃビアンカさん、無理しすぎで倒れちゃうし、でも自分は少しでも長い時間会いたいから、一緒に暮らそうって切り出そうと思ってるんだって。いきなりプロポーズは重いだろうからって、小学生が考えた結論だってさ」
「……いや、もう、小学生っぽくないよ、気配り」
「うん。なんか成長を感じる。ただ、デート内容は川で石投げとかやっぱり小学生っぽいし、会う時に渡すプレゼントは駄菓子なんだって」
「どんだけ駄菓子好き……」
私の言葉にリカルドがニヤリとする。
「そう。あいつ、駄菓子、大好きなんだよね」
「うん?」
「自分の大好きなものを、大好きな人にはあげたくなってしまうらしい」
「自分で食べずに」
「自分で食べずに。それくらい大事ってことらしい」
「小学生、直球」
「そう。直球しか投げられない」
「でも、直球だからこそ、ものすごく威力を発揮するってこと、あるよね」
「そうかも」
なんとなく、マッテオさんがリカルドになついているのは、自分と同じ匂いがするからなんだろうな、と誕生日の宝探しゲームを思い出しながら納得した。
ちなみに、マッテオさんの提案にビアンカは泣いてうなずいたそうで、今マッテオさんはどうやってプロポーズするか考え中とのこと。春頃にはおめでたい話題が聞けそうな気配。
「空気読まないって、マッテオ、どういうこと? 読めないじゃなくて?」
「中身小学生だから、額面通り受け取って、平日の早朝にデートしてもらおうかと思って。深夜だとたぶん翌日の仕事つらいし」
今までのビアンカの彼氏のことを思い出してみる。みんなちょっと俺様っぽい感じで、人に合わせようとかいうタイプではなかった。正直、私は、みんな好きになれなかった。
「どうせ振られてもともとなんだから、最後にあがいてみてもいいかなって」
そう言ってマッテオさんは笑った。
「私、マッテオさん、いいと思う」
「ジュ、ジュリエッタ?」
「ビアンカ、今まで、彼氏切れなかったし、みんなそこそこイケメンでそこそこハイスペックだったはずなんだけど、私、なんか好きになれなかった。恋愛をゲームだと思ってるとか、支配欲強いなとか、女の子をアクセサリー扱いしてるとか、そういう感じがして。でも、マッテオさんはビアンカに喜んでもらおうっていろいろしてくれてて……。ビアンカがどうするかは正直わかんないけど、私はマッテオさんを応援する」
「あ、ありがとうございます」
「マッテオさん、群を抜いてハンサムだから、勝ち目あると思う。ビアンカ、面食いだし!」
夕飯はあらかた食べ終わっていたので、おみやげに持ってきてくれたケーキを出し、おひらき、ということになった。
「なに拗ねてるの」
リカルドが椅子を逆向きに、壁の方を向いて座っているので声を掛ける。
「拗ねてるというか……まさかジュリエッタがマッテオを褒めると思ってなかったのと、無意識に小学生を下に見ていた自分の醜さに気づいて自己嫌悪してる」
「大事な同僚に幸せになってほしいでしょ? 私も大事な友達には幸せになってほしいし」
「そうだけど……」
「リカルド」
呼びかけて振り向いたところを狙ってキスをした。
「う?」
「マッテオさんを応援したの、嫉妬した?」
「…………ちょびっと」
「でも、こんな風にキスするのはリカルドだけよ?」
「……その先のいちゃいちゃも今日はしたいです」
「嫉妬が消せるように?」
「嫉妬が消せるように」
「仕方ないなあ」
笑ってもう一度キスをすると、二人で寝室に向かった。
その後。マッテオさんは本気で早朝デートを誘い続けたらしい。朝二時間くらい会って別れてお互い仕事に行く、みたいな。エクストリーム出社。超健全。
「ビアンカ、断り文句じゃなく、本気で言ってたんだ」
「その時間も捻り出すのがんばってくれてるみたい。普段の一日を細かく聞いたマッテオ、悶絶してた」
「仕事の話、ほんとしないからなあ」
たぶん、仕事の話をしたとしても、ビアンカは大変だなんて口に出さない。そういう子だ。
「で、今度会う時、マッテオ、もうこの生活は無理だって言うつもりなんだって」
「え!」
真っ青になった私を見て、リカルドはにこにこしている。あれ?
「このままじゃビアンカさん、無理しすぎで倒れちゃうし、でも自分は少しでも長い時間会いたいから、一緒に暮らそうって切り出そうと思ってるんだって。いきなりプロポーズは重いだろうからって、小学生が考えた結論だってさ」
「……いや、もう、小学生っぽくないよ、気配り」
「うん。なんか成長を感じる。ただ、デート内容は川で石投げとかやっぱり小学生っぽいし、会う時に渡すプレゼントは駄菓子なんだって」
「どんだけ駄菓子好き……」
私の言葉にリカルドがニヤリとする。
「そう。あいつ、駄菓子、大好きなんだよね」
「うん?」
「自分の大好きなものを、大好きな人にはあげたくなってしまうらしい」
「自分で食べずに」
「自分で食べずに。それくらい大事ってことらしい」
「小学生、直球」
「そう。直球しか投げられない」
「でも、直球だからこそ、ものすごく威力を発揮するってこと、あるよね」
「そうかも」
なんとなく、マッテオさんがリカルドになついているのは、自分と同じ匂いがするからなんだろうな、と誕生日の宝探しゲームを思い出しながら納得した。
ちなみに、マッテオさんの提案にビアンカは泣いてうなずいたそうで、今マッテオさんはどうやってプロポーズするか考え中とのこと。春頃にはおめでたい話題が聞けそうな気配。
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