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後日譚・取り違えたその後の二人
142 ぶらり二人旅 ⑲ (お家に帰るまでが遠足です)
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このままだと最終日もベッドになだれ込んでしまいそうだったので、シャワーを浴びて、着替えることにした。考えたら、いろいろ付着した夜着のままで、リカルドに抱きついてしまった。ごめん。ほんとごめん。
宿で朝食をとり、チェックアウトを済ませたら、列車の時間までしばらくある。
ということで、私達は今、海辺の散策を決行している。夏の終わりだからか、そこまで暑くなくて歩くのも楽しいし、よく晴れているから海がきらきらして見える。海水が汚れてなくて、色が透き通るようだし、水面に光が反射して、プリズムみたい。
「ほんと綺麗……」
海を眺めてほうっとため息をつく。
「うん。俺もここ大好きなんだ。なんか気持ちがぐるぐるしちゃう時とか、よく来てた。海、ぼんやり眺めてると、俺の悩みなんかちっぽけに思えちゃって、どうでもよくなるんだ」
美しく壮大な景色を眺めると、確かに悩みなんか吹き飛びそうだ。
リカルドはいつでも即断即決で、悩んだりしなそうに見えるけど、やっぱりそうじゃなくて。つないでた指に思わず力を込める。
「うん?」
リカルドが振り向いたから、そっと唇を奪う。身長差、そんなにないことの利点って、これだ、絶対。
「……そ、外なのに、大胆だね、ジュリエッタ」
顔を赤くして照れるリカルドを見て、ますます、与えられることに慣れさせなきゃ、という思いを強める。自分からするのはなんの抵抗もないくせに。
「あっちに鍾乳洞があるんだけど、行ってみない?」
「うん。行きたい」
リカルドが照れ隠しか、そう提案してきたので、あっさり乗る。もう一度指に力を込めると、リカルドはくすぐったそうに笑った。
「うわー、神秘的……」
小さくつぶやいた声が幾重にも響く。鍾乳洞の中は、足場を見失わないようにライトアップされてて、幻想的な色合い。
「ここが隠れデートスポット。綺麗でしょ?」
「うん。景色もだけど、声の響き方とか、水の滴りとか、音も不思議な感じで、素敵ね」
「奥に行こう。足元、気をつけてね」
私を気づかって、リカルドの歩みがいつもより遅い。リカルドのそういうちょっとした思いやりを見つけるたびに、とても幸せな気持ちになる。
「ここに連れてきたかったんだ」
鍾乳洞のつきあたり。ご神体のような二つの岩がほんのりライトアップされている。
「これ、さわって」
リカルドにうながされるまま、岩にふれる。
「こっち向いて」
言われるがままに振り向くと、リカルドに唇を奪われた。最初は軽く、だんだん深まっていって、気がつくとぎゅっと抱きしめられていた。
「この岩に触れながらくちづけを交わすと、二人はずっとなかよく添い遂げられるんだって。夫婦岩っていうんだ、これ」
なるほど、デートスポットだ。
「リカルド、なんかロマンティストっていうか、発想が、下手な女子より乙女よね」
「……ほら、彼女できたことなくて、ひたすらデート計画ばっかり立ててたクチだし」
リカルドが大変気まずそうに言うので、くすくす笑いながら答える。
「ううん。いっぱい考えてくれてたデート計画を、一緒に実行できて嬉しいな、って」
「そりゃ、よかったけども!」
ちょっと拗ねてしまった姿が可愛くて、余計笑ってしまったけど、からかいすぎたかな、と反省したので、リカルドの手を取り、岩にふれさせる。
「ね、許して?」
そう言って、今度は私からキスを落とす。
「……ええと、許すも許さないもないけど。ジュリエッタが可愛いから、許す」
「よかった。許された」
もう一度微笑み合って、鍾乳洞を出ることにした。列車の時間が迫っていたので、そのまま駅へ向かう。帰りの列車も個室だったけど、二人ともくたびれ果てていたので、ほとんどの時間を爆睡していた。私なんか、目を覚ますとよだれ垂らしてた。ほんとに個室でよかった。
「とうちゃーく!」
「おつかれさま」
ドアを開けて、家に入る。これにて初めての旅行は無事終了。
「今回の旅行、デート計画、いっぱい立ててくれてありがとう。すごく楽しかった!」
「喜んでもらえて、ほんとよかった。俺も楽しかった!」
ぎゅっと抱きしめられ、喜びをかみしめる。
