【R18】取り違えと運命の人

テキイチ

文字の大きさ
142 / 201
後日譚・取り違えたその後の二人

141 ぶらり二人旅 ⑱ (好みのタイプと実際は、必ずしも一致しないけど・その2)

しおりを挟む
「俺、おとなしいけどきちんと目標や意思を持ってて、決めたことを真面目に黙々とこなしたり、小さい子を自然に面倒みたりする、なんだろう、一見目立たないけど縁の下の力持ちみたいな穏やかで優しいタイプが好きなんだ。でも、どうもそういうタイプからは、なんか引かれちゃうんだよね……。周りの女子は、俺のキャラとかノリを楽しんでくれるような、元気で明るくて積極的なタイプが多かった」
「そうだったんだ」

 意外というか、イメージしてたタイプが、明るくて華やかなとか大人っぽい美人とか色っぽいとか、なんだかどれも派手目だったことに、ふと気づいた。

「ええと……その、神託の相手、どんな子でも、楽しく過ごせるといいなとか、なかよくできるようにがんばろうとか、思ってたんだけど。ドアが開いて、ジュリエッタを初めて見た時、雰囲気も顔立ちもほんと好みどストライクで……すごく、びっくりしたんだ」

 リカルドの台詞を聞いて、頬が朱に染まる。ああ、あの時のリカルドの喜びようは、運命の相手と初めて会ったからじゃなくって。一目で夢中になったって言ってくれたの、本当だったんだ。一目惚れなんかされたことなかったから、今一つ信じてなかったけど。

「ジュリエッタが、俺のキャラに引いちゃってるのも、今までと同じパターンだったから、わかった。だから、初めてする前、拒まれること、覚悟してたんだ」

 そう言うと、リカルドは、少し下を向いて、持て余すように袖口をつかんだりしはじめた。

「リカルド!」

 たまらなくなって、私は叫ぶように言う。

「えっ? なに? ジュリエッタ?」

 びっくりして私を見たリカルドに、こう続ける。

「私、リカルドのこと、大好きだから!!」

 リカルドは少し照れた様子で、優しく返事をくれる。

「うん。俺、ジュリエッタから愛されてるなあって、毎日ひしひしと感じてるよ」
「それも、そうなんだけど……。私、自分でも気持ちに気づいたのずいぶん後だったけど、たぶん、会ったその日に、リカルドのこと、好きになっちゃったんだから!」
「うん。初めて両想いになって、すごく、嬉しかったな」
「今までの好みのタイプの子は、リカルドのこと眼中になかったかもしれないけど……。私は、私は……」

 なんて言っていいかよくわからなくて、止まってしまうと、リカルドがそっと抱きしめてくれた。

「うん。最初は単に好みのタイプだって思っただけだったけど。今はもう、そんなのどうでもよくて、ジュリエッタだから好きだよ」
「それは、私もそうだけど……。でも、私、ようやく、リカルドが好みのタイプだったんだって気づいたの」
「……そういえばジュリエッタの好みのタイプって、聞いたこと……いや、『もの静かで大人な感じの人』だっけ? 俺、全然違うなあって、正直、苦笑いしちゃった」

 少し困ったように笑いながら、リカルドは初めての夜のことを思い出してるみたいだ。

「大人だよ」
「え?」
「リカルド、すごく。みんなに気を配ってて、包容力あって、いつも笑顔でいてくれて」
「ええと……」
「だから! 気づくの遅くなったけど、リカルド、すごく、私の好みのタイプだったの!」

 叫ぶように言って、ぎゅうっと抱きつく。
 リカルドは私の背中をなでながらしばらく黙っていたけれど、ようやく口を開くと、少しかすれた声で、つぶやくように言った。

「神託の組み合わせ、やっぱり、バッチリだね」
「うん……」

 きっと、私の力だけでは、リカルドを見つけ出すことはできなかったから。神託に改めて感謝した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...