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本編・取り違えと運命の人
091 これからもどうぞよろしく ②
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私達とルーカさん達は全く違う方向の列車に乗るので、駅の構内でお別れ、ということになった。
「本当にありがとうございました。お二人のおかげで、無事正式に神託で結ばれた夫婦として認めてもらえました」
リカルドがルーカさんとジュリエッタさんに頭を下げる。
「そんなことない! 仮に私達二人で神殿に訴えても、たぶん却下されてたし」
ジュリエッタさんはぶんぶん首を振った。
「でも、魔法球のことは、決定打ですよね……?」
「昨日、お二人が来るまで、ジュリエッタ、さんざんいろいろ訴えてましたけど、神託の決定は絶対だからって全部流されてて。最後の方で苦し紛れみたいに『問題のもう一組も同じご意見なら、上に諮りますが』と言われたんですよ。根負けしてそれだから、俺達二人だけでもう一度訴えに行っても、たぶんどうにもならなかったと思います。だから、俺達は『神託なんか無視して一緒にいよう』って言ってたんです」
私の問いにルーカさんが答えてくれた。そんなものなのか。リカルドが言ってた「四人ならできること、あるかもしれない」っていうの、偶然だけど当たってたんだ。
「絶対、近いうちに、ご連絡します!」
「わかった。私達の家に、今度は純粋に遊びに来て!」
「私達の町にも、ぜひ遊びに来てくださいね」
「その時はよろしくお願いします」
私達は笑顔で別れ、それぞれの列車に乗り込んだ。
昨日あんまり寝られなかったのもあって、私は列車に乗り込むなり爆睡してしまったらしい。リカルドにささやかれて、目を覚ました。
「ジュリエッタ、起きて。着いたよ」
「……え、もう?」
「うん。もう」
窓の外を見ると確かに最寄駅だったので、あわてて列車を降りる。
「ごめん! ずっと肩借りて寝てたみたいね」
「うん。肩貸せる喜びをかみしめてた」
リカルドは私の手を取り、照れたように笑う。
「家まで馬車で帰ろうか」
リカルドが気をつかって提案してくれるけど、あわてて首を振る。
「ううん。歩いて帰りたい」
「疲れてない?」
「大丈夫。前にも言ったでしょ、記念日に手をつないで歩くの、憧れだったって」
リカルドは一瞬目を見開き、静かにうなずいて、手を恋人つなぎにした。
「終わってみたら、なんか拍子抜けしちゃうくらい、あっさり解決しちゃったね」
「うん。でも、俺、そっちの方がすごい気がする」
「え?」
やっぱり、リカルドの言うことって、時々よくわからない。
「だって、本当にささいなことなのに、それがないと変わらなかったんでしょ? 大きなことは、そりゃ、力があるから変わるのもわかるし、みんな注目する。でも、あってもなくてもよさそうな、誰も気にとめない、どうでもいいように見えるものが、全てを動かす鍵だったなんて。俺、すごいと思うけどな」
たったそれだけ、と思うようなこと。
ふと、この一年、リカルドのささいな言動で、私の生活がどんどん変わっていったことを思い出す。それまで気にもとめてなかったことが、大きな流れを作り出すこともあるって、確かにリカルドと暮らし始めて実感した。
「……そうね。なにより、あの二人と協力しようって動き出さなかったら、今、こんな風に安心して一緒に過ごせてないね」
「うん! 愛し合っているのに、運命に引き裂かれた、悲劇の恋人達だったかもしれない!」
「そりゃまた、私達に全然似合わない、ドラマティックな……」
思わず吹き出してしまう。
「本当にありがとうございました。お二人のおかげで、無事正式に神託で結ばれた夫婦として認めてもらえました」
リカルドがルーカさんとジュリエッタさんに頭を下げる。
「そんなことない! 仮に私達二人で神殿に訴えても、たぶん却下されてたし」
ジュリエッタさんはぶんぶん首を振った。
「でも、魔法球のことは、決定打ですよね……?」
「昨日、お二人が来るまで、ジュリエッタ、さんざんいろいろ訴えてましたけど、神託の決定は絶対だからって全部流されてて。最後の方で苦し紛れみたいに『問題のもう一組も同じご意見なら、上に諮りますが』と言われたんですよ。根負けしてそれだから、俺達二人だけでもう一度訴えに行っても、たぶんどうにもならなかったと思います。だから、俺達は『神託なんか無視して一緒にいよう』って言ってたんです」
私の問いにルーカさんが答えてくれた。そんなものなのか。リカルドが言ってた「四人ならできること、あるかもしれない」っていうの、偶然だけど当たってたんだ。
「絶対、近いうちに、ご連絡します!」
「わかった。私達の家に、今度は純粋に遊びに来て!」
「私達の町にも、ぜひ遊びに来てくださいね」
「その時はよろしくお願いします」
私達は笑顔で別れ、それぞれの列車に乗り込んだ。
昨日あんまり寝られなかったのもあって、私は列車に乗り込むなり爆睡してしまったらしい。リカルドにささやかれて、目を覚ました。
「ジュリエッタ、起きて。着いたよ」
「……え、もう?」
「うん。もう」
窓の外を見ると確かに最寄駅だったので、あわてて列車を降りる。
「ごめん! ずっと肩借りて寝てたみたいね」
「うん。肩貸せる喜びをかみしめてた」
リカルドは私の手を取り、照れたように笑う。
「家まで馬車で帰ろうか」
リカルドが気をつかって提案してくれるけど、あわてて首を振る。
「ううん。歩いて帰りたい」
「疲れてない?」
「大丈夫。前にも言ったでしょ、記念日に手をつないで歩くの、憧れだったって」
リカルドは一瞬目を見開き、静かにうなずいて、手を恋人つなぎにした。
「終わってみたら、なんか拍子抜けしちゃうくらい、あっさり解決しちゃったね」
「うん。でも、俺、そっちの方がすごい気がする」
「え?」
やっぱり、リカルドの言うことって、時々よくわからない。
「だって、本当にささいなことなのに、それがないと変わらなかったんでしょ? 大きなことは、そりゃ、力があるから変わるのもわかるし、みんな注目する。でも、あってもなくてもよさそうな、誰も気にとめない、どうでもいいように見えるものが、全てを動かす鍵だったなんて。俺、すごいと思うけどな」
たったそれだけ、と思うようなこと。
ふと、この一年、リカルドのささいな言動で、私の生活がどんどん変わっていったことを思い出す。それまで気にもとめてなかったことが、大きな流れを作り出すこともあるって、確かにリカルドと暮らし始めて実感した。
「……そうね。なにより、あの二人と協力しようって動き出さなかったら、今、こんな風に安心して一緒に過ごせてないね」
「うん! 愛し合っているのに、運命に引き裂かれた、悲劇の恋人達だったかもしれない!」
「そりゃまた、私達に全然似合わない、ドラマティックな……」
思わず吹き出してしまう。
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