「旅行、すごく楽しかったけど」
リカルドは一息ついて、こう続けた。
「やっぱり、おうちがいちばん、だな。俺」
「うん! 私も!」
お互い微笑んで、再び抱き合った。ここが、私達の場所、だ。
宿で朝食をとり、チェックアウトを済ませたら、列車の時間までしばらくある。
ということで、私達は今、海辺の散策を決行している。夏の終わりだからか、そこまで暑くなくて歩くのも楽しいし、よく晴れているから海がきらきらして見える。海水が汚れてなくて、色が透き通るようだし、水面に光が反射して、プリズムみたい。
「ほんと綺麗……」
海を眺めてほうっとため息をつく。
「うん。俺もここ大好きなんだ。なんか気持ちがぐるぐるしちゃう時とか、よく来てた。海、ぼんやり眺めてると、俺の悩みなんかちっぽけに思えちゃって、どうでもよくなるんだ」
美しく壮大な景色を眺めると、確かに悩みなんか吹き飛びそうだ。
リカルドはいつでも即断即決で、悩んだりしなそうに見えるけど、やっぱりそうじゃなくて。つないでた指に思わず力を込める。
「うん?」
リカルドが振り向いたから、そっと唇を奪う。身長差、そんなにないことの利点って、これだ、絶対。
「……そ、外なのに、大胆だね、ジュリエッタ」
顔を赤くして照れるリカルドを見て、ますます、与えられることに慣れさせなきゃ、という思いを強める。自分からするのはなんの抵抗もないくせに。
「あっちに鍾乳洞があるんだけど、行ってみない?」
「うん。行きたい」
リカルドが照れ隠しか、そう提案してきたので、あっさり乗る。もう一度指に力を込めると、リカルドはくすぐったそうに笑った。
「うわー、神秘的……」
小さくつぶやいた声が幾重にも響く。鍾乳洞の中は、足場を見失わないようにライトアップされてて、幻想的な色合い。
「ここが隠れデートスポット。綺麗でしょ?」
「うん。景色もだけど、声の響き方とか、水の滴りとか、音も不思議な感じで、素敵ね」
「奥に行こう。足元、気をつけてね」
私を気づかって、リカルドの歩みがいつもより遅い。リカルドのそういうちょっとした思いやりを見つけるたびに、とても幸せな気持ちになる。
「ここに連れてきたかったんだ」
鍾乳洞のつきあたり。ご神体のような二つの岩がほんのりライトアップされている。
「これ、さわって」
リカルドにうながされるまま、岩にふれる。
「こっち向いて」
言われるがままに振り向くと、リカルドに唇を奪われた。最初は軽く、だんだん深まっていって、気がつくとぎゅっと抱きしめられていた。
「この岩に触れながらくちづけを交わすと、二人はずっとなかよく添い遂げられるんだって。夫婦岩っていうんだ、これ」
なるほど、デートスポットだ。
「リカルド、なんかロマンティストっていうか、発想が、下手な女子より乙女よね」
「……ほら、彼女できたことなくて、ひたすらデート計画ばっかり立ててたクチだし」
リカルドが大変気まずそうに言うので、くすくす笑いながら答える。
「ううん。いっぱい考えてくれてたデート計画を、一緒に実行できて嬉しいな、って」
「そりゃ、よかったけども!」
ちょっと拗ねてしまった姿が可愛くて、余計笑ってしまったけど、からかいすぎたかな、と反省したので、リカルドの手を取り、岩にふれさせる。
「ね、許して?」
そう言って、今度は私からキスを落とす。
「……ええと、許すも許さないもないけど。ジュリエッタが可愛いから、許す」
「よかった。許された」
もう一度微笑み合って、鍾乳洞を出ることにした。列車の時間が迫っていたので、そのまま駅へ向かう。帰りの列車も個室だったけど、二人ともくたびれ果てていたので、ほとんどの時間を爆睡していた。私なんか、目を覚ますとよだれ垂らしてた。ほんとに個室でよかった。
「とうちゃーく!」
「おつかれさま」
ドアを開けて、家に入る。これにて初めての旅行は無事終了。
「今回の旅行、デート計画、いっぱい立ててくれてありがとう。すごく楽しかった!」
「喜んでもらえて、ほんとよかった。俺も楽しかった!」
ぎゅっと抱きしめられ、喜びをかみしめる。
「旅行、すごく楽しかったけど」
リカルドは一息ついて、こう続けた。
「やっぱり、おうちがいちばん、だな。俺」
「うん! 私も!」
お互い微笑んで、再び抱き合った。ここが、私達の場所、だ。
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