141 / 201
後日譚・取り違えたその後の二人
140 ぶらり二人旅 ⑰ (好みのタイプと実際は、必ずしも一致しないけど・その1)
しおりを挟む
「しかし、昨日はほんとに部屋でごろごろしてるだけだったね」
翌朝目覚めると、リカルドはもう起きてスーツに着替えていた。私はいつのまにか夜着を纏っている。きっと風邪をひかないように、リカルドが着せてくれたんだろう。割とよくある。
「せっかくの旅行なのに、なんか、ごめんね」
私を連日抱きつぶしてしまったことをちょっと反省しているのか、リカルドは苦笑している。
「ううん。昨日、すっごく幸せな気持ちだった」
「…………うん。俺も」
リカルドが照れたように笑う。苦笑じゃなくなってほっとした。
「私、今回の旅行、全部楽しいよ。計画通りにいったところも、予想外になったところも、リカルドと一緒だから」
「うん! 俺も。ジュリエッタと一緒だから、すごく楽しい!」
リカルドの顔がぱあっと明るくなった。やっぱりリカルドは曇りない笑顔がいい。初めて会った日のことを思い出した。最初の挨拶の時から、私と一緒に過ごすことを喜んでくれてたんだな、と思うと、嬉しくてたまらなくなる。
そっとベッドから抜け出ると、私はリカルドの耳に口を寄せた。
「その笑顔が、大好き」
そうささやくと、リカルドはやっぱり顔を赤くする。
「な、なんか、昨日から、やたら直球じゃない?」
「リカルド、明らかに言われ慣れてないんだもん。私もあんまり言ってなかったって、反省したの」
「言われ慣れてないのは、その、付き合ったの、ジュリエッタだけだし」
「え」
ちょ、ちょっとまって。リカルド今なんていった?
「ん? 付き合ったって言わないのかな? 出会ったその日に結婚だったもんね」
「それもそうかもしれないけど、そういう細かい言い回しの話じゃなくて」
「付き合ったのジュリエッタだけ、でいいんだ。よかった」
「うそ。付き合ったの、私だけとか」
「え? 嘘じゃないよ。俺、他に彼女いたことない」
「ええっ! だって、この町で、あんなに人気者で」
「それとモテるのって、全然違うし。モテてたのは、アンドレアみたいにちょっと大人っぽい美形の秀才とか、女子の扱い上手いヤツで。確かに、俺、そこそこクラスの中心ではあったと思うけど、正直全然……」
リカルドがちょっとしょんぼりした表情を浮かべる。
なんだか納得がいかない。いい機会なのでとことん訊ねてみることにする。
「で、でも! リカルド、こんだけ積極的なんだから、自分からいけば……」
「んー。神託にお願いするって、小さい頃から決めてたし」
リカルド、ほんとはそこまで神託に固執してないはず。私が不審の目で見つめると、リカルド自身も若干ごまかした意識があったんだろう、諦めたのか続ける。
「……まあ、正直に言うと、俺の好みのタイプ、近くにあんまりいなかったし、数少ないそういうタイプは、俺のこと全然眼中にないわ、モテるやつがかっさらっていっちゃうわで、お付き合いには至らなかったんですよ」
リカルドの好みのタイプって、そういえば、聞いたことがなかった。
明るくて華やかな女の子がたぶんお似合いだけど、今回の服に対する反応とか先生の奥様への対応を見るに、実は大人の色っぽい女性がタイプなのかな。気になって仕方ないので、もう、乗りかかった船というか、直球で訊ねてみることにする。
「その、リカルドの好みのタイプって……?」
「え。ええと」
明らかに困惑した表情。それでもじっと黙って待っていると、リカルドは観念した様子で口を開いた。
翌朝目覚めると、リカルドはもう起きてスーツに着替えていた。私はいつのまにか夜着を纏っている。きっと風邪をひかないように、リカルドが着せてくれたんだろう。割とよくある。
「せっかくの旅行なのに、なんか、ごめんね」
私を連日抱きつぶしてしまったことをちょっと反省しているのか、リカルドは苦笑している。
「ううん。昨日、すっごく幸せな気持ちだった」
「…………うん。俺も」
リカルドが照れたように笑う。苦笑じゃなくなってほっとした。
「私、今回の旅行、全部楽しいよ。計画通りにいったところも、予想外になったところも、リカルドと一緒だから」
「うん! 俺も。ジュリエッタと一緒だから、すごく楽しい!」
リカルドの顔がぱあっと明るくなった。やっぱりリカルドは曇りない笑顔がいい。初めて会った日のことを思い出した。最初の挨拶の時から、私と一緒に過ごすことを喜んでくれてたんだな、と思うと、嬉しくてたまらなくなる。
そっとベッドから抜け出ると、私はリカルドの耳に口を寄せた。
「その笑顔が、大好き」
そうささやくと、リカルドはやっぱり顔を赤くする。
「な、なんか、昨日から、やたら直球じゃない?」
「リカルド、明らかに言われ慣れてないんだもん。私もあんまり言ってなかったって、反省したの」
「言われ慣れてないのは、その、付き合ったの、ジュリエッタだけだし」
「え」
ちょ、ちょっとまって。リカルド今なんていった?
「ん? 付き合ったって言わないのかな? 出会ったその日に結婚だったもんね」
「それもそうかもしれないけど、そういう細かい言い回しの話じゃなくて」
「付き合ったのジュリエッタだけ、でいいんだ。よかった」
「うそ。付き合ったの、私だけとか」
「え? 嘘じゃないよ。俺、他に彼女いたことない」
「ええっ! だって、この町で、あんなに人気者で」
「それとモテるのって、全然違うし。モテてたのは、アンドレアみたいにちょっと大人っぽい美形の秀才とか、女子の扱い上手いヤツで。確かに、俺、そこそこクラスの中心ではあったと思うけど、正直全然……」
リカルドがちょっとしょんぼりした表情を浮かべる。
なんだか納得がいかない。いい機会なのでとことん訊ねてみることにする。
「で、でも! リカルド、こんだけ積極的なんだから、自分からいけば……」
「んー。神託にお願いするって、小さい頃から決めてたし」
リカルド、ほんとはそこまで神託に固執してないはず。私が不審の目で見つめると、リカルド自身も若干ごまかした意識があったんだろう、諦めたのか続ける。
「……まあ、正直に言うと、俺の好みのタイプ、近くにあんまりいなかったし、数少ないそういうタイプは、俺のこと全然眼中にないわ、モテるやつがかっさらっていっちゃうわで、お付き合いには至らなかったんですよ」
リカルドの好みのタイプって、そういえば、聞いたことがなかった。
明るくて華やかな女の子がたぶんお似合いだけど、今回の服に対する反応とか先生の奥様への対応を見るに、実は大人の色っぽい女性がタイプなのかな。気になって仕方ないので、もう、乗りかかった船というか、直球で訊ねてみることにする。
「その、リカルドの好みのタイプって……?」
「え。ええと」
明らかに困惑した表情。それでもじっと黙って待っていると、リカルドは観念した様子で口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる