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本編・取り違えと運命の人
071 来る年 ④
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「でも……ジュリエッタと出会ってから、そんなこと、ただの一度も思ったことなくて」
私の目を見て、キスを落とし、ゆっくりと動き始めたリカルドが続ける。
「すごく……満たされてるし、楽しくてたまらないんだ」
「うん、私も」
「もう、空虚な思いは絶対させないし、しない」
そのまま少し動きを速めていく。
「ジュリエッタ。君は俺の隙間を埋めてくれただけじゃなく、なんだか楽しいことを増幅してくれてて。…………ないんだ」
最後は私に話しかけたのではないかもしれない。でも、小さな声だったけど、聞こえた。
『もう、絶対に、失いたくないんだ』。
さっきの私と同じことを言ってるはずなのに、なぜ痛々しく聞こえてしまうんだろう。
そのうち、リカルドは息が上がるほど動きを速め、イクッ! と言って達した。いつもと違って、息を荒げたまま顔を伏せている。
背中を優しくなでるうちに、息は整ってきたけど、顔は伏せられたまま。
こんな時に言うといいような、気の利いた台詞も、きっとなにかあるんだろう。私はそんなの知らないし、ひらめきもしない。でも、リカルドはなにかに焦って怯えているように見える。
このまま取り返しのつかないことになったら絶対に嫌で、正解はわからないけど、正直な思いを伝えた方が後悔しない気がして、口を開いた。
「私、リカルドが元気で、笑って、喜んでくれるのが、ほんとに嬉しいんだよ」
私の言葉にリカルドがゆっくりと顔を上げる。
少し気になっていたこと。リカルドは確かに気配りの人だけど、なんでやたら私のことばかり優先したり、プレゼントをしたがるんだろうって。無意識かもしれないけど、私を満足させることや物を与えることで、自分につなぎとめようとしているの? ちょっとそんな気がして。でも、そんなの、いらないのに。
「あなたがそばにいてくれることが、一番大事なの」
私はそう言って、じっとリカルドを見つめた。
「リカルドが好きよ。一緒にいるだけで楽しいし嬉しいの。それだけで充分幸せだから、リカルド、わざわざなにかしなくていいんだよ。いてくれるだけで」
リカルドの目が潤んでいるのは、きっと気のせいじゃない。しばらく黙っていたけれど、もう一度私の胸に顔をうずめ、かすれ声でこう言った。
「……ほんと、ジュリエッタには、かなわないなあ。なんで、いつも、俺が一番ほしいものをくれるんだろ…………」
リカルドの頭をなでるようにかき抱くと、リカルドは、甘えるように、しがみつくようにして、されるがままになっていた。
遠くで鐘の音が響く。
「あ、新年の鐘……」
「……もう新しい年になったの?」
「うん。お祝いの鐘だから」
リカルドがもう一度顔を上げる。目が合うと、笑顔になった。もう、すっかりいつものリカルドで、本当に安心する。
「今年も、どうぞよろしく。去年よりもっともっと楽しく過ごそう」
「こちらこそ、今年も、これからも、どうぞよろしく」
どちらからともなくキスを交わした。
「「気が合うね」」
あんまりぴったりだったので、思わず二人で笑った。
私の目を見て、キスを落とし、ゆっくりと動き始めたリカルドが続ける。
「すごく……満たされてるし、楽しくてたまらないんだ」
「うん、私も」
「もう、空虚な思いは絶対させないし、しない」
そのまま少し動きを速めていく。
「ジュリエッタ。君は俺の隙間を埋めてくれただけじゃなく、なんだか楽しいことを増幅してくれてて。…………ないんだ」
最後は私に話しかけたのではないかもしれない。でも、小さな声だったけど、聞こえた。
『もう、絶対に、失いたくないんだ』。
さっきの私と同じことを言ってるはずなのに、なぜ痛々しく聞こえてしまうんだろう。
そのうち、リカルドは息が上がるほど動きを速め、イクッ! と言って達した。いつもと違って、息を荒げたまま顔を伏せている。
背中を優しくなでるうちに、息は整ってきたけど、顔は伏せられたまま。
こんな時に言うといいような、気の利いた台詞も、きっとなにかあるんだろう。私はそんなの知らないし、ひらめきもしない。でも、リカルドはなにかに焦って怯えているように見える。
このまま取り返しのつかないことになったら絶対に嫌で、正解はわからないけど、正直な思いを伝えた方が後悔しない気がして、口を開いた。
「私、リカルドが元気で、笑って、喜んでくれるのが、ほんとに嬉しいんだよ」
私の言葉にリカルドがゆっくりと顔を上げる。
少し気になっていたこと。リカルドは確かに気配りの人だけど、なんでやたら私のことばかり優先したり、プレゼントをしたがるんだろうって。無意識かもしれないけど、私を満足させることや物を与えることで、自分につなぎとめようとしているの? ちょっとそんな気がして。でも、そんなの、いらないのに。
「あなたがそばにいてくれることが、一番大事なの」
私はそう言って、じっとリカルドを見つめた。
「リカルドが好きよ。一緒にいるだけで楽しいし嬉しいの。それだけで充分幸せだから、リカルド、わざわざなにかしなくていいんだよ。いてくれるだけで」
リカルドの目が潤んでいるのは、きっと気のせいじゃない。しばらく黙っていたけれど、もう一度私の胸に顔をうずめ、かすれ声でこう言った。
「……ほんと、ジュリエッタには、かなわないなあ。なんで、いつも、俺が一番ほしいものをくれるんだろ…………」
リカルドの頭をなでるようにかき抱くと、リカルドは、甘えるように、しがみつくようにして、されるがままになっていた。
遠くで鐘の音が響く。
「あ、新年の鐘……」
「……もう新しい年になったの?」
「うん。お祝いの鐘だから」
リカルドがもう一度顔を上げる。目が合うと、笑顔になった。もう、すっかりいつものリカルドで、本当に安心する。
「今年も、どうぞよろしく。去年よりもっともっと楽しく過ごそう」
「こちらこそ、今年も、これからも、どうぞよろしく」
どちらからともなくキスを交わした。
「「気が合うね」」
あんまりぴったりだったので、思わず二人で笑った。
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