【R18】取り違えと運命の人

後日譚・取り違えたその後の二人

112 にくいあんちくしょう ⑫

『あんたがいないと、ごはんがおいしくないのよ！』

　意地っ張りなジュリエッタ。人前では、あれが精一杯だったんだろう。

「味覚ないから、以前はどうでもよかったのにね、飯なんて」
「……あんたと一緒に食べると、おいしいってどういうことか、わかるから。一度、そのよさを知ってしまったら、知らなかった頃には戻れないでしょう」

　言葉と裏腹に、ジュリエッタは俺の袖口をつかんで、震えてる。

　ジュリエッタは今、食事の時間をとても楽しんで大切にしていると思う。その時間を俺と重ねてくれた、というのは、俺のことも結構大事に思ってくれている、ということでいいんだろうか。最中に俺から無理やり言わされるんじゃなくて、ほんとにそう思ってくれているなら。
　頼まれごとはあきれるほどされたけど、素面で向こうから好意を示されたことはなかった。要は、俺も自信がないのだ。

「お願いしてみ。叶えてやるから」

　お前の運命が意思ならば、お前の意思で、俺を選べ。
　祈るような気持ちで語りかける。

「…………いて」
「ん？」
「ずっと一緒にいて……！」
「うん」

　ジュリエッタの小さな身体をゆっくり抱きしめる。そして、直球で訊ねた。

「俺のこと、どう思ってるの？」
「…………き……」
「嫌い？　嫌いなヤツにずっと一緒にいてほしいの？」
「好き……ルーカ、大好きぃ……」
「うん……俺もジュリエッタのこと、大好き。俺、もう、一生奴隷でいいや」

　泣きながらデレたジュリエッタに俺はキスを落とし、もう一度ぎゅっと抱きしめた。

　それから、ジュリエッタは、普段の生活でも少しずつ甘えてくるようになった。ある意味奴隷だけど、自分の意思でその身分を選んで楽しく過ごしているから、まあいいかな、と思ってるんだ